展示会への出展には、出展料、ブース施工費、運搬費、人件費、交通費など、まとまった費用と社内工数がかかります。
そのため、一定規模以上の企業では、
「なぜ、この展示会に出るのか」
「いくら使うのか」
「どんな成果を得るのか」
を企画書にまとめ、社内稟議や経営会議で承認を得る必要があります。
しかし、展示会企画書を、
「〇〇展に出展したいので300万円ください」
という予算申請書にしてはいけません。
展示会営業®コンサルタントとして累計1,300社超を支援してきた清永健一は、展示会企画書を次のように考えています。
清永健一の結論
展示会企画書は、「展示会に出てもよいですか?」と許可をもらうための書類ではありません。
「誰の、どんな課題に、自社がどう役立ち、その結果として何件の商談・案件・受注をつくるのか」を社内で共有する、受注までの営業計画書です。
企画書が通った後も判断に迷わないよう、準備 → 当日 → フォロー → 商談 → 案件 → 受注まで一本につなげて設計してください。
展示会白書のデータ
出展者536名に展示会当日に最も注力していることを尋ねると、「多くの来場者に声をかける」42.7%、「ブースの見栄えや演出」37.5%、「名刺やリードを多く獲得する」27.4%が上位でした。一方、「展示会後の商談の約束を取り付ける」は6.9%にとどまっています。展示会企画書は、目的を書くだけでなく、当日のKPIとスタッフ行動までつなげる必要があります。
目的は「商談機会をつくること」なのに、当日は「多くの人に声をかける」「ブースを目立たせる」「名刺を集める」に力を使っている。
このズレを防ぐ役割も、展示会企画書にはあります。
この記事では、展示会企画書に必要な9項目、稟議を通りやすくする3つの問い、具体的なテンプレート、記入例、予算・費用対効果、事前集客、当日のKPI、展示会後のフォロー、AIを使った企画書作成まで詳しく解説します。
記事内では、出展者536名・来場者1,089名への独自調査「展示会白書」の図表も使いながら、企画書に何を盛り込むべきかを考えていきます。
展示会企画書とは?
展示会企画書とは、展示会へ出展する目的、目標、ターゲット、展示内容、スケジュール、予算、期待する成果などを整理した社内提案資料です。
特に、一定額以上の出展費用がかかる企業では、稟議や経営会議へ提出するために企画書が必要になります。
しかし、企画書の役割は「予算を取ること」だけではありません。
展示会プロジェクトの関係者が、
「今回の展示会では、誰と出会い、何を成果とするのか」
を共通認識にする役割があります。
企画書がしっかりしていれば、準備途中で、
「この商品も出そう」
「せっかくだから別サービスも載せよう」
「もっと派手なブースにしよう」
という意見が出たときにも、
「それは今回のターゲットと目的に必要なのか?」
という判断基準へ戻ることができます。
企画書をつくる段階では、ブースの完成イメージだけでなく、展示会後にどのような営業状態をつくりたいのかまで言葉にしておくことが重要です。承認後に施工、販促、スタッフ教育、事前集客が別々に進み始めても、企画書に戻れば「今回のターゲットに必要か」「商談・案件につながるか」で判断できる状態をつくっておきます。
その意味で展示会企画書は、決裁者へ説明するためだけの資料ではありません。営業、マーケティング、技術、経営者が同じゴールを共有し、会期後まで行動をそろえるための共通設計図でもあります。
展示会企画書が必要な3つの理由
1.展示会へ出る意味と期待効果を伝えられる
展示会へ出展したことのない経営者や上司に、
「この展示会は有名です」
「たくさん人が来ます」
と説明しても、それだけでは投資判断ができません。
企画書に、
- どんな来場者が来るのか
- 自社のどんな顧客候補と接点を持てるのか
- なぜこの展示会でなければならないのか
- 何件の後日アポ・商談・案件を目指すのか
- どのような成果を想定しているのか
を整理することで、展示会出展の意味を具体的に説明できます。
2.展示会に関する情報を社内で共有できる
展示会は、営業担当者だけで完結する仕事ではありません。
ブース制作、展示物、物流、技術説明、当日のスタッフ、展示会後のフォローなど、多くの部署が関係します。
企画書をつくることで、
- 何のために出るのか
- 何を展示するのか
- 誰に来てほしいのか
- 誰が何を担当するのか
- どんなスケジュールで準備するのか
を共有できます。
展示会主催者の資料、会場写真、過去の展示会レポートなどを添えると、参加経験のない社員にもイメージを共有しやすくなります。
3.企画承認後の判断基準になる
私は、ここが企画書の大きな価値だと考えています。
展示会準備が始まると、必ず、
- 「この商品も展示したい」
- 「このパネルも追加しよう」
- 「このサービスも紹介しよう」
- 「もっと目立つ装飾を入れよう」
という話が出てきます。
そのたびに企画書へ戻り、
「今回のターゲットと目的に、本当に必要か?」
を確認できます。
つまり企画書は、予算承認の書類ではなく、展示会プロジェクトをぶらさないための設計図です。
稟議を通りやすくする展示会企画書は「3つの問い」に答える
決裁者が展示会企画書を見るとき、細かなブースデザインより先に知りたいのは、基本的に次の3点です。
- なぜ、この展示会なのか?
