本章では、前編に続き、直近1年以内に展示会出展の責任者・担当者として携わった経験がある会社員を対象に、展示会出展の実態を把握することを目的に実施した調査結果を扱うものである。
■調査の限界と留意点
本調査結果の解釈にあたっては、以下の点に留意が必要である。
第一に、本調査はインターネット調査として実施しているため、回答者は一定程度のデジタル機器操作能力を有し、インターネット利用に抵抗感の少ない層に偏っている可能性がある。
第二に、回答者は「直近1年以内に展示会出展の責任者・担当者として携わった経験がある方」に限定している。このため、展示会出展そのものを経験していない企業や、過去に出展したが撤退した企業の声は反映されていない。現役の出展担当者の視点という点で一貫性がある一方、展示会出展企業の全体母集団を代表するものではないことに留意されたい。なお、構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。
調査方法:株式会社IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®」の企画によるインターネット調査
調査期間:2026年4月16日~同年4月20日
有効回答:直近1年以内に展示会出展の責任者・担当者として携わった経験がある方536名
4-5. ROI測定の実態と課題
■ROI測定の実施状況
展示会出展のROI(投資対効果)を定量的に測定しているかを尋ねた結果、「はい」が78.9%、「いいえ」が17.2%となった。約8割の企業が何らかの形でROI測定を試みている状況が確認できる。
展示会出展ROIの測定状況
【図4-10】
図4-10:展示会出展のROI(投資対効果)を定量的に測定していますか?。最多は「はい」の78.9%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| はい | 78.9% |
| いいえ | 17.2% |
| わからない/答えられない | 3.9% |
■ROI測定の方法
ROI測定を実施している企業(n=423)に対し、使用している測定方法(複数回答)を尋ねた結果、「商談化件数・商談化率の追跡」が65.2%で最多となった。続いて「案件化数・見積提出数の追跡(54.6%)」、「獲得リード数(名刺枚数・スキャン数等)の集計(53.4%)」、「受注金額・受注件数との紐づけ(52.7%)」となり、リード獲得から商談・受注までのファネルを追跡する測定方法が広く用いられていることがわかる。
ROI測定に使用している方法
【図4-11】
図4-11:ROI測定に使用している測定方法は何ですか?(複数回答)。最多は「商談化件数・商談化率の追跡」の65.2%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 商談化件数・商談化率の追跡 | 65.2% |
| 案件化数・見積提出数の追跡 | 54.6% |
| 獲得リード数(名刺枚数・スキャン数等)の集計 | 53.4% |
| 受注金額・受注件数との紐づけ | 52.7% |
| CRM・SFAを活用したリード進捗の追跡 | 34.5% |
| MAツールによるリードスコアリング・ナーチャリング追跡 | 32.4% |
| 来場者アンケート結果の分析 | 27.4% |
| 出展コストと売上の比較計算 | 21.7% |
| その他 | 0.2% |
| わからない/答えられない | 0.2% |
注目すべきは、単純な「獲得リード数の集計(53.4%)」よりも、「商談化件数・商談化率の追跡(65.2%)」や「案件化数・見積提出数の追跡(54.6%)」といった、より下流の指標が重視されている点である。リード数だけでは成果を適切に評価できないという認識が、出展企業の間に広がりつつある可能性がある。
一方で、展示会の現場を観察すると、依然として「まずは名刺を集める」「できるだけ多くの来場者情報を取得する」といった行動も見られる。実際に、本章2節で確認したとおり、会期中に注力している活動として、「多くの来場者に積極的に声をかけること」や「来場者の名刺やリード情報を多く獲得すること」を挙げた企業も少なくない。ノベルティやチラシの配布をきっかけに接点を増やそうとする取り組み自体は否定されるものではないが、それが来場者の関心や課題を確認しないまま行われる場合、結果として来場者との心理的な距離を広げてしまうケースも見られる。
