展示会を失敗させないセミナー

第3章 海外展示会と日本の位置づけ|展示会白書

本白書に掲載されている統計グラフや表をまとめてご覧になりたい方は、展示会白書 図表一覧ページをご覧ください。

本章では、グローバルな展示会産業の動向と、その中で日本がどのような位置にあるのかを概観する。

3-1. 世界の展示会産業の成長トレンド

世界の展示会産業は、コロナ禍からの回復にとどまらず、コロナ前を上回る成長軌道に入っている。UFI(国際展示会協会)が発表したGlobal Exhibition Barometer 第34版17)の主要ファクトを以下に整理する。

■収益と利益の動向

2024年の世界平均収益は前年比16%増となり、2025年はさらに前年比18%増が見込まれている。営業利益については、2024年に10%以上の増益を達成した企業が全体の82%に達し、2025年も77%の企業が10%以上の増益を見込んでいる。

■人員と投資の動向

展示会産業の成長期待は、雇用動向にも反映されている。全体の46%の企業が「今後6ヶ月でスタッフを増員する予定」と回答しており、51%が現状維持の方針を示した。縮小を予定している企業は少数派であり、業界全体として拡大基調にあることが示唆されている。

■AI活用の浸透

展示会産業におけるAIの影響力への認識も注目に値する。同調査では、92%の企業が「AIは業界に影響を与える」と回答しており、2023年半ばの調査開始時と比べて5ポイント上昇した。AIの影響を最も受ける分野としては、「営業・マーケティング・顧客関係」(86%)と「研究開発」(82%)が全地域共通でトップ2に挙げられており、いずれも前年比で大幅に増加している。

■貸出面積の2019年比(国・地域別)

世界全体で見ると、展示会の貸出面積は2019年比で+9%と、コロナ禍前を上回っている。ただし、国・地域別に見ると、回復状況には大きな差がある。

国・地域別の展示会貸出面積

【表3-1】

2019年比貸出面積(国・地域別)

表3-1 2019年比貸出面積(国・地域別)
国・地域2019年比
インド+40%
アルゼンチン+34%
マレーシア+22%
UAE・ブラジル+18%
サウジアラビア+17%
フランス-2%
中国-8%
ドイツ-12%

(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)

表3-1は、インド、中東、中南米といった新興市場が成長を牽引している一方で、ドイツや中国といった従来の展示会大国はなお回復途上にあり、産業のグローバルな重心が移動しつつあることを示している。

なお、日本はUFI第34版の個別分析対象19市場には含まれていない。また、UFIが示す主な指標は収益、利益、貸出面積であり、本白書で参照している日本国内の指標は主に開催件数であるため、両者を同一指標として直接比較することはできない。ただし、2024年の開催件数は2019年比121.3%18)となっており、少なくとも開催件数ベースでは、世界の展示会産業に見られる回復・拡大傾向と大きく矛盾しない動きを示している。

■Global Exhibition Barometer 第35版(2025年7月公表)の補足データ

2025年7月に公表されたUFI Global Exhibition Barometer 第35版19)でも、同様の成長トレンドが継続していることが示されている。主なポイントは以下のとおりである。

まず、34%の展示会主催企業が国内市場での貸出面積が5%以上増加すると予想している。また、人員面では、40%の展示会主催企業が今後6ヶ月でスタッフの増員を予定しており、拡大基調の継続がうかがえる。AI活用については、63%の展示会主催企業が標準的なAIツールを、少なくとも一部の業務で日常的に使用していると回答しており、業界内で活用が広がっている様子がうかがえる。

成長市場としては、貸出面積の増加が5%超と予想する企業が多い国として、サウジアラビア(80%)、UAE(67%)、インド(62%)、メキシコ(61%)が挙げられており、中東・南アジアの成長が引き続き顕著である。

業界が認識する中期的な課題としては、「世界経済の動向」が約20%で1位、「地政学的課題」が約15%で2位、「自国経済の状況」が約12%で3位となった。

また、今後の展示会産業を考えるうえでは、サステナビリティへの対応も重要な論点になっている。UFI Global Exhibition Barometer 第34版17)では、中期的な経営課題として「Sustainability / Climate」が上位に挙げられており、展示会産業においても環境負荷の低減、会場運営の効率化、ブース装飾・施工における廃棄物削減などが重要なテーマになりつつある。