- どうやって成果を出すのか?
- いくら使って、何を回収するのか?
この3つに答えられる企画書は、内容を理解してもらいやすくなります。
反対に、
- 毎年出ているから
- 競合も出ているから
- 業界最大級だから
- 来場者数が多いから
だけでは、出展する根拠として弱いでしょう。
重要なのは、
「この展示会には、自社が役立てる相手が来ると考えられる。その相手と、こうやって接点をつくり、こう商談へつなげる」
と説明できることです。
展示会白書から見る「企画書で最初に決めるべきこと」
展示会白書のデータ
出展者536名へ、展示会への出展目的を尋ねました。
「リード・商談機会の獲得」53.7%、「企業認知」52.6%、「既存顧客との関係強化」45.5%、「新製品の発表・デモ」37.1%と、複数の目的が高い割合で並んでいます。
清永健一の解説
展示会は多目的に使える施策です。
しかし、多目的だからこそ、企画書で「今回は何を最優先するのか」を決めなければなりません。
「商談も取りたい、認知も上げたい、既存顧客とも話したい、新商品も見せたい」と全部を同じ優先順位にすると、ブースもKPIも接客もぼやけます。
展示会企画書に必要な9項目
展示会企画書では、最低限、次の9項目を整理します。
- 目的|何のために出展するのか
- 目標|どの状態になれば成功なのか
- 展示会・会場・開催日時|なぜこの展示会なのか
- ターゲット|誰と出会いたいのか
- 担当者・体制|誰が何を担当するのか
- 出展コンセプト|誰の何にどう役立つのか
- 展示内容|何を見せ、何を体験してもらうのか
- スケジュール|いつまでに何をするのか
- 予算・費用対効果|いくら使い、何を成果とするのか
1.目的|何のために出展するのか
企画書で最初に明確にするのが、展示会へ出展する目的です。
展示会の目的には、
- 新規顧客との接点づくり
- 商談・案件の創出
- 既存商品の拡販
- 新商品の市場検証
- 新規事業の顧客探索
- 既存顧客との関係強化
- 販売代理店・パートナー探し
- ブランド認知
- 顧客ニーズの収集
などがあります。
企画書では、
「新規顧客を獲得する」
だけでは足りません。
たとえば、
食品工場の人手不足対策を検討している生産責任者との新規商談機会をつくり、当社の自動化設備の案件創出につなげる。
というところまで具体化します。
目的が具体的であれば、その後のターゲット、展示物、KPI、スタッフ、予算も決めやすくなります。
2.目標|どの状態になれば成功なのか
目的を決めたら、具体的な数字へ落とし込みます。
展示会終了後に、
「人がたくさん来た」
「昨年より盛り上がった」
だけでは、投資成果を評価できません。
目的に応じてKPIを設定します。
| 出展目的 | 目標の例 |
|---|---|
| 新規営業 | 有効会話数、後日アポ数、商談数、案件数、受注数 |
| 新商品検証 | 体験者数、有効インタビュー数、改善意見数 |
| 代理店開拓 | 代理店候補との面談数、後日商談数 |
| ブランド認知 | メディア取材数、Web流入、資料請求、指名検索など |
| 既存顧客深耕 | 既存顧客面談数、追加商談数、別部門紹介数 |
名刺枚数だけを目標にしない
名刺獲得数を補助指標として使うことはできます。
しかし、営業成果が目的なら、名刺枚数を最終KPIにしないでください。
名刺をたくさん集めても、商談へ進まなければ営業成果にはなりません。
企画書には「何枚名刺を集めるか」だけでなく、「何件の後日アポ・商談・案件をつくるか」を書く。
目標設定については、展示会の目標設定・KPIも参考にしてください。
3.出展する展示会・会場・開催日時|なぜこの展示会なのか
企画書には、展示会名、開催日、会場だけでなく、なぜその展示会を選んだのかを書きます。
最低限、次の情報を確認してください。
- 展示会名
- 開催日時
- 会場
- 主催者
- 過去の来場者数
- 来場者属性
- 来場する業種・部署・役職
- 出展企業
- 競合企業の出展状況
- 過去の開催実績
- 出展料金
そのうえで、
「来場者が多いから」
ではなく、
「今回設定したターゲットが来場する可能性が高いから」
と説明します。
必要なら主催者へ問い合わせ、過去の来場者属性や出展実績を確認します。