ここに意識と行動のずれがある。出展企業の間で成果指標に対する意識は変化しつつあるものの、その意識が必ずしも会期中の現場行動に十分反映されているとは限らない。つまり、展示会における課題は、単に「何をKPI(重要業績評価指標)とするか」だけではなく、設定したKPIを現場スタッフの声かけ、接客、リード選別、会期後フォローの行動設計にまで落とし込めるかにある。
したがって、今後の展示会の成果向上においては、獲得したリードをどのように商談化・案件化へつなげるかを前提に、会期中の接点づくりを再設計する必要がある。あわせて、その設計が現場スタッフの声かけ、接客、リード選別、会期後フォローの行動にまで反映されているかを確認することも重要である。名刺を集めるための展示会から、商談、受注につながる関係性をつくる展示会へと、KPIと現場運営のあり方を転換していく必要がある。
この点については、出展者と来場者のギャップ分析を行う第7章、および具体的な実践論を展開する第8章で改めて詳しく論じる。
■ROI未測定の理由
一方、ROI測定を実施していない企業(n=92)に対してその理由を尋ねた結果、「展示会の効果は数値化しにくいと考えているから」が63.0%で最多となった。続いて「商談化までの期間が長く、展示会の効果を切り分けられないから」が34.8%、「測定にかけるコストや人的リソースが不足しているから」が19.6%となっている。
ROI測定を実施していない理由
【図4-12】
※【図4-10】の「あなたの会社では、展示会出展のROI(投資対効果)を定量的に測定していますか。」という設問に対し、「いいえ」と回答した者を対象に集計。
図4-12:ROI測定を実施していない理由は何ですか?(複数回答)。最多は「展示会の効果は数値化しにくいと考えているから」の63.0%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 展示会の効果は数値化しにくいと考えているから | 63.0% |
| 商談化までの期間が長く、展示会の効果を切り分けられないから | 34.8% |
| 測定にかけるコストや人的リソースが不足しているから | 19.6% |
| CRM・SFAなどの測定ツールを導入しておらず、測定する仕組みや体制が社内に整っていないから | 16.3% |
| 経営層や上長からROI測定を特に求められていないから | 15.2% |
| 展示会の担当者が定期的に異動・交代し、ノウハウや知見が社内に蓄積されにくいから | 3.3% |
| その他 | 1.1% |
| わからない/答えられない | 6.5% |
「効果は数値化しにくい」「商談化までの期間が長く切り分けられない」という回答の多さは、展示会の成果が短期・単年度で完結しにくいことを示している。特にBtoB商材では、複数部門の合意や社内稟議を伴うことも多いため、接点獲得から商談化・受注までのリードタイムが長くなりやすい。加えて、展示会にはブランド認知や関係構築といった中長期的効果も含まれるため、成果を特定の期間だけで評価しにくい。課題として「費用対効果が見えにくい」と認識する企業が半数に上っている状況(4-3節参照)と、ROI測定の困難さは、同根の問題として理解できる。
■出展者調査から浮かび上がる構造的ギャップ
ここで注目したいのは、出展者調査の全体像から浮かび上がる一つのギャップである。80.4%が直近の展示会で出展目的を「達成できた」と回答し、BtoBマーケティング施策の中で最も成果を実感する施策として展示会を挙げる企業が41.9%に上る(4-2節参照)。一方で、50.0%が「費用対効果が見えにくい」という課題を抱えている(4-3節参照)。
主観的な成果実感と、それを客観的指標として可視化する難しさの間にあるギャップこそが、展示会という施策の評価の難しさを象徴しているといえる。
4-6. 展示会と他のマーケティング施策の併用実態
展示会は単独の施策として存在しているのではなく、他のBtoBマーケティング施策との組み合わせの中で機能している。ここでは、展示会とデジタル施策を含む他施策との併用実態を確認する。
現在実施しているBtoBマーケティング施策(複数回答)を尋ねた結果、「展示会・見本市への出展」が62.5%で最多となった一方、「Web広告」が54.5%、「自社主催セミナー・ウェビナーの開催」が52.2%、「SNSマーケティング」が42.2%となり、多くの企業が展示会と他のマーケティング施策を併用している実態が確認できる。
実施しているBtoBマーケティング施策
【図4-13】
