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第2章:展示会の変遷 〜コロナ前から現在まで〜|展示会白書

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本章では、国内展示会の開催件数・出展者数・来場者数等の推移を時系列で整理する。年次統計の基本ソースは公益財団法人日本交通公社の「旅行年報2025年版」2)であり、複数年の推移を示す場合は各年版を参照した。

2-1. コロナ禍以前の展示会(〜2019年)

まず、コロナ禍以前の展示会産業の姿を確認しておきたい。以下に2014年、2018年、2019年の主要統計を示す。

開催件数は、2014年から2019年にかけて685件から764件へと約11.5%増加、出展者数は2018年の122,551社をピークに、2019年にはやや減少に転じていた。一方、来場者数は2014年の約1,417万人から2019年の約1,345万人へとやや減少しており、開催件数の増加に反して集客力は頭打ちの傾向が見られていた。

小間数とは、展示会における出展スペースの区画単位であり、展示面積を把握する際の指標となる。一般的には1小間=間口3m×奥行3m、約9㎡を基準とする場合が多い。この小間数も、2014年の151,261小間から2019年には126,045小間へと縮小している。出展者数が増えても一社あたりの出展面積は縮小傾向にあったことになり、小規模ブースでの出展が増加していた可能性が読み取れる。

コロナ禍以前の展示会主要統計

【表2-1】

コロナ禍以前の展示会主要統計

表2-1 コロナ禍以前の展示会主要統計
開催件数出展者数小間数来場者数
2014年685件104,532社・団体151,261小間14,171,872人
2018年763件122,551社・団体149,175小間13,309,251人
2019年764件117,511社・団体126,045小間13,445,519人

対象:商談性の高い展示会(プライベートショー除く)、実績値。(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)

こうしたコロナ禍前のデータからは、展示会産業が2019年時点で単純な量的拡大の段階から、より質的な価値が問われる段階へ移行しつつあったことが読み取れる。コロナ禍前の時点で、開催件数は増え続ける一方、来場者の伸びは頭打ちとなり、一件あたりの規模も緩やかに縮小していた。この点は、コロナ禍後の回復を評価するうえで重要な前提となる。

2-2. コロナショック(2020-2021年)

2020年、新型コロナウイルスの世界的な流行は、展示会産業に壊滅的な打撃を与えた。

2020年の実績は、開催件数474件(前年比-38%)、出展者数42,498社・団体(同-64%)、来場者数2,923,185人(同-78%)であった3)。特に2020年3月から6月にかけては開催件数がゼロとなり、業界は事実上の活動停止に追い込まれた。

2021年についても状況は大きく改善せず、度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により、展示会の開催は不安定な状態が続いた。オンライン展示会やバーチャルブースといった代替手段が模索されたが、リアル展示会の代替としては限定的な効果にとどまったとする見方が多い。

2-3. 回復期(2022-2023年)

2022年に入り、行動制限の段階的な緩和とともに展示会産業は回復に向かった。

2022年の実績は、開催件数877件、出展者数75,669社・団体、来場者数6,047,539人であった(旅行年報2025年版による改訂値*)4)。件数ベースでは2019年の764件をすでに上回った一方、来場者数はなお2019年水準の45%程度にとどまっていた。

2023年はさらなる回復を見せた。開催件数882件、来場者数9,647,380人となり、来場者数は前年比159.5%と大幅に伸長した。ただし、2019年水準(13,445,519人)と比較すると、なお約72%の回復にとどまっている。

2-4. 現在(2024-2026年)

2024年は、展示会産業にとって一つの節目となった年である。「旅行年報2025年版」の集計5)によれば、2024年の主要指標は以下のとおりであった。

開催件数は2019年を大きく上回り、出展者数・小間数もおおむね9割台まで回復した。

一方、来場者数はなお2019年の約3分の2強にとどまっており、開催件数の増加が、必ずしも来場者数の増加につながっていないことがわかる。

ただし、2024年の来場者数が2019年比67.5%にとどまっている点については、単純な減少として読むべきではない。来場者数のカウント方法については、コロナ前後で大きく変更された例もある。コロナ禍以前の日本では、同一来場者が複数回入退場した場合にその都度カウントする「延べ人数(Visits)」として公表していた展示会も存在していた。しかし、コロナ禍において感染症対策として全来場者の事前登録とQRコード等による入退場管理が広がったことを契機に、重複を排除した「実人数(Visitors)」ベースでの計測へと移行した展示会が増加したとされる6)。このため、2019年と2024年の来場者数を単純比較する際には、一定の留意が必要である。