出展先の選定については、成果が出る展示会の選び方をご覧ください。
4.ターゲット|誰と出会いたいのか
企画書では、「製造業」「経営者」のような大まかなターゲットでは不十分です。
少なくとも、
- 業種
- 企業規模
- 部署
- 役割
- 抱えている課題
- 現在の対応方法
まで考えます。
さらに、私はもう一つ重要な軸を加えることをおすすめしています。
「買いそうな相手は誰か?」ではなく、「自社が本当に役立てる相手は誰か?」からターゲットを決める。
企画書の段階から、
「予算がある会社」
「決裁者」
だけをターゲットにするのではなく、自社の強みがどんな課題に貢献できるかを明確にします。
たとえば、
従業員100~500名規模の食品メーカーで、人手不足により包装・検品工程の省人化を検討している生産部門責任者。
というように設定します。
5.担当者・プロジェクト体制|誰が何を担当するのか
展示会は、担当者一人では完結しません。
企画書の段階で、最低限、主担当とサブ担当を決めます。
| 役割 | 担当内容 |
|---|---|
| プロジェクト責任者 | 全体統括、意思決定、予算管理 |
| 展示会担当者 | 主催者対応、制作会社対応、準備進行 |
| 営業責任者 | KPI、接客、商談化、フォロー設計 |
| 技術・開発 | 専門説明、実演、技術質問への対応 |
| マーケティング | 事前集客、Web、DM、SNS、効果測定 |
| 経営者・責任者 | 重要顧客対応、全体指揮 |
すべての企業で大人数が必要という意味ではありません。
小規模企業なら、一人が複数の役割を兼務して構いません。
むしろ小規模企業だからこそ、年に1回程度の展示会を「全社イベント」として、営業・技術・経営者が一緒に顧客の声を聞く機会にすることもできます。
重要なのは、誰が何を判断し、誰が何を実行するかを明確にすることです。
6.出展コンセプト|誰の何にどう役立つのか
展示会企画書の中でも特に重要なのが、出展コンセプトです。
出展コンセプトは、
「先進的なイメージ」
「明るく親しみやすいブース」
というデザインテーマではありません。
私は、出展コンセプトを、
「誰の、どんな課題に、自社がどう役立つブースなのか」
と考えています。
たとえば、
- 誰:人手不足に悩む食品工場の生産責任者
- 課題:検品工程に3人必要で採用も難しい
- 役立ち方:画像検査装置で検品工程を省人化する
- 根拠:同規模工場での導入実績
まで整理します。
この出展コンセプトが決まれば、ブースキャッチコピー、展示物、実演内容、DM、営業トークが自然につながります。
出展コンセプトについては、展示会出展コンセプトの作り方もご覧ください。
ワンブース・ワンアイテム・ワンターゲット
企画書の段階で、
ワンブース・ワンアイテム・ワンターゲット
を意識してください。
「せっかく展示会へ出るから全部の商品を見せよう」
とすると、結果的に何を訴求したいのか分からなくなることがあります。
商品を一つしか置いてはいけない、という意味ではありません。
今回の展示会で何を主役にするのかを一つ決めるという意味です。
7.展示内容|何を見せ、何を体験してもらうのか
出展コンセプトが決まったら、具体的な展示内容へ落とし込みます。
展示方法には、
- 実物展示
- デモ・実演
- 体験型展示
- 比較展示
- ミニセミナー
- 動画
- 診断・測定
- 個別相談
などがあります。
ここでも、「面白そうだからVRを使う」といった手段先行にはしません。
ターゲットに価値を理解してもらうために、何が最も有効かを考えます。
基本は、
実物 → 体験 → 説明
です。
来場者自身が、見て、触って、比較したあとに説明を聞く方が理解しやすくなります。
展示会白書のデータ
独自調査でも、来場者が訪問ブースを選ぶ要素として「実物・デモがある」40.1%が挙げられています。
また、期待以上だったブースでは、「実際に製品・サービスを体験・操作できた」30.9%でした。
体験設計については、展示会ブースで行うべき体験も参考にしてください。
8.スケジュール|準備・当日・フォローまで書く
展示会のスケジュールは、当日までの準備だけではありません。
企画書には、
- 展示会前
- 展示会当日
- 展示会後
