展示会は「脱下請け」の突破口になる
先週のカンブリア宮殿、ご覧になりましたか?
展示会の専門家であるぼくにとって、とても示唆に富む内容でした。
OEM中心だった木村石鹸さんが、自社ブランドを立ち上げ、価格競争から抜け出していく。
その転換点のひとつに、展示会があったのです。
そして、これは単なる「展示会で商品が売れた」という話ではありません。
下請け型の事業構造から、価値で選ばれる会社へ変わっていく。
そのために展示会をどう使うべきかを教えてくれる、非常に重要な事例です。
木村石鹸さんは、もともとOEM商品の製造が中心だったといいます。
売上はある。しかし利益が出にくい。これは、多くの中小製造業が抱える共通の悩みです。
OEMは安定した仕事につながる一方で、価格決定権を持ちにくいという側面があります。
相手先ブランドの商品をつくる以上、自社の名前は前面に出ません。
技術や品質があっても、それが市場から直接評価されにくいのです。
つまり、がんばっているのに利益が残らない。。。
この状態から抜け出すには、自社の名前で、自社の価値を伝える商品やサービスを持つ必要があります。
いわゆる「脱下請け」です。
ここで多くの会社がつまずきます。
「うちにブランドなんて無理だ」
「うちの商品は普通だ」
「大手と比べたら価格で勝てない」
「営業先が見つからない」
こう考えてしまうのです。
実は、この壁を突破するコツがあります。それは展示会を活用することです。
展示会はこの壁を突破する強力な場になります。
なぜなら、展示会はまだ市場に十分知られていない商品や会社が、
自社の価値を来場者に直接ぶつけることができる場だからです。
まずは自社の強みを「仮」で決める
木村石鹸さんの自社ブランド「SOMALI」は、台所用洗剤でありながら、価格は強気の設定だったと紹介されていました。
一般的な洗剤が100円、200円で売られている中で、1000円を超える価格帯です。
社員さんが反対したのも無理はありません。
「誰が買うのか」
「高すぎる」
「知名度もないのに売れるはずがない」
現場の感覚としては自然です。
しかし、ここで重要なのは、社長が「自社の強み」を仮にでも決めたことです。
木村石鹸の強みは、単に「洗浄力」だけではなかったはずです。
もちろん、長年石鹸をつくってきた技術や品質は大きな土台です。
しかし、それだけで勝負すれば、大手メーカーの大量生産品と比較され苦しくなる。
そこで打ち出したのが、「暮らしを少し豊かにする、デザイン性のある洗剤」という価値だったのではないでしょうか。
これは非常に大事なポイントです。
中小企業が展示会に出る前に、まずやるべきことは、自社の強みを決めることです。
ただし、完璧に決める必要はありません。仮定でよいのです。
「うちの強みは、品質かもしれない」
「小ロット対応かもしれない」
「設計力かもしれない」
「現場対応力かもしれない」
「デザイン性かもしれない」
「会社の志そのものかもしれない」
まずは仮で決める。そして、その仮説を展示会で市場にぶつけるのです。
展示会は、強みを発表する場であると同時に、強みを検証する場でもあるのです。
強みがもっとも生きる展示会に出る
木村石鹸さんがすばらしかったのは、洗剤の展示会ではなく、デザインの展示会:デザイン製品展に出たことです。
普通なら、日用品や雑貨、洗剤関連の展示会に出ようと考えます。
しかし、そこに出ると、必ず既存の洗剤と比較されてしまいます。
「大手の商品はいくらか」
「ドラッグストアでいくらで売れるか」
「この価格で棚に置けるか」
そういう見方になります。
つまり、土俵が価格競争になってしまうのです。
しかし、デザインの展示会に出ると見られ方が変わります。
家具、照明、アパレル、インテリア雑貨など、デザイン性の高い商品が並ぶ中に、洗剤が置かれる。
すると、来場者は洗剤を「安く買うべき日用品」としてではなく、「暮らしを豊かにするデザイン商品」として見ます。
これは、ぼくがよく言う「ズラし戦法」です。
自社の商品カテゴリーにそのまま合わせて出展するのではなく、自社の強みがもっとも評価される展示会に出る。
これが非常に重要です。
たとえば、金属加工会社だからといって、必ず製造業向け展示会だけに出る必要はありません。
微細な加工が得意でその技術で3D金属フィギュアをつくれるなら、押し活EXPOが合うかもしれません。
衛生管理に強い素材メーカーなら、食品工場向けの展示会だけでなく、医療・介護系の展示会がマッチする可能性もあります。
「どの業界に属しているか」ではなく、
「自社の強み」が「誰に価値が伝わるか」で展示会を選ぶのです。
この発想があるかどうかで、展示会の成果は大きく変わります。
※「ズラし戦法」と「コバンザメ作戦」については、成果が出る展示会の選び方をご覧ください。
展示会は社員の目の色を変える
木村石鹸さんの事例で、ぼくが特に印象的だったのは、展示会が社員さんの意識を変えた点です。
番組では、当初、社員の方は前向きではなかったと紹介されていました。
高い洗剤なんて売れない。商品説明しても無駄だ。そんな空気があったのでしょう。
しかし、展示会でバイヤーから高く評価された。
「洗剤らしくない素敵なデザインですね」
「ぜひ販売したいです」
番組では、こうした反応を目の当たりにした瞬間、社員さんの目の色が変わったという話がありました。
これは、展示会の大きな力です。
社長がいくら社内で「この商品は売れる」「これからは自社ブランドだ」と言っても、社員はなかなか信じきれません。
特に、過去の成功体験がOEMにある会社ほど、新しい取り組みに対して慎重になります。
しかし、展示会で見込み客やバイヤーが実際に反応する姿を見ると、社員さんの中に納得感が生まれます。
「あれ、本当に評価されている」
「これは売れるかもしれない」
「自分たちの会社には価値があるのではないか」
こうした実感は、会議室では生まれません。
展示会場で、来場者の表情を見て、質問を受けて、名刺交換をして、商談が生まれるからこそ、社員の意識が変わるのです。
「売れそう!」
「売れるぞ!」
「売れた!!」
社員さんのやる気を高める特攻薬は、売れることです!!