図4-13:現在実施しているBtoBマーケティング施策は何ですか?(複数回答)。最多は「展示会・見本市への出展」の62.5%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 展示会・見本市への出展 | 62.5% |
| Web広告(リスティング広告・ディスプレイ広告など) | 54.5% |
| 自社主催セミナー・ウェビナーの開催 | 52.2% |
| SNSマーケティング(LinkedIn・X・Facebookなど) | 42.2% |
| コンテンツマーケティング(オウンドメディア・ホワイトペーパーなど) | 36.4% |
| メールマーケティング・メルマガ配信 | 34.9% |
| ダイレクトメール(郵送・FAX) | 26.3% |
| テレアポ・電話営業 | 25.6% |
| プレスリリース配信 | 22.8% |
| その他 | 0.4% |
| わからない/答えられない | 2.4% |
なかでも、Web広告、セミナー、SNS、コンテンツマーケティングといったデジタル施策との併用が目立つ。これは、展示会とデジタル施策が単純な代替関係にあるのではなく補完的に活用されている可能性を示している。第6章で詳述するとおり、対面とデジタルは二項対立ではなく、それぞれが異なる役割を担いながら補完し合う関係にあると考えられる。
■AI時代における展示会の位置づけ ── 出展企業の認識
第2章で触れたとおり、AI・デジタルマーケティングの急速な普及は、BtoBマーケティングの風景を大きく変えつつある。こうした環境変化の中で、出展企業自身は展示会の重要性をどう見ているのか。
AI・デジタルマーケティングが急速に普及する中での対面展示会の重要性について尋ねた結果、「大幅に高まると思う」が25.0%、「やや高まると思う」が44.6%となり、合計で約7割(69.6%)が展示会の重要性は今後「高まる」と回答した。なお、「変わらないと思う」は22.2%、「やや低下する」「大幅に低下する」の合計は5.9%にとどまっている。
AI時代における対面展示会の重要性
【図4-14】
図4-14:AI・デジタルマーケティングが急速に普及する中、対面展示会の重要性は今後どうなると思いますか?。最多は「やや高まると思う」の44.6%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 大幅に高まると思う | 25.0% |
| やや高まると思う | 44.6% |
| 変わらないと思う | 22.2% |
| やや低下すると思う | 5.0% |
| 大幅に低下すると思う | 0.9% |
| わからない/答えられない | 2.2% |
「重要性が高まる」と回答した理由を複数回答で尋ねた結果、「オンライン商談だけでは構築しにくい信頼関係を対面で築けるから」が66.5%で最多となった。続いて「AI検索では得られない、五感を使った製品体験や実物確認ができるから(53.4%)」、「情報過多の時代に、直接対話で得られる一次情報の価値が高まっているから(47.7%)」、「デジタル施策だけでは競合との差別化が難しくなっているから(39.9%)」が挙がっている。
展示会の重要性が高まる理由
【図4-15】
図4-15:展示会の重要性が「高まる」と思う理由は何ですか?(複数回答)。最多は「オンライン商談だけでは構築しにくい信頼関係を対面で築けるから」の66.5%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| オンライン商談だけでは構築しにくい信頼関係を対面で築けるから | 66.5% |
| AI検索では得られない、五感を使った製品体験や実物確認ができるから | 53.4% |
| 情報過多の時代に、直接対話で得られる一次情報の価値が高まっているから | 47.7% |
| デジタル施策だけでは競合との差別化が難しくなっているから | 39.9% |
| 来場者は購買意欲が高く、質の高い商談につながりやすいから | 25.2% |
| 業界トレンドや競合動向を短時間で一度に把握できる場として代替がないから | 16.1% |
| その他 | 0.3% |
| わからない/答えられない | 0.0% |
出展企業が「展示会の重要性が高まる」と認識する理由の上位は、「対面での信頼関係構築」「五感を使った体験」「一次情報の価値」「競合差別化」と、いずれもデジタル施策では置き換えにくい価値に集中している。ここまで確認したとおり、多くの企業が展示会とデジタル施策を併用している状況を踏まえれば、出展企業は両者の特性を踏まえたうえで、展示会に独自の役割を見出していると読み取れる。