の3段階を書きます。
展示会前
- 展示会選定・申込
- ターゲット・コンセプト決定
- 施工会社選定
- ブース設計
- 展示物・デモ準備
- DM・メール・Webによる事前集客
- 事前アポ取得
- スタッフ研修
- ロールプレイ
展示会当日
- スタッフ配置
- 役割分担
- 接客・ヒアリング
- 会話データ記録
- 後日アポ取得
- 毎日の振り返り・改善
展示会後
- 約束した資料・回答の送付
- お礼・フォロー
- 後日商談
- 案件管理
- 効果測定
- 顧客の声の社内共有
展示会を、
準備 → 当日 → フォロー → 商談 → 案件 → 受注
まで一つの営業プロセスとして企画書に書きます。
展示会白書から見る「目的と当日の行動のズレ」
企画書には、展示会当日のスタッフが何を目指すのかまで書く必要があります。
なぜなら、出展目的と当日の行動には、実際に大きなズレがあるからです。
このズレは、記事冒頭の図4-4「展示会当日に注力していること」で示したとおりです。
清永健一の解説
企画書で「商談をつくる」と書いても、当日のKPIが「名刺300枚」のままなら、現場は名刺を集める動きになります。目的・KPI・現場行動を企画書でつなげる必要があります。
9.予算と費用対効果|いくら使い、何を成果とするのか
経営者・決裁者にとって、もっとも重要な項目の一つです。
展示会費用には、出展料だけでなく、
- 出展料
- ブース施工費
- 電気・通信
- 什器・機器
- 運送・搬入
- 販促物
- 事前集客
- 交通・宿泊
- 人件費
などがあります。
企画書では、総額だけでなく、主な費目と予算配分を示します。
展示会費用については、展示会出展にかかる費用・相場で詳しく解説しています。
受注から逆算してKPIをつくる
営業成果が目的なら、
「名刺300枚を獲得する」
から予算を考えるのではなく、必要な受注から逆算します。
たとえば仮に、
- 目標受注:3件
- 案件→受注:30%
- 商談→案件:50%
- 後日アポ→商談:50%
なら、概算では、
3件の受注
↓
10件の案件
↓
20件の商談
↓
40件の後日アポ
が必要です。
※上記の数値は説明用です。実際には、自社の過去実績を使ってください。
こうすると、
「300万円を使って展示会へ出る」
ではなく、
「40件の後日アポ、20件の商談、10件の案件、3件の受注を狙うために300万円を投資する」
という企画になります。
費用対効果については、展示会の費用対効果・ROIをご覧ください。
そのまま使える展示会企画書テンプレート
ここまでの内容を、社内企画書へそのまま落とせる形にすると次のようになります。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 企画名 | 〇〇展2027 出展企画 |
| 出展目的 | 〇〇業界の△△課題を持つ企業との新規商談・案件創出 |
| 目標 | 有効会話〇件、後日アポ〇件、商談〇件、案件〇件、受注〇件 |
| 展示会概要 | 展示会名、開催日、会場、主催者、来場者数、来場者属性 |
| 選定理由 | 今回のターゲット企業・部署が多く来場すると判断した根拠 |
| ターゲット | 業種、企業規模、部署、役割、課題 |
| 自社の貢献可能性 | ターゲットの課題に、自社がどう役立てるか |
| 主役商品 | 今回もっとも訴求する商品・サービス |
| 出展コンセプト | 誰の、どんな課題に、どう役立つブースにするか |
| 展示内容 | 実物、デモ、体験、比較、相談、ミニセミナーなど |
| 事前集客 | DM、メール、営業担当者、Web、SNS、事前アポ |
| 当日運営 | スタッフ数、配置、役割、接客方法、会話記録方法 |
| フォロー | 資料送付、回答、後日アポ、商談管理 |
| スケジュール | 申込から展示会後の効果測定まで |
| 総予算 | 〇〇万円 |
| 費用内訳 | 出展料、施工、販促物、物流、人件費など |
| 期待成果 | 案件総額、受注見込み、粗利など |
| 効果測定 | 展示会終了直後、1か月後、3か月後などに確認 |
展示会企画書の具体例
たとえば、食品工場向けの省人化設備を出展する企業なら、企画書の概要を次のようにまとめられます。
企画名
