展示会で成功を収めるには、「コンセプト」を明確にすることが重要です。効果的な出展コンセプトを設計できれば、競合との差別化を図れるだけでなく、高い集客効果が期待できるでしょう。
本記事では、展示会出展コンセプトの作り方やコツなどを紹介します。最後まで読み進めれば、十分な効果を得られる展示会コンセプトを作れるようになるでしょう。
目次
展示会のコンセプトを設計する際は、前提としてコンセプトとは何かを正確に理解することが大切です。まずは、コンセプトの概要について解説します。
展示会におけるコンセプトとは、「誰に対してどんな悩みを解決する」ブースにするのかを明確にしたものを指します。業界や時事トレンドをもとに展示会全体のテーマが決まります。その全体テーマに沿うように、自社ブースのコンセプトを定めるのです。
また、コンセプトに似た言葉で「テーマ」があります。テーマは全体的な印象や雰囲気といった、全体像を掴むための範囲を示すものです。コンセプトとは意味が異なるため、正しく理解しておきましょう。
効果的なコンセプトを策定することのよって、一貫性のあるメッセージと印象的なキャッチコピーが生み出されます。コンセプトを設計すると、以下のようなメリットを得られます。
例えば、ダイソンは「吸引力」に焦点を当てたコンセプトを展開し、掃除機市場で強力なブランディングを確立しました。キャッチコピー「変わらない吸引力」は、ダイソンの技術力と製品の特徴を簡潔に表現しています。
このように、明確なコンセプトを策定することで、一貫性のあるメッセージと印象的なキャッチコピーを生み出し、見込み客の記憶に残るようになるのです。
展示会のコンセプトを作る際は、以下の流れで行うようにしましょう。
それぞれについて、以下で詳しく紹介します。
展示会のコンセプトは、出展する目的によって大きく変化します。目的にあったコンセプトを設計できなければ、成果を上げることは困難です。
出展目的の例として、以下の内容が挙げられます。
新規顧客の獲得が目的の場合は、商品の特徴やメリットを訴求できるブースが良いです。一方で、既存顧客との関係強化が目的であれば、より深い説明や個別の課題を解決するための提案が行える落ち着いたブースが良いでしょう。
このように、目的によって最適なブース出展の方向性が定まるので、最初に目的を明確にすることが大切です。
展示会の目的を明確にして、展示会の企画をより良いものにしたい方は、「展示会の出展目的を明確化するコツ」をご覧ください。
ターゲット設定は、コンセプト設計の核といえます。誰に訴求したいのか定めなければ、ターゲットの悩みやニーズを汲み取れないため、来場者にとって魅力的な展示会ブースにできません。ターゲットを設定すれば、以下のようなメリットを得られます。
例えば、「製造業の生産管理責任者、40代男性、効率化に悩みを抱えている」といった具体的なイメージを持っていたとします。
この場合、接客の言葉がけをビジネスライクな丁寧語にし、管理者としての責任や人をまとめる難しさなどに共感すると効果的です。
このように、ターゲットを明確にすることで、ブースデザインや展示内容、スタッフの対応まで一貫した戦略を立てられます。
展示会で紹介する商品・サービスの選定は、コンセプト設計の重要な要素です。商品・サービスを選定する際は、以下の点に注意しましょう。
選定した商品やサービスの特徴を十分に理解し、コンセプトに反映させることで、より説得力のあるブース展開が可能になります。
ターゲットの課題と自社の提供価値をマッチングさせることは、効果的なコンセプト設計の鍵です。
これらの手順を踏まえ、おおまかなコンセプトを設計しましょう。例えば、以下のように表現するのがおすすめです。
「製造現場の効率化に悩む経営者に対して、システムを導入することで生産性を〇%向上させる」
ターゲットの悩みと解決策、根拠や理想の状態を明確に提示できれば、質が高いコンセプトを生み出せます。