こうした取り組みは、単なる規制対応ではなく、再利用可能な装飾、効率的な搬入出、無駄の少ない会場運営を通じて、出展者の負担軽減や来場者にとって歩きやすい展示環境づくりにもつながる。サステナビリティは、展示会の価値を高める運営・設計上のテーマとして捉える必要がある。

3-2. 国内外の主要な国際展示会の事例

以下では、世界および日本において国際性が高く、産業分野ごとの代表性、来場者規模、出展者規模、社会的注目度の観点から参考になる展示会を取り上げる。なお、各展示会の数値は、主催者発表や公式サイト等の公開情報に基づくものであり、実績値、見込み値、概数が混在している。そのため、本節は厳密なランキングや同一条件での比較ではなく、国内外の主要展示会の特徴を把握するための事例整理として位置づける。

■CES(米国・ラスベガス)・テクノロジー

CES(Consumer Electronics Show)は、世界最大級のテクノロジー展示会として知られる。CES 2025の来場者数は142,465人(独立監査済み)で、うち国際来場者は40.2%を占めた。また、出展者数は4,500社以上であった20,21)。CES 2026は、来場者数が148,000人超となり、来場者規模をさらに拡大した。出展者数も4,100社超となり、世界最大級のテクノロジー展示会としての存在感を改めて示した22)。CESの来場者数は独立監査によりUFI基準を超える透明性を確保しており、国際的な展示会統計の信頼性という観点でも注目に値する。CESは単なる家電見本市にとどまらず、AI、モビリティ、ヘルスケア、スマートシティなど、テクノロジーが社会や産業に与える影響を俯瞰できる場となっている。

■Mobile World Congress(スペイン・バルセロナ)・情報通信

Mobile World Congressは、モバイル関連および高度情報通信技術の分野において、世界的に大きな影響力を持つ国際見本市で、MWCバルセロナとも呼ばれる。2026年には207の国と地域から約105,000人が来場し、出展者、スポンサー、パートナーは2,900を数えた23)。5G/6G、AI、モバイルネットワーク、通信インフラ、クラウド、デジタルサービスなど、次世代のコネクティビティをめぐる技術と事業戦略が集中的に議論される場である。通信キャリア、テック企業、政策担当者、投資家が一堂に会する点に特徴があり、デジタル経済の方向性を読み解くうえで重要な展示会である。

■JIMTOF(日本・東京)・工作機械

JIMTOF(ジムトフ)は、日本国際工作機械見本市の略称で、製造業系展示会の中で国際的にも高い評価を受けている。JIMTOF 2024は来場者129,018人(うち海外10,423人)、出展者1,268社、5,744小間の規模で開催された24)。注目すべきは海外来場者の伸びである。JIMTOF 2022の海外来場者4,815人から、2024年には10,423人へと倍増以上の伸びを示した25)。国内にいながら海外バイヤーとの接点が得られるという、展示会のインバウンド機能を示す事例といえる。

■SMART ENERGY WEEK(日本・東京)・エネルギー、脱炭素

SMART ENERGY WEEK(スマートエネルギーウィーク)は、東京ビッグサイトなどで開催される、エネルギー・脱炭素分野の国際展示会である26)。水素・燃料電池、太陽光発電、二次電池、スマートグリッド、風力、バイオマス発電、ゼロエミッション火力など、カーボンニュートラルの実現に関わる幅広い技術・ソリューションが集まる。脱炭素は、製造業、建設、物流、自治体、インフラ、金融など、多くの産業に関わる横断的なテーマであり、同展は再生可能エネルギーや脱炭素投資の動向を把握する場として注目される。国内開催でありながら、世界的な政策課題であるカーボンニュートラルと直結している点で、BtoBの観点からも国際性の高い展示会の一つといえる。

■FOODEX JAPAN(日本・東京)・食品、飲料

FOODEX JAPAN(国際食品・飲料展)は、東京ビッグサイトで開催される、食品・飲料分野を代表する国際展示会である。一般に「フーデックス ジャパン」と呼ばれる。2026年開催では、出展者数3,238社のうち海外出展者が2,126社を占め、出展国・地域・機関は76に及んだ27)。海外からの出展比率が高い点に特徴があり、日本市場への販路開拓を目指す海外食品メーカーと、日本国内の小売、外食、ホテル、商社、卸などのバイヤーが接点を持つ場として機能している。食品分野におけるグローバルな調達、輸入食品、地域産品、健康・サステナビリティ、フードテックなどの動向を把握するうえで重要な国内開催の国際展示会である。