FOOMA JAPAN 出展企画目的
食品工場の検品・包装工程で人手不足に悩む企業との新規商談機会を創出し、自社省人化設備の案件化につなげる。ターゲット
従業員100~500名規模の食品メーカーで、検品・包装工程の省人化を検討している工場長、生産責任者、設備担当者。自社が役立てること
手作業で行っている検品工程を自動化し、人員配置の見直しと品質安定に貢献する。出展コンセプト
「まだ目視検品に3人使っていませんか?」を軸に、現行工程との比較を実機で体験できるブースとする。当日のゴール
自社が貢献できる企業との後日アポ40件。KPI
有効会話100件、後日アポ40件、商談20件、案件10件、受注3件。展示内容
実機デモ、従来工程との速度比較、導入事例、技術担当者による相談。事前集客
既存顧客・過去商談先へのDM、メール、個別営業。重要顧客は事前アポ化する。予算
総額300万円。効果測定
展示会直後に後日アポ、1か月後に商談、3~6か月後に案件・受注を確認する。
このように、
「展示会へ出ます」
ではなく、
「誰にどう役立ち、何件の案件をつくるために、何をするのか」
まで書けば、企画内容がかなり具体的になります。
展示会企画書には「事前集客」も必ず入れる
企画書で抜けやすいのが、事前集客です。
ブース設計や施工には数百万円使うのに、
「誰を会場へ呼ぶのか」
が企画書に入っていないことがあります。
したがって企画書には、
- 既存顧客
- 過去商談先
- 休眠顧客
- 過去問い合わせ企業
- 今回のターゲット企業
へ、どう案内するかを書きます。
DMやメールだけでなく、重要な相手は事前アポまで取る計画にします。
事前集客については、展示会の集客方法をご覧ください。
展示会企画書には「当日のゴール」も書く
企画書には、展示会当日にスタッフが何を目指すかを記載してください。
「たくさん名刺を集める」
ではなく、私は、
展示会当日のゴール=後日アポ
と考えています。
もちろん全員からアポを取るわけではありません。
ブースで会話し、
「この相手なら自社が役立てる」
と判断した相手には、その場で次の一歩を決めます。
次の一歩は、
- オンライン商談
- サンプル送付
- 技術回答
- 見積もり
- デモ
- 現場確認
など、相手に合わせて構いません。
当日の接客については、展示会営業のコツも参考にしてください。
展示会企画書には「フォロー設計」まで入れる
展示会企画書が、展示会最終日で終わっているケースがあります。
しかし、営業成果が生まれるのは多くの場合、展示会後です。
展示会白書のデータ
来場者1,089名への独自調査では、展示会後のフォローに不満・ストレスを感じた経験がある人は71.6%。
さらに、「ブースで話した内容と無関係な営業をされた」50.6%でした。
一方、理想的なフォローとして最も多かったのは、「ブースで話した内容を踏まえた提案・情報提供」56.3%です。
だから企画書の段階で、
- 会話をどう記録するか
- 誰がフォローするか
- いつまでに約束した回答をするか
- 後日アポをどう管理するか
- 展示会起点の案件をどう追跡するか
まで決めます。
展示会企画書は「出展計画書」ではなく「受注までの営業計画書」にする。
企画書を作成する前に準備しておきたいこと
展示会について情報収集する
まず、出展候補となる展示会について調べます。
主催者サイトだけでなく、可能なら、
- 過去の来場者属性
- 過去の出展企業
- 会場写真
- 出展者インタビュー
- 前回開催レポート
まで確認します。
可能であれば、出展する前年に来場者として現地を見ておくと、来場者の属性、ブースの傾向、会場導線などを把握できます。
実際の展示会の雰囲気を理解してから企画書をつくる方が、現実的な計画になります。
成功事例・失敗事例を参考にする
成功事例だけでなく、失敗事例も確認します。
たとえば、
- ターゲットが合わなかった
- 人は集まったが商談にならなかった
- スタッフが説明ばかりしていた
- 展示会後のフォローが止まった
といった失敗を企画書で想定し、対策まで書いておくと説得力が増します。
成功事例については、展示会の成功事例5選も参考にしてください。
自社が展示会へ出る固有の理由を整理する
「展示会には多くの来場者が来る」