ここまでの内容を踏まえ、最終的なコンセプトを以下の構文で設計します。
例えば、以下のようなコンセプトを設計します。
「製造業の経営者に、システムを導入すれば生産性向上を実現できることが伝えられる展示ブース」
このコンセプトに沿って、ブースのレイアウトやブースキャッチコピー、展示内容、スタッフの対応を定めます。これらが明確に定まっていれば、一貫性と統一感のある出展ブースとなるでしょう。
先述した通り、展示会で十分な成果を得るには、コンセプト作りが重要です。コンセプトを設計する際は、「来場者側の目線で考える」ように意識しましょう。
コンセプトを設計する際、つい自社の強みや特徴から考えがちです。しかし、自社の強みや特徴は来場者にとっては重要ではありません。来場者が自分にとって重要だと感じるコンセプトを設計するには、下記のポイントを抑えることが大切です。
これらを抑えれば、来場者のニーズに沿った展示会コンセプトが完成します。以下では、具体的なポイントについて紹介します。
まずは、展示会で出会いたい人を決めましょう。ターゲットの設定に近い内容ですが、ここではより具体的に決めます。
例えば、「建設業に勤める人」ではなく、「建設業で働く10名の部下をまとめる現場監督責任者、40代男性」といったように細かく設定してください。
さらに、展示会の会場で出会うとした場合、その人物が決裁権を持っているのか、現場で困っていて視察に来ているだけなのか、なども設定します。
会社ではなく人=パーソン単位まで落とし込んで考えることが重要です。
たとえば、「建設業」ではなく「建設業の設計責任者」と考えるということです。
展示会場には、「建設業」という人は歩いていません。
だから、「建設業」のどういう人に出会いたいかまで、考えましょう。
出会いたいのは、経営者でしょうか?それとも、購買責任者?はたまた、設計責任者でしょうか?
この設定で、注意すべきことが2つあります。
ひとつは、のちに商談化した際に、もっとも会いたい人を設定することです。
もうひとつは、そういった人が、出展予定の展示会の来場者として一定数以上いるかどうかを検証することです。
上記は実際にブース対応するとした場合に、どのような接客が適切なのかを考えるために重要であるため、必ず具体的に設定してください。
ターゲットを具体的に決めたあとは、日頃の悩みを明確化しましょう。実はこのポイントが最も重要です。
特に「日頃つぶやいている悩み」であることが重要です。
日ごろ心の中でつぶやいているなら、展示会場でもつぶやいているはずですだからです。
自分がつぶやいている悩みをズバリ言い当てたブースが目の前に出現したら、必ず興味を持ちますよね。
日頃つぶやいている悩みをいい当てると、一気に距離感を縮められるのです。
具体的な悩みを探るには、以下の方法が効果的です。
実際に書き出すときは、、カギかっこ付きの直接話法で書くのがベターです。
たとえば、
「最近、設計がマンネリになってるなぁ」
とか
「やりたい設計をしようとすると予算オーバーになるなぁ」
などでしょうか。
ターゲット自身が使っているリアルな表現、言葉を知り、それに対して魅力的な解決策や提案を行いましょう。来場者は共感してくれたと感じるため、商談につながりやすくなるのです。
余談ですが、清永も最近、心の中をずばり言い当てられて思わずお店に入ってしまったことがあります。
それは、これです。
ちょうど、お腹がすいていて、何かがっつり食べたいなぁと思ってたんです。
そこに
「旨いスパゲティを腹いっぱい食べたい」
という看板が目に飛び込んできたので、まんまとお店に入ったということです。
もし、この看板が
「美味しいスパゲティ あります」
とか
「絶品スパゲティ 大盛り」
みたいな提供者側からの言葉だったら、多分、スルーしたんじゃないかなぁと思うんです。
どうでしょうか?