■東京インターナショナル・ギフト・ショー(日本・東京)・生活雑貨、ギフト

東京インターナショナル・ギフト・ショーは、東京ビッグサイトで年2回開催される、生活雑貨、ギフト、インテリア、ファッション、デザイン、キャラクター商品などを対象とする日本最大級の国際見本市である。公式サイトでは、40の製品カテゴリーにわたり、3,000社以上の出展者と300,000人以上の来場者が集まる展示会として紹介されており28)、本節では同展の規模感を示す参考情報として扱う。海外出展者への支援プログラムや、海外販路開拓を希望する出展者向けの英語カタログも用意されており、国内外のバイヤー、卸、小売、メーカー、デザイナーが接点を持つ場として機能している。生活消費財分野におけるトレンド、販路開拓、海外市場との接点を把握するうえで重要な国内開催の国際展示会である。

■SPORTEC(日本・東京)・スポーツ、健康産業

SPORTEC(スポルテック)は、東京ビッグサイトで開催される、スポーツ・健康産業分野を代表する国際展示会である。2026年開催では、公式サイト上で550社以上の出展者、45,000人以上の来場者が見込まれており29)、スポーツ、フィットネス、ウェルネス、ヘルスケア、スポーツ施設、自治体向けソリューションなど、幅広い分野の製品・サービスが集まる。スポーツを通じた地域活性化、健康寿命の延伸、フィットネス市場の拡大、スポーツテックの活用など、社会課題と産業成長が交差する分野を扱う点に特徴がある。国内開催でありながら、スポーツ・健康産業の国際的な動向を把握し、事業者同士の商談や連携を生み出す場として注目される。

■COMPUTEX TAIPEI(台湾・台北)・IT、AIoT、半導体サプライチェーン

COMPUTEX TAIPEI(コンピュテックス タイペイ)は、台湾・台北で開催される、IT、AIoT、スタートアップ分野を代表する国際見本市である。2026年は「AI Together」をテーマに、AI&コンピューティング、ロボティクス&モビリティ、次世代テクノロジーなどを主要分野として開催される30)。台湾は半導体や電子機器のサプライチェーンにおいて世界的に重要な位置を占めており、COMPUTEXはAI時代のハードウェア、エッジコンピューティング、スマートマニュファクチャリング関連技術を把握する場として注目される。

■広州交易会(中国・広州)・総合

中国輸出入商品交易会、通称「広州交易会(Canton Fair)」は、中国・広東省広州市で春と秋の年2回開催される、中国最大規模の総合貿易見本市である31)。中国大使館の紹介では、同展示会は中国で最も長い歴史を持ち、最大規模、最も幅広い展示品目、最大のバイヤー来場、最も広い来場国・地域、最大の成約実績を持つ総合国際貿易イベントと位置づけられている32)。展示分野は、電子・家電、産業製造、建材、家具、日用品、ギフト、食品、医療・ヘルスケア、アパレルなど多岐にわたり、中国の製造供給力と世界市場の需要を結びつける場として機能している。近年は、従来型の消費財・軽工業品に加え、家電、電子部品、スマート製品、新エネルギー関連製品なども存在感を高めており、中国の産業構造の変化を映し出す展示会としても注目される。第137回広州交易会は2025年4月15日から5月5日まで3期に分けて開催され、海外バイヤー向けの招待・来場登録も公式に案内された。

■Hannover Messe(ドイツ・ハノーバー)・製造業、産業技術

Hannover Messe(ハノーバーメッセ)33)は、製造業、産業技術、エネルギー、デジタル化などを対象とする世界有数の産業見本市である。製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)、自動化、エネルギー転換、産業用AIなどをテーマとし、ものづくりの将来像を総合的に提示する場として位置づけられている。会場面積は39.2万㎡(世界4位)を誇る34)。日本企業の出展実績も多数ある。ドイツの産業競争力やインダストリー4.0の文脈とも結びつきが強く、製造業系の海外展示会を考えるうえで外せない代表例である。