という一般論だけではなく、
「なぜ今、自社が、この展示会へ出るのか」
を書きます。
たとえば、
- 新商品を投入した
- 新しい業界へ進出したい
- 営業人員が限られているため、短期間で顧客との接点をつくりたい
- 既存顧客以外の用途を発見したい
- 顧客の声を商品開発へ反映したい
などです。
早い段階から関係部署を巻き込む
企画書を一人で完成させてから社内へ見せるより、早い段階で関係者へ相談する方が、その後の実行がスムーズになります。
特に、
- 営業
- マーケティング
- 開発・技術
- 製造
- 経理
- 経営者
などを必要に応じて巻き込みます。
展示会を営業部門だけのイベントにせず、会社全体で顧客の一次情報を得る機会として設計できれば、展示会の価値はさらに高まります。
通りにくい展示会企画書の典型例
「来場者が多い」だけ
10万人来場する展示会でも、自社のターゲットがほとんどいなければ意味がありません。
目的が「PR」だけ
何をもってPRに成功したと判断するのかが分かりません。
名刺枚数しかKPIがない
営業成果とのつながりが説明できません。
ブースデザインの話ばかり
経営者が見たいのは、壁面の色よりも、なぜ投資するのか、どう成果をつくるのかです。
予算だけで、回収の考え方がない
「300万円必要です」だけでなく、その投資から何件の商談・案件・受注を目指すのかを書きます。
展示会後の計画がない
会期終了と同時に企画が終わる計画では、営業成果へつながりません。
展示会企画書を作成するときの注意点
客観的な根拠を示す
「きっと成果が出ると思います」
ではなく、
- 主催者の来場者データ
- 自社の過去実績
- 既存顧客の声
- 過去の展示会成果
- 第三者調査
などを使います。
また、メリットだけでなく、想定されるリスクと対策も書くと企画書の信頼性が高まります。
参考資料や数字は必ず確認する
来場者数、開催日、出展料、過去実績などが間違っていると、企画書全体の信頼性が下がります。
Web上の古い情報ではなく、できるだけ主催者の最新資料を確認してください。
情報を詰め込みすぎない
企画書は情報量が多ければよいわけではありません。
最初の1~2ページで、
- 何のために出るのか
- 誰と会いたいのか
- 何を成果とするのか
- いくらかかるのか
が分かるようにします。
詳細データ、主催者資料、会場図などは別紙に分けても構いません。
「絶対成功する」と書かない
展示会は、天候、競合出展、来場者数、市況など、自社ではコントロールできない要因もあります。
企画書では成果を保証するのではなく、
どんな仮説で出展し、何を測定し、何を改善するのか
を示してください。
AIを使って展示会企画書を作成するときの注意点
現在は、ChatGPTなどの生成AIを使えば、企画書の構成や文章を短時間で作成できます。
ただし、AIに、
「展示会の企画書を作って」
とだけ依頼すると、一般的な文章にはなっても、自社固有の説得力は出ません。
AIへ渡すべきなのは、
- 出展予定展示会
- 自社の商品・サービス
- 今回出会いたい相手
- 相手の課題
- 自社がどう役立てるか
- 自社の過去実績
- 出展予算
- 営業KPI
です。
AIには文章整理や構成づくりを手伝わせ、
「誰にどう役立てるか」「なぜこの展示会なのか」という一次情報は自社が考える。
この使い分けが重要です。
展示会企画書の最終チェックリスト
- 出展目的を一文で説明できるか
- なぜこの展示会を選んだか説明できるか
- 出会いたい相手が具体的か
- 相手の課題が明確か
- 自社がどう役立てるか書かれているか
- 主役商品を絞っているか
- 出展コンセプトが一文になっているか
- 実物・体験・デモの内容が決まっているか
- 事前集客計画があるか
- スタッフ体制が決まっているか
- 展示会当日のゴールが明確か
- 名刺枚数以外のKPIがあるか
- 後日アポ・商談・案件目標があるか
- 展示会後のフォロー担当が決まっているか
- 案件をいつまで追うか決めているか
- 費用の内訳があるか
- 費用対効果の考え方があるか
- 数字の根拠を確認したか
- リスクと対策が書かれているか
- 決裁者が数分で全体を理解できるか
よくある質問|展示会企画書
展示会企画書には何を書けばよいですか?