こうした認識は、前節で確認した予算増加見込み(63.5%)や、次節で確認する出展方針の拡大・維持(合計87.1%)の背景として整合的に理解できる。第6章では、このAI時代における展示会の位置づけを、より構造的な観点から論じる。
4-7. 出展頻度と規模
■出展回数
直近1年間の出展回数を尋ねた結果、「2~3回」が30.6%で最多となり、「4~5回」が29.3%でこれに続いた。「6~9回」が11.6%、「10回以上」が15.3%となり、年間4回以上出展している企業の合計は56.2%に達する。一方で、「1回」と回答した企業も10.4%あり、年に一度の出展を重点的な営業・マーケティング機会として活用している企業も一定数存在する。つまり、展示会は高頻度に出展する企業だけの施策ではなく、年1回の重要な接点づくりとして活用される場合も含め、年間計画の中に組み込まれたマーケティング施策として位置づけられていることがうかがえる。
直近1年間の展示会出展回数
【図4-16】
図4-16:直近1年間の展示会出展回数はどのくらいですか?。最多は「2~3回」の30.6%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 10回以上 | 15.3% |
| 6~9回 | 11.6% |
| 4~5回 | 29.3% |
| 2~3回 | 30.6% |
| 1回 | 10.4% |
| わからない/答えられない | 2.8% |
■出展規模
直近の展示会出展における出展規模(小間数)を尋ねた結果、「4~6小間」が30.8%で最多、「2~3小間」が28.0%でこれに続いた。また、「1小間」も12.1%存在しており、小規模出展も一定の割合を占めている。一方、「7~10小間」は15.1%、「11小間以上」は11.6%で、7小間以上の比較的大型のブースで出展する企業も26.7%存在する。出展規模は、中規模層(2~6小間)を中心としつつも、1小間の小規模出展から7小間以上の大型出展まで幅広く分布しており、企業の戦略や予算規模によって出展の仕方が分かれている実態が読み取れる。
直近展示会の出展規模
【図4-17】
図4-17:直近の展示会出展における出展規模(小間数)はどのくらいですか?。最多は「4~6小間」の30.8%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 1小間 | 12.1% |
| 2~3小間 | 28.0% |
| 4~6小間 | 30.8% |
| 7~10小間 | 15.1% |
| 11小間以上 | 11.6% |
| わからない/答えられない | 2.4% |
■今後の出展方針
今後1年間の展示会出展方針を尋ねた結果、「現状の出展回数・規模を維持する予定」が53.5%で最多となり、「出展回数・規模を拡大する予定」が33.6%、「縮小する予定」が7.6%、「出展を中止・撤退する方向で検討している」が1.9%となった。維持または拡大と回答した企業の合計は87.1%に達し、出展撤退を検討している企業は1割未満にとどまる。
今後1年間の展示会出展方針
【図4-18】
図4-18:今後1年間の展示会出展方針について教えてください。最多は「現状の出展回数・規模を維持する予定」の53.5%です。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 出展回数・規模を拡大する予定 | 33.6% |
| 現状の出展回数・規模を維持する予定 | 53.5% |
| 出展回数・規模を縮小する予定 | 7.6% |
| 出展を中止・撤退する方向で検討している | 1.9% |
| わからない/答えられない | 3.4% |
前節で確認した予算増加見込み(63.5%)と合わせて考えると、出展企業の展示会に対する投資意欲は、今後1年間においても堅調に推移する可能性が高いといえる。
本章では、出展企業側の実態を6つの切り口から整理した。展示会は最も成果を実感する施策として選ばれる一方で、費用対効果の可視化という構造的課題を抱えている。次章では、来場者側の視点から展示会の実態を明らかにする。
■ 本白書の引用・転載について
本白書は、展示会産業の発展および出展企業・支援機関・主催者の実務改善に資することを目的として公開するものです。本白書に掲載している本文、図表、調査結果等は、出典を明記いただければ、社内資料、講演資料、報告書、記事、Webサイト等で引用・転載いただけます。
引用・転載の際は、以下のように出典を明記してください。
出典:株式会社展示会営業マーケティング「展示会白書」