■bauma(ドイツ・ミュンヘン)・建設機械

bauma(バウマ)は、ドイツ・ミュンヘンで3年に1度開催される、建設機械、建材製造機械、鉱山機械、建設車両・機器分野の国際展示会である。bauma 2025には、57カ国から3,601社が出展し、200以上の国・地域から約60万人が来場した35)。建設・鉱山・インフラ分野の技術動向と国際商談を把握する重要な場である。また、脱炭素化、自動化、電動化、デジタル施工など、建設分野が直面する技術革新の方向性を国際的に確認できる点にも特徴がある。日本企業にとっても、海外市場の需要変化や競合企業の技術展開を把握するうえで、重要なベンチマークとなる展示会である。

■MEDICA(ドイツ・デュッセルドルフ)・医療、ヘルスケア

MEDICA(メディカ)は、ドイツ・デュッセルドルフで開催される、医療機器・ヘルスケア分野を代表する国際見本市である36)。MEDICA 2025および同時開催のCOMPAMED 2025では、医療技術、診断機器、デジタルヘルス、医療IT、ロボティクス、サプライヤー技術など、ヘルスケア産業の幅広い領域が取り上げられた。世界的な高齢化、医療人材不足、医療DXの進展を背景に、医療機器メーカー、医療機関、ディーラー、研究機関が国際的に接点を持つ場として重要性を高めている。

■Anuga(ドイツ・ケルン)・食品、飲料

Anuga(アヌーガ)は、ドイツ・ケルンで2年に1度開催される、食品・飲料業界を代表する国際見本市である。「1つの会場に10の専門見本市」という構成を持ち、一般食品、冷凍食品、飲料、オーガニック、代替プロテインなど、多様化する食のトレンドを広くカバーしている。Anuga 2025では、110カ国から8,000社超が出展し、190カ国以上から145,000人超の専門来場者が訪れた37)。食品流通、フードテック、サステナビリティ、グローバル調達の動向を把握するうえで重要な展示会である。

■Maison&Objet(フランス・パリ)・インテリア、雑貨

Maison&Objet(メゾン・エ・オブジェ)38)は、フランス・パリで開催されるインテリア、デザイン、ライフスタイル分野の国際見本市であり、毎年1月と9月の年2回開催されている。家具、インテリア雑貨、テーブルウェア、ギフト、デザインプロダクト、クラフトなどを幅広く扱い、日本の伝統工芸品やデザイン製品の海外発信の場としても活用されている。消費財・ライフスタイル分野における国際的なトレンドを把握するうえで、重要な展示会の一つである。

■Salone del Mobile.Milano(イタリア・ミラノ)・家具、インテリアデザイン

Salone del Mobile.Milanoは、家具およびインテリアデザイン分野における世界的な国際見本市であり、日本では「ミラノサローネ」としても知られている。毎年4月にミラノで開催され、同時期に街全体で展開されるデザイン関連イベントとあわせて、世界のデザイン関係者が注目する期間となる。Salone del Mobile.Milano 2026では、来場者が316,342人に達し39)、プロフェッショナル来場者の海外比率も高かった。家具、照明、キッチン、空間デザイン、ライフスタイル提案などを通じて、次の住空間やデザイン潮流を発信する場である。

■Arabian Travel Market(UAE・ドバイ)・旅行、観光

Arabian Travel Market(アラビアン・トラベルマーケット)は、UAE・ドバイで開催される、中東地域を代表する旅行・観光業界のBtoB国際見本市である40)。レジャー、ビジネストラベル、ラグジュアリー観光、ホスピタリティ、観光テクノロジーなどを対象とし、急成長する中東観光市場へのゲートウェイとして機能している。特にドバイは国際航空、ホテル、MICE、観光投資の拠点として存在感を高めており、Arabian Travel Marketは中東市場を理解するうえで重要な展示会である。

3-3. 世界の展示会場の規模と日本の位置

展示会産業の国際競争力を考えるうえで、物理的なインフラ、すなわち展示会場の規模は重要な制約条件となる。以下に、UFIの展示会場データに掲載されている世界の大規模会場(屋内10万㎡以上)に加え、日本の主要会場を面積順に整理した41)