展示会は、外に向けた営業の場であると同時に、内側に向けた意識改革の場でもあるのです!
社員の一体感を高める場として展示会を使う
脱下請けを目指す企業にとって、展示会は社員さんの意識を変えるきっかけにもなります。
脱下請けは、社長ひとりの決意だけでは進みません。
開発、製造、営業、管理部門が一体となって、
「自社の価値を自社の名前で届ける」という方向に向かわなければなりません。
展示会は、その一体感をつくる絶好の機会です。
展示会準備の学園祭効果を上手く活用しましょう。
出展前には、誰に何を伝えるのかを全員で考える。
ブースでは、社員が来場者の反応を直接見る。
会期後には、どんな相手が反応したのかを共有する。
この一連のプロセスを通じて、会社の中に「自分たちの強みはこれだ」という共通認識が生まれていきます。
展示会に出ると、来場者は遠慮なく反応します。
興味があれば足を止める。
興味がなければ通り過ぎる。
わかりにくければ質問する。
刺されば、前のめりになる。
この反応を社員全員で見ることには、大きな意味があります。
社内でどれだけ議論しても見えなかった答えが、展示会場では一瞬で見えることがあります。
「この見せ方だと反応がいい」
「意外にもこの機能が受けがいい」
「この言い方だと伝わらない」
「この業界の人が意外と興味を持つ」
「この価格でも納得してくれる人がいる」
こうした発見が、社員さんの共通体験になります。
だから展示会は、営業活動であると同時に、社員教育であり、組織活性化策でもあるのです。
儲かるターゲットにリーチする
もうひとつ重要なのが、「儲かるターゲットにリーチする」という視点です。
展示会というと、とにかくたくさんの名刺を集めることが成果だと思われがちです。しかし、それは違います。
大切なのは、出会いたい相手を明確にすることです。
木村石鹸さんの場合、ドラッグストアやホームセンターに大量に安く売るのではなく、
セレクトショップやおしゃれな雑貨店に販売先を変えていきました。
これは、非常に戦略的です。
同じ洗剤でも、売る相手が変われば、価値の伝わり方が変わります。
価格を重視する売り場では「高くて売りにくい洗剤」になります。
しかし、暮らしの質やデザイン性を大切にする売り場では、「ちょっと高いけど他の店にない選びたい商品」になります。
つまり、商品そのものを変えなくても、ターゲットを変えることで利益構造が変わるのです。
中小企業の展示会出展でも、ここを曖昧にしてはいけません。
「誰でもいいから来てほしい」
「とにかく名刺がほしい」
「大企業とつながりたい」
これでは成果につながりにくいのです。
本当に考えるべきなのは、
「どの業界の」
「どんな課題を持つ」
「どの立場の人に」
「どの価値を感じてもらえれば」
「適正価格で買ってもらえるのか」
ということです。
これが決まると、出るべき展示会も、ブースの見せ方も、キャッチコピーも、営業トークも変わります。
※これらを決めるためにはまず、出展コンセプト検討4つの質問に答えてみることです。ご参考になさってください。
展示会は会社の未来を変える投資になる
展示会は、単なる販促イベントではありません。
自社の強みを定義し、評価される市場を探し、社員の意識を変え、利益の出る顧客と出会うための戦略の場です。
木村石鹸の事例は、そのことをとてもわかりやすく示しています。
下請けから抜け出したい。
価格競争から抜け出したい。
自社ブランドを育てたい。
社員にもっと前向きに新しい挑戦に関わってほしい。
そう考える中小企業こそ、展示会を使うべきです。
ただし、何となく出るだけではいけません。
まず、自社の強みを仮に決める。
次に、その強みがもっとも高く評価される展示会を選ぶ。
そして、出会いたい相手を明確にする。
さらに、展示会を社員全員で市場の反応を感じる場にする。
この順番で取り組めば、展示会は単なる出展費用ではなく、会社の未来を変える投資になります。
脱下請けは、決して簡単ではありません。
でも、自社の価値を必要としてくれる相手は、必ずどこかにいます。
その相手と出会う場所を間違えないこと。
そして、自分たちの価値が伝わる見せ方をすること。
展示会には、そのきっかけをつくる力があります。
木村石鹸さんの挑戦は、展示会が中小企業の可能性を開く場であることを、改めて教えてくれているのです。
あなたの会社の成長発展を心から応援しています!!
このセミナーに参加すると、展示会で成果を出すコツがわかります。

展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした書籍を5冊執筆している展示会の専門家。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。