本人が心の中でつぶやいてる表現をそのまま書く、ということが大事なのだと肝に銘じてほしいと思います。
それと、もうひとつ、大事な点があります。
それは、
『自社がその悩みを解決できるかどうかは無視して書く』
ということです。
ここが出展コンセプト設計の最大のポイントです。
自社が解決することを前提にして考える、ということは、
自社を通して来場者を見ているということです。
それでは、ただの売り込みになってしまい、成果の上がる出展コンセプトにはなりません。
解決できない悩みがあってもいいんです。
「そういう悩みを持っている人なんですね」と共感してあげるだけでも、
「ん?このブースの人たちは、自分のことをよくわかってくれている気がするぞ」
と思ってもらえたりします。
ですから、その人になりきって、悩みをできるだけできるだけたくさん書き出してみてください。
ターゲットの悩みを把握できたあとは、自社の提案によって悩みを解決できる根拠を示します。
このとき、先ほど複数抽出したターゲットの悩みに優先順位をつけましょう。優先順位の高い悩みに対してアプローチすることで、商談につながりやすくなります。
悩みが解消された状態をその理由とともに挙げていくのです。
たとえば、
「〇〇なので、マンネリを打破して、□□になります」
とか
「△△という機能を活用することで、コストを◇%削減します」
などでしょうか?
ここで、重要なポイントがあります。先ほどもお伝えした通り、出会いたい人がつぶやいている悩みの中でできるだけ優先順位の高い悩みにリーチする方が成果がでやすい、という点です。
ですから、まず、
「その人が日ごろ心の中でつぶやいている悩みは?」で挙げた悩みを、その人の悩みの強さ・優先順位の高さ順に
並べ替えて、上の悩みから順に考えてみる、という手順で進めましょう。
さらに言うと、複数の悩みを同時に解決できる方がより、来場者を引き付けることができますから、
1つだけで満足せず、2つ、3つと考えてみてください。
ひと通りできたら、具体的に来場者に声をかけたり、提案したりすることを考えてみましょう。その際、以下の点を意識することが大切です。
上記を踏まえれば、「〇〇なので、△△(課題)を解決して、■■(メリット)を得られます。ご興味ありませんか?」といった声かけを行えるようになります。来場者に対して「本当なら期待できるかも。話を聞いてみようかな」と思ってもらえるような、期待感のある声かけを意識してください。
最後に、提案内容の裏付けとして、以下を準備しておきましょう。
「あなたの悩みを解決できますよ」と言われると、人は必ず「ホントなの?」と感じるからです。
この「ホントなの?」に回答できるように準備しておくのです。
ここでは、
商材の価値や特徴、機能を伝えるのもよいですし、事例があるとなおよしです。
これらの証拠を提示することで、来場者からの信用を得られます。不信感や疑いを払拭できれば、商談につなげやすくなるでしょう。
「こっそり教える!展示会での来場者からの疑いの晴らし方」でお伝えしている事例チラシの活用は、とても有効です。ぜひご参考になさってください。
出展コンセプト検討シートを活用する方法もおすすめです。あらかじめ設計したシートをもとに考えることで、効率的に考えをまとめられます。また、無駄や方向性のズレなども減らせます。
作成したシートは、メンバー内で共有して客観的視点からブラッシュアップしましょう。その結果、顧客視点に近いコンセプトを設計できます。
出展コンセプト検討シートは、以下を活用してください。
株式会社オーアンドケーは、清掃会社としての専門性を活かし、顧客の課題解決に焦点を当てたブース設計を行いました。
出展コンセプト検討シートを活用した設計により、客観的な分析と企画が可能となり、以下のメリットを得られています。
顧客中心のアプローチを図り、来場者との関係を深められる点も魅力的なコンセプトといえるでしょう。
コンセプトシートをどのように活用したのか、より具体的に知りたい方は「成果を出す出展コンセプトの具体例」をご覧ください。
展示会で成果を得るには、コンセプトをいかに作り込み、準備したうえで臨むかが重要です。
展示会の会場では、多くの企業が自社製品・サービスを売り込んでいます。競争が激化するなかで、ターゲットから魅力的だと感じられるブースを作るには、本記事で紹介したコンセプト作成のコツを実践するのが有効です。
本記事で紹介した出展コンセプト検討シートを活用して、ぜひ訴求力のある出展コンセプトづくりに取り組んでみてください。あなたの会社の展示会出展の成功を心から願っています。
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