最低限、目的、目標、展示会概要、ターゲット、担当体制、出展コンセプト、展示内容、スケジュール、予算・費用対効果の9項目を整理してください。
展示会企画書で最も重要な項目は何ですか?
一つだけではありませんが、軸になるのは「誰のどんな課題に、自社がどう役立ち、何を成果とするのか」です。この軸が決まれば、ターゲット、展示物、ブース、KPI、フォローを一貫させやすくなります。
展示会企画書のKPIは名刺枚数でもよいですか?
補助指標として使うことはできます。ただし、新規営業が目的なら、後日アポ、商談、案件、受注まで設定することをおすすめします。
企画書には展示会後の計画も必要ですか?
必要です。展示会後に誰がフォローし、後日アポ、商談、案件をどう管理するかまで書きます。営業成果の多くは展示会後に生まれます。
事前集客も企画書へ入れるべきですか?
入れることをおすすめします。前述した展示会白書のデータでも、来場者の多くが会場へ行く前から訪問候補を決めています。重要顧客は事前アポまで計画しておくとよいでしょう。
AIだけで展示会企画書を作れますか?
構成や文章整理には活用できます。しかし、自社が誰にどう役立つのか、なぜその展示会を選ぶのか、過去実績やKPIなどの一次情報は自社で用意する必要があります。
展示会企画書は「受注までの営業計画書」としてつくる
展示会企画書に最低限必要なのは、次の9項目です。
- 目的
- 目標
- 展示会・会場・開催日時
- ターゲット
- 担当者・体制
- 出展コンセプト
- 展示内容
- スケジュール
- 予算・費用対効果
しかし、9項目を埋めるだけでは十分ではありません。
すべてを、
誰に、どんな課題があり、自社がどう役立ち、その結果としてどんな商談・案件をつくるのか
という一本のストーリーにつなげます。
そして、
準備 → 当日 → フォロー → 商談 → 案件 → 受注
まで設計します。
そうすれば企画書は、単に「展示会へ出てもよいか」を承認してもらう資料ではなく、展示会プロジェクト全体を成功へ導く営業計画になります。
清永健一の結論
通りやすい展示会企画書とは、展示会の魅力を熱く語る企画書ではありません。「このターゲットに、この方法で、この成果を狙う。そのためにこの投資が必要です」と説明できる企画書です。
展示会営業®とは、展示会で名刺を集める活動ではなく、ターゲット企業との接点をつくり、商談・案件・売上につなげ、そのプロセスを通じて会社を強くする営業活動です。
展示会の準備から当日、フォローまでの全体像は、展示会成功の強化書で体系的に解説しています。
この記事で使用した出展者536名・来場者1,089名への独自調査については、展示会白書をご覧ください。
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- 成果が出る展示会の選び方
- 展示会の目標設定・KPI
- 展示会の費用対効果・ROI
- 展示会出展にかかる費用・相場
- 展示会の集客方法
- 展示会ブースの作り方
- 展示会キャッチコピーの作り方
- 展示会で体験をつくる方法
- 展示会営業のコツ
- 展示会の成功事例
- 展示会白書
展示会で成果を出すコツを知りたい方へ
「企画書は通ったが、毎回名刺集めで終わっている」
「展示会のKPIをどう決めればよいか分からない」
「ブースや施工会社の話ばかり先に進んでいる」
「経営者へ展示会の費用対効果を説明できない」
「展示会後の商談まで企画できていない」
という場合は、展示会出展を一つの営業プロジェクトとして設計する必要があります。
展示会を失敗させないセミナーでは、展示会を名刺集めで終わらせず、商談・案件・売上へつなげる展示会営業®の考え方を体系的に解説しています。

展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした著書5冊を含む合計7冊を執筆し、すべてAmazon部門1位を獲得している。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。