2024年展示会主要指標

【表2-2】

2024年展示会主要指標

表2-2 2024年展示会主要指標
指標2024年実績2023年比2019年比
開催件数927件105.1%121.3%
出展者数109,687社・団体108.4%93.3%
小間数115,154小間108.1%91.4%
来場者数9,070,898人94.0%67.5%

対象:商談性の高い展示会(プライベートショー除く)、実績値。(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)

なお、本白書が参照する公益財団法人日本交通公社「旅行年報」は毎年10月に発行されており、2025年の実績データは「旅行年報2026年版」に収録される予定である。
本白書執筆時点(2026年前半)では同書が未刊行であるため、掲載可能な最新実績は2024年分にとどまる。

また、2024年の来場者数が前年比6.0%減となった背景には、JAPAN MOBILITY SHOW(旧東京モーターショー7))が一般来場者を広く集める大規模展示ではなく、ビジネスイベントであるJAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEKとして開催されたという構造的な要因がある。同展は、一般来場者向けの大規模展示として開催される場合には100万人規模の来場者を集める国内最大級の展示会である。一方、2024年はビジネスイベントとして開催されたため、通常開催時と比べて来場者数が大幅に少なく、統計全体が押し下げられる要因となった。

■主要展示会場の改修・利用制限の影響

展示会産業の今後を見通すうえでは、主要展示会場の改修・再整備に伴う利用制限も外部環境として無視できない。なかでも東京ビッグサイトでは、2025年7月から2028年2月中旬にかけて、段階的な休館を伴う大規模改修工事が予定されている。公式発表によれば、東京ビッグサイトの改修スケジュールは以下のとおりである8)

西展示棟:2025年1月 ~ 2025年6月末休館
東展示棟1~3ホール:2025年7月~2026年3月末休館
東展示棟4~6ホール:2026年4月~2026年12月末休館
全館休館:2027年1月~2月中旬、2028年1月~2月中旬

また、インテックス大阪、パシフィコ横浜、ポートメッセなごや、福岡国際センターなどでも、時期や範囲は異なるものの、改修工事に伴う利用制限が予定されている。

ただし、これらの影響は会場によって大きく異なる。特定ホールの休館にとどまるもの、搬入出動線や駐車場の制限が中心となるもの、短期間の全館休館にとどまるものもある。したがって、展示会需要そのものを左右する要因というよりも、開催規模、会場選定、出展枠、搬入出動線、来場者導線などに影響しうる外部環境として捉える必要がある。この点については第7章で改めて論じる。

■2025年・2026年の見通し

見本市展示会通信の集計によれば、2025年は約980件9)、2026年は約995件10)の開催が予定されている。

東京ビッグサイトなどの展示会場で改修・利用制限が進む中でも、2025年の開催件数は増加し、2026年も高い水準での開催が見込まれている。このことから、展示会需要の底堅さがうかがえる。

2-5. 業界・産業別に見る展示会の全体像

展示会は特定の業界に限ったマーケティング手法ではない。日本展示会協会(JEXA)の分類によれば、2024年の国内展示会は生産財関連が444件、消費財関連が483件である。製造、食品、ファッション、ギフト、IT・DX、建築、医療など幅広い産業領域で開催され11)、新しい展示会も生まれ続けている。ここでは、その中でも2023年から2025年にかけて開催数の増加が確認できる主な分野を取り上げ、展示会テーマの広がりを整理する。