世界の大規模展示会場と日本の主要会場

【表3-2】

世界の大規模会場(屋内10万㎡以上)と日本の主要会場

表3-2 世界の大規模会場(屋内10万㎡以上)と日本の主要会場
会場(国)面積備考
China Import & Export Fair Complex(中国)50.4万㎡世界最大
National Exhibition and Convention Center(中国)47.0万㎡ 
Messe Hannover(ドイツ)39.2万㎡ 
Fiera Milano(イタリア)34.5万㎡ 
Paris Nord Villepinte(フランス)25.0万㎡ 
McCormick Place(アメリカ)24.2万㎡ 
Feria Valencia(スペイン)22.3万㎡ 
東京ビッグサイト(日本)11.7万㎡日本最大
幕張メッセ(日本)7.5万㎡ 
インテックス大阪(日本)7.0万㎡ 

出典:UFI, World Map of Exhibition Venues(2023年12月)、幕張メッセ公式サイト、インテックス大阪公式サイトより作成

(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)

表3-2を見ると、日本最大の展示会場である東京ビッグサイトの総展示面積は11.7万㎡で、UFIの展示会場データに掲載される世界の超大型会場と比べると規模は限られることがわかる。世界最大級のChina Import & Export Fair Complex(中国輸出入商品交易会展館)や、Messe Hannover(Deutsche Messe)のような大規模会場と比べると、その差は大きい。さらに、幕張メッセ(7.5万㎡)42)やインテックス大阪(7.0万㎡)43)といった国内の主要会場を見ても、中国やドイツの代表的な展示会場との差は小さくない。

こうした会場規模の差は、日本が大型の国際見本市を誘致・開催していくうえで、不利に働く可能性がある。加えて、2025年以降は東京ビッグサイトをはじめ、国内主要展示会場で改修・再整備に伴う利用制限が予定されている。インテックス大阪、パシフィコ横浜、ポートメッセなごや、福岡国際センターなどでも、時期や内容は異なるものの、特定ホールの休館、搬入出・アクセスの制限、短期間の全館休館などが生じる見込みである。

もっとも、これらはすべてが展示面積の大幅減少を意味するわけではない。会場によって影響の範囲は異なるため、国際競争力の議論においては、単純な面積比較だけでなく、会場運用の柔軟性、代替会場の活用、訪日来場者を受け入れるための環境整備もあわせて考える必要がある。

3-4. グローバル主催企業の日本進出

2019年以降、海外の大手展示会主催企業による日本市場での新規展開や大型イベント開催が続いている。以下では、公開情報で確認できた主な事例を整理した。

海外大手展示会主催企業の日本展開

【表3-3】

海外大手展示会主催企業による日本市場での新規展開・大型イベント

表3-3 海外大手展示会主催企業による日本市場での新規展開・大型イベント
企業名展示会名業種進出時期
Koeln Messe(独)ORGATEC TOKYO / ISM Japan家具 / 菓子2022年~ / 2023年~
Koeln Messe(独)Anuga Select Japan食品・飲料2024年~
Messe Dusseldorf(独)Pro Wine Tokyoワイン・酒類2024年~
Clarion Events(英)DSEI Japan防衛・安全保障2019年~

公開情報ベースで初回開催年または日本開催確認年を記載。(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)

※公開情報ベースで初回開催年または日本開催確認年を記載。

こうした動きは、日本市場がグローバルな展示会主催企業にとって、一定の魅力を持つ市場として見られていることを示している。一方で、海外主催企業の進出は、国内主催者にとって競争環境の変化を意味する。国際ブランドを持つ展示会が国内に入ってくることで、来場者や出展者にとっては選択肢が広がる一方、国内展示会には、テーマ設定、国際集客、商談機会の設計、展示会ブランドの磨き込みがより強く求められるようになる。

3-5. 日本企業の海外展示会活用の視点

円安・人口減少という構造的な環境変化の中で、海外市場への展開を模索するBtoB企業は増加傾向にある。展示会は、海外市場への参入において、現地のニーズや競合環境を直接確認できる数少ない機会である。

海外展示会は、その性格によっていくつかの類型に分けて考えることができる。

製造業系(Hannover Messe等)
日本のものづくり技術を海外バイヤーに直接アピールする場

テクノロジー系(CES等)
最新技術のトレンド把握とグローバルな競合環境を俯瞰する場

医療・ヘルスケア系(MEDICA等)
医療機器、ヘルステック、介護関連製品などについて、規制対応や現地代理店開拓の可能性を探る場

消費財・デザイン系(Maison&Objet等)
日本の伝統工芸や意匠性の高い製品の海外進出の足がかり

食品系(Anuga等)
日本の食品・飲料メーカーが海外バイヤーと直接商談し、海外市場への参入可能性を検証する場

地域特化型
特定の市場圏への参入を検討する際の情報収集の場

海外展示会出展には言語対応、物流、規制対応、現地パートナーの確保など、国内展示会とは異なるハードルがあることも事実である。特に中小企業にとっては、ノウハウの蓄積がまだ十分とはいえない領域であろう。

