結論:展示会の出展料、ブース装飾費、パンフレット制作費などは、一般的には「広告宣伝費」または社内で設定した「展示会費」で処理します。交通費・宿泊費は「旅費交通費」、外部スタッフへの支払いは契約内容に応じて「外注費」などに分けます。
ただし、勘定科目の名称は法律で一律に決まっているわけではありません。支出の目的と内容に応じて分類し、社内で継続して同じ基準を用いることが重要です。
最終更新:2026年7月
注意:本記事は、法人が展示会へ出展する場合の一般的な会計・税務処理を整理したものです。個別の処理は、顧問税理士または所轄税務署へご確認ください。
展示会費用に使われる主な勘定科目
展示会では、出展料、ブース装飾費、印刷費、交通費、備品購入費など、性質の異なる支出が発生します。すべてを一つの勘定科目へまとめる方法もありますが、費用対効果を把握するためには、支出内容に応じて分類する方が管理しやすくなります。
| 支出内容 | 主な勘定科目 | 処理の考え方 |
|---|---|---|
| 展示会の出展料・小間料 | 広告宣伝費/展示会費 | 商品・サービスの認知や販売促進を目的とする場合 |
| ブースの設計・施工・装飾 | 広告宣伝費/展示会費/外注費 | 一回の展示会で使用する施工・装飾費用 |
| パンフレット・ポスター・チラシ | 広告宣伝費/印刷製本費 | 来場者への告知・販売促進を目的とする制作物 |
| 不特定多数へ配布するノベルティ | 広告宣伝費 | 宣伝目的で広く配布する場合 |
| 社員の交通費・宿泊費 | 旅費交通費 | 出展準備・会場運営・撤収に伴う出張費 |
| 派遣スタッフ・コンパニオン | 外注費/業務委託費 | 契約内容と請求書の内訳に応じて処理 |
| 短期間で使い切る資材・小物 | 消耗品費 | 養生テープ、文具、小型の展示用品など |
| 繰り返し使用する高額な什器・機器 | 工具器具備品 | 取得価額や使用期間に応じて資産計上を検討 |
| 顧客との会食・贈答 | 交際費 | 接待、供応、贈答を目的とする支出 |
| 展示会視察・有料セミナー参加 | 研修費/旅費交通費 | 社員の学習や情報収集を主目的とする場合 |
展示会の出展料は広告宣伝費が一般的
自社の商品やサービスを来場者へ知らせ、新規顧客の獲得や販売促進につなげるための出展料は、一般的には「広告宣伝費」として処理します。
展示会関連費用を一括して把握したい会社では、補助科目や独自の勘定科目として「展示会費」を設ける方法もあります。重要なのは、毎回異なる科目を使うのではなく、社内の会計方針として処理基準を統一することです。
出展料を銀行振込で支払った場合
借方:広告宣伝費 500,000円 貸方:普通預金 500,000円
請求を受けた時点で未払いとして計上する場合は、貸方を「未払金」とし、支払時に未払金を消し込みます。
請求時 借方:広告宣伝費 500,000円 貸方:未払金 500,000円 支払時 借方:未払金 500,000円 貸方:普通預金 500,000円
ブース装飾費・施工費の仕訳
一回の展示会のために行うブース設計、壁面装飾、看板、照明、施工などは、「広告宣伝費」「展示会費」または「外注費」として処理する方法が考えられます。
借方:広告宣伝費 800,000円 貸方:未払金 800,000円
ただし、購入した看板、モニター、展示台などを複数年にわたって使用する場合は、単年度の費用ではなく、工具器具備品等として資産計上する可能性があります。
展示会で購入した備品の処理
展示会用のモニター、展示台、什器、照明機器などは、使用期間と取得価額を確認して処理します。
取得価額が10万円未満の場合
使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満の減価償却資産は、原則として取得時に費用処理できます。10万円未満かどうかは、通常一単位として取引される単位ごとに判定します。
借方:消耗品費 80,000円 貸方:普通預金 80,000円
取得価額が10万円以上20万円未満の場合
通常の減価償却のほか、一定の要件を満たす場合は、一括償却資産として3年間で均等に損金算入する方法があります。
一定の中小企業者等が取得する40万円未満の資産
2026年4月1日以後に取得等をする資産については、一定の要件を満たす中小企業者等であれば、取得価額40万円未満の減価償却資産を取得時に損金算入できる特例があります。
この特例には、対象法人、青色申告、年間合計300万円までなどの要件があります。すべての会社が自動的に適用できるわけではないため、利用前に税理士へ確認してください。
通常の固定資産として処理する場合
特例を使用しない場合や対象外の場合は、「工具器具備品」などで資産計上し、法定耐用年数と採用している償却方法に基づいて減価償却します。
購入時 借方:工具器具備品 500,000円 貸方:普通預金 500,000円 決算時 借方:減価償却費 当期償却額 貸方:減価償却累計額 当期償却額
購入金額を単純に3年で割ればよいとは限りません。資産の種類、取得日、法定耐用年数、償却方法などによって当期の減価償却額は異なります。
交通費・宿泊費・人件費の処理
交通費と宿泊費
展示会へ参加する社員の新幹線代、航空運賃、宿泊費、現地交通費などは、一般的には「旅費交通費」として処理します。
借方:旅費交通費 120,000円 貸方:普通預金 120,000円
通常の出張に伴う交通費・宿泊費を、従業員向けの福利を目的とする「福利厚生費」として処理するのは一般的ではありません。
社員の給与・時間外手当
既存社員の通常給与は、展示会へ参加したからといって別の勘定科目へ振り替える必要は通常ありません。時間外勤務が発生した場合も、会社の給与計算に基づいて給与手当等として処理します。
外部スタッフへの支払い
派遣会社、イベント運営会社、コンパニオン会社などへの支払いは、契約内容に応じて「外注費」「業務委託費」などで処理します。
ノベルティと接待費用の区分
来場者へ広く配布する社名入りのノベルティなど、不特定多数への宣伝効果を意図した支出は、一般的には広告宣伝費として扱います。
一方、特定の得意先への贈答や、展示会後の接待・会食は交際費に該当する可能性があります。配布先、目的、金額、内容を記録しておくことが重要です。
展示会費用を管理する際の3つのポイント
1.支出の目的で判断する
同じ「参加費」でも、販売促進を目的とした出展と、社員の研修を目的とした視察では、適切な勘定科目が異なります。費用の名称だけでなく、支出した目的に基づいて判断します。
2.社内の処理基準を統一する
出展料を広告宣伝費として処理するか、展示会費として管理するかを決め、継続して同じ基準を用います。展示会別の補助科目や部門コードを設定すると、費用対効果を比較しやすくなります。
3.請求書・領収書と内訳を保存する
出展料、施工費、交通費、ノベルティ費などは、請求書や領収書に加えて、展示会名、開催日、支出目的、配布先なども記録しておきます。
展示会費用を削減する方法
単純に装飾費を削るのではなく、出展目的とターゲットを明確にしたうえで、必要な費用と不要な費用を見極めることが重要です。
- 自社のターゲットが来場する展示会を選ぶ
- 必要以上に大きな小間を申し込まない
- 繰り返し使える什器や展示物を活用する
- 購入とレンタルを比較する
- 自治体等の補助制度を確認する
- 出展後に売上・案件・リード単価を検証する
展示会にかかる費用の相場については、「展示会出展費用の相場と予算の立て方」もご覧ください。
補助制度は募集時期や対象経費が変わるため、「展示会出展に活用できる補助金・助成金」と、各制度の公式情報をあわせて確認してください。