表2-3は全業界を網羅したものではないが、展示会の開催テーマが特定分野に限定されず、複数の産業領域で拡大していることを示している。なかでも注目すべきは、IT・AI分野である。同分野は、2023年時点ですでに66件と開催件数の多い領域であったが、2025年には84件まで増加し、2023年比127%に達している。もともと一定の開催規模を持つ分野でありながら、さらに増加している点に、IT・AIへの関心の高まりが展示会の開催テーマや企画数の増加として表れていることが読み取れる。

開催数が増加した主な業界分野

【表2-3】

2023年から2025年にかけて開催数が増加した主な業界分野

表2-3 2023年から2025年にかけて開催数が増加した主な業界分野
業種2023年2024年2025年2023年比
IT・AI666784127%
製造・設計・制御363943119%
化学・製薬・バイオ141616114%
美容・健康364140111%
機械要素・部品・工業素材333134103%
ギフト・生活雑貨292930103%

本表は、全業界分野を網羅したものではなく、2023年から2025年にかけて開催数の増加が確認できる主な分野を抜粋したもの。(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)(公表資料をもとに本白書で整理・作成した基礎データです。)

(注記)本表は、全業界分野を網羅したものではなく、2023年から2025年にかけて開催数の増加が確認できる主な分野を抜粋したものである。2023年比は2025年の開催件数を2023年で除した値。出典は脚注12参照。

一方で、開催件数の増加がそのまま来場者数の増加につながるとは限らない。業界・産業ごとに来場者数の傾向も異なる。SEMICON JAPAN(国際半導体製造装置材料展)2025は121,267人13)、SMART ENERGY WEEK[春]2025は68,840人14)が来場し、いずれも過去最大規模を記録した。これに対し、IT・AI関連の展示会では、来場者数の伸び悩みや減少が見られるものもあった。

この背景の一つとして考えられるのが、IT・AI分野における展示会開催件数そのものの増加である。

社会的関心の高まりを受けて展示会の開催機会が増えることは、来場者にとって選択肢が増えることを意味する。その結果、IT・AI分野では、来場者が複数の展示会に分散し、一展示会あたりの来場者数が伸びにくくなっている可能性がある。もちろん、来場者数の変化には、開催時期、会場規模、出展内容、主催者の集客力、対象業界の景況感など複数の要因が影響するため、開催件数の増加だけで説明できるものではない。しかし、開催件数の増加と来場者数の増加は、必ずしも同じ動きをするわけではない。この点は、IT・DX関連展示会の動向を読み解くうえで重要な視点である。

個別の展示会に目を向けると、展示会が地域経済に及ぼす影響の大きさも見えてくる。大阪市の委託により三菱総合研究所が作成した報告書によれば、インテックス大阪における2024年の展示会開催件数は115件、経済波及効果は644.3億円と算出されている15)。展示会は単なる出展者と来場者のマッチングの場にとどまらず、宿泊・飲食・交通など周辺産業への波及を含む地域経済の活性化装置としても機能しているといえる。

また、特定の産業分野における展示会の具体的な成果を示す事例として、INTERMOLD・金型展・金属プレス加工技術展2022(大阪開催)のデータが参考になる。同展示会には243社・団体が出展、23,875人が来場し、出展者の約95%が「新規顧客獲得」を出展目的として挙げ、そのうち約4割が目的を達成したと回答している16)。製造業系の展示会において、リード獲得・新規接点の創出という展示会の基本的な価値が、一定の水準で実現されている状況がうかがえる。