ただし、前項で触れたように、グローバル主催企業の日本進出やJIMTOF 2024に見られる海外来場者の倍増49)といった動きは、海外展示会に出展せずとも国内展示会において海外との接点が増加していることを示している。

加えて注目したいのは、国内展示会を海外展開の試金石として活用する動きである。国内展示会に出展し、国外から来場した海外バイヤーの反応を確認したうえで、次の段階として海外展示会に打って出る。こうした進め方は、いきなり海外市場に挑むのではなく、国内で手応えを確かめながら展開先を見極める方法として有効である。

つまり、これからの展示会を活用した海外展開は、必ずしも「最初から海外展示会に出る」ことだけを意味しない。まず国内展示会で海外来場者との接点をつくり、その反応をもとに海外展示会への出展や現地展開へ進む。国内展示会と海外展示会を段階的に組み合わせる戦略が、中小企業にとっても現実的な選択肢になりつつある。

【脚注】

17. UFI, The Global Association of the Exhibition Industry (2025)「34th Global Exhibition Barometer」、2025年2月公表、n=390社・56カ国・地域
https://www.ufi.org/mediarelease/ufi-global-barometer-indicates-further-growth-expected-in-2025-for-the-exhibition-industry-globally/
18. 公益財団法人日本交通公社(2025)「旅行年報2025年版」、公益財団法人日本交通公社刊
https://www.jtb.or.jp/book/annual-report/annual-report-2025/
19. UFI, The Global Association of the Exhibition Industry (2025)「35th Global Exhibition Barometer」、2025年7月公表
https://www.ufi.org/reports/the-global-exhibition-barometer-july-2025/
20. Consumer Technology Association (CTA) (2025)「CES 2025 Audit Reveals Growing Attendance from Executives, Investors, and Media」、2025年3月27日公表
https://www.ces.tech/press-releases/ces-2025-audit-reveals-growing-attendance-from-executives-investors-and-media
21. Consumer Technology Association (CTA) (2025)「CES 2025 Attendance Audit Summary」
https://www.ces.tech/media/53eghnx5/ces-2025-attendee-audit-summary.pdf
22. Consumer Technology Association (CTA) (2026)「CES 2026 プレスリリース」
https://www.ces.tech/
23. GSMA(2026)「GSMA MWC26 Barcelona closes 20th anniversary edition」、2026年3月5日公表
https://www.gsma.com/newsroom/press-release/gsma-mwc26-barcelona-closes-20th-anniversary-edition/
24. 一般社団法人日本工作機械工業会 / 株式会社東京ビッグサイト(2024)「JIMTOF2024 結果報告」
https://jimtof.org/jp/finalreport.html
25. 同上
26. RX Japan(2026)「SMART ENERGY WEEK」公式サイト
https://www.wsew.jp/hub/en-gb.html
27. FOODEX JAPAN 2026 一般社団法人日本能率協会(FOODEX JAPAN事務局)(2026)「FOODEX JAPAN 2026 Show Report(開催速報)」
https://foodex.jma.or.jp/en/exhibit/report.html
28. ビジネスガイド社(2026)「Tokyo International Gift Show」公式サイト
https://www.giftshow.co.jp/english/tigs/index.htm
29. SPORTEC事務局(2026)「SPORTEC2026」公式サイト
https://sports-st.com/en/
30. 台湾貿易センター東京事務所(2026)「COMPUTEX TAIPEI 2026 開催概要」
https://tokyo.taiwantrade.com/event/detail.jsp?id=36163
31. China Foreign Trade Centre(2025)「The 137th Canton Fair Invitation」
https://cospub.cantonfair.org.cn/461100754573217792/1740362311717-adf92b26-5af3-4014-9263-8a45f93cb09f.pdf
32. 在ナミビア中国大使館(2025)「Introduction to the 137th Canton Fair」、2025年3月11日公表
https://na.china-embassy.gov.cn/eng//sgxw/202503/t20250311_11572805.htm
33. Deutsche Messe AG (2026)「HANNOVER MESSE ‒ World’s Leading Trade Fair for the Manufacturing Industry」
https://www.messe.de/en/messen/details/hannover-messe-2
34. Deutsche Messe AG (2026)「Messegelände Hannover ‒ Exhibition Grounds」