こうした業種の多様性と地域経済へのインパクトは、展示会の価値を特定の業種や文脈だけで評価することの限界を示唆している。

【脚注】

2. 公益財団法人日本交通公社(2025)「旅行年報2025年版」、公益財団法人日本交通公社刊
https://www.jtb.or.jp/book/annual-report/annual-report-2025/
3. 公益財団法人日本交通公社(2021)「旅行年報2021年版」、公益財団法人日本交通公社刊
https://www.jtb.or.jp/book/annual-report/annual-report-2021/
4. 公益財団法人日本交通公社(2025)「旅行年報2025年版」、公益財団法人日本交通公社刊
https://www.jtb.or.jp/book/annual-report/annual-report-2025/
*注:「旅行年報2025年版」で2022年版の値を一部改訂している。本白書では最新の改訂値を採用する。
5. 公益財団法人日本交通公社(2025)「旅行年報2025年版」、公益財団法人日本交通公社刊
https://www.jtb.or.jp/book/annual-report/annual-report-2025/
6. 日本展示会認証協議会(JECC)展示会データ認証制度(公表日不明)
http://www.jecc-ninsho.jp/category/1888495.html
経済産業省(2014)「展示会産業概論 ~はじめて展示会に関わる人のための入門書~」
https://www.nittenkyo.ne.jp/other/document/H2603_gairon.pdf
来場者(Visitors)と来場(Visits)の定義については、日本展示会認証協議会(JECC)「展示会データ認証制度」に明記されている。前者は会期中の実人数、後者は延べ日数ベースのカウントと区別される。また、国際規格ISO 25639においても実人数(Unique Visitor)が標準とされており、日本の集計慣行との乖離は経済産業省「展示会産業概論」(2014年3月)でも課題として指摘されていた。
7. 日本自動車工業会(2024)「『JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024』開幕 — あわせて『JAPAN MOBILITY SHOW 2025』の開催を発表 —」
https://www.jama.or.jp/release/news_release/2024/2780
8. 株式会社東京ビッグサイト「利用照会(空き状況のお問い合わせ)」
https://www.bigsight.jp/organizer/guide/inquiry
9. ピーオーピー社(2025年1月)「2025年の見本市展示会開催状況」
https://www.eventbiz.net/?p=150249
10. ピーオーピー社(2026年1月)「2026年の見本市展示会開催状況」
https://www.eventbiz.net/?p=163119
11. 一般社団法人日本展示会協会(2024)「JEXA pamphlet」
https://cdn.clipkit.co/tenants/897/resources/assets/000/001/429/original/JEXA_pamphlet2025.pdf
12. ピーオーピー社「EventBiz vol.34」(ピーオーピー社、2024年2月)p.61、「EventBiz vol.38」(同、2025年2月)p.59、「EventBiz vol.42」(同、2026年2月)p.71、を基に作成
13. SEMICON Japan(2025)「開催速報2025」
https://www.semiconjapan.org/jp/about/event-flash
記載の来場者数121,267人は主催者発表の延べ人数。
14. RX Japan株式会社(2025)「【68,840名が来場】『スマートエネルギーWEEK【春】・GX経営WEEK【春】2025』の開催結果報告書を公開しました」
https://www.wsew.jp/hub/ja-jp/press/release/28.html
記載の来場者数68,840人は主催者発表の実人数。
15. 三菱総合研究所(2025)「国際見本市会場(インテックス大阪)の改修方針などの検討業務委託報告書」内、「5.インテックス大阪における展示会等開催状況と経済波及効果」
https://www.city.osaka.lg.jp/keizaisenryaku/cmsfiles/contents/0000563/563687/honpen.pdf
16. 同上

■ 本白書の引用・転載について

本白書は、展示会産業の発展および出展企業・支援機関・主催者の実務改善に資することを目的として公開するものです。本白書に掲載している本文、図表、調査結果等は、出典を明記いただければ、社内資料、講演資料、報告書、記事、Webサイト等で引用・転載いただけます。

引用・転載の際は、以下のように出典を明記してください。
出典:株式会社展示会営業マーケティング「展示会白書」

清永健一

執筆・監修者プロフィール

清永 健一(きよなが けんいち)

展示会営業®コンサルタント/中小企業診断士

株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。
展示会をテーマとした書籍を複数執筆し、執筆書籍はいずれもAmazon部門1位を獲得。
「日経MJ」「NHKラジオ総合第一」など、多くのメディアで取材を受けている。

これまでに1300社を超える企業の展示会出展・営業強化を支援。
ほぼ毎週、東京ビッグサイトをはじめとする展示会場に足を運び、
現場で得た一次情報と独自調査をもとに、展示会を成果につなげる方法を発信している。