https://en.messegelaende.de/
35. Messe München GmbH(2025)「bauma 2025 final report」、2025年4月13日公表
https://bauma.de/en/trade-fair/press/press-releases/detail/bauma-2025-final-report.htm
36. Messe Düsseldorf GmbH(2025)「International decision-makers in the healthcare industry rely on MEDICA 2025 and COMPAMED 2025 in Düsseldorf」、2025年11月20日公表
https://www.medica-tradefair.com/en/Media_News/Press/Press_material/Press_Releases/Press_Releases/International_decision-makers_in_the_healthcare_industry_rely_on_MEDICA_2025_and_COMPAMED_2025_in_D%C3%BCsseldorf
37. Koelnmesse GmbH(2025)「Anuga 2025 writes history: Biggest business and innovation platform of the global food industry」、2025年10月公表
https://www.anuga.com/pressreleases/pm_0250_2025_24_EN%28GB%29.xml
38. SAFI / Maison&Objet (2026)「MAISON&OBJET, 30 YEARS OF EXPERTISE」
https://www.maison-objet.com/en/paris/jan-sept-maison-objet
39. Salone del Mobile.Milano(2026)「64th Salone del Mobile.Milano: final release」
https://www.milanosalone.com/2026/04/27/final_release_salone_del_mobile_milano_2026/
40. Arabian Travel Market(2026)「Arabian Travel Market」公式サイト
https://www.wtm.com/atm/en-gb.html
41. UFI (The Global Association of the Exhibition Industry) (2023)「World Map of Exhibition Venues」
https://www.clcvecta.nl/media/zwrkjapm/ufi-world-map-of-exhibition-venues-2023.pdf
42. 株式会社幕張メッセ (2026)「展示ホール・施設のご案内」
https://www.m-messe.co.jp/organizers/guide/
43. インテックス大阪 (2026)「展示場(ホール)のご案内」
https://www.intex-osaka.com/jp/organizer/hall/
44. Koelnmesse (2026) “ORGATEC TOKYO”
https://www.orgatec-tokyo.com/fair/about
45. Koelnmesse (2022) “Koelnmesse and Messe Düsseldorf create synergies in Japan”
https://www.messe-duesseldorf.com/en/Press/Newsroom/Messe_D%C3%BCsseldorf_and_Koelnmesse_create_synergies_in_Japan
46. Koelnmesse(2024) “WHERE TRADE AND TRENDS ARISE”
https://www.anuga-japan.jp/downloads/ASJ24_Pam_JP_web.pdf
47. Messe Düsseldorf (2022) “Messe Düsseldorf and Koelnmesse create synergies in Japan”
https://www.messe-duesseldorf.com/en/Press/Newsroom/Messe_D%C3%BCsseldorf_and_Koelnmesse_create_synergies_in_Japan
48. Clarion Events (2026) “DSEI Japan | Clarion Events”
https://www.dsei-japan.com/clarion-events
49. 一般社団法人日本工作機械工業会 / 株式会社東京ビッグサイト(2024)「JIMTOF2024 結果報告」
https://jimtof.org/jp/finalreport.html

■ 本白書の引用・転載について

本白書は、展示会産業の発展および出展企業・支援機関・主催者の実務改善に資することを目的として公開するものです。本白書に掲載している本文、図表、調査結果等は、出典を明記いただければ、社内資料、講演資料、報告書、記事、Webサイト等で引用・転載いただけます。

引用・転載の際は、以下のように出典を明記してください。
出典:株式会社展示会営業マーケティング「展示会白書」

清永健一

執筆・監修者プロフィール

清永 健一(きよなが けんいち)

展示会営業®コンサルタント/中小企業診断士

株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。
展示会をテーマとした書籍を複数執筆し、執筆書籍はいずれもAmazon部門1位を獲得。
「日経MJ」「NHKラジオ総合第一」など、多くのメディアで取材を受けている。

これまでに1300社を超える企業の展示会出展・営業強化を支援。
ほぼ毎週、東京ビッグサイトをはじめとする展示会場に足を運び、
現場で得た一次情報と独自調査をもとに、展示会を成果につなげる方法を発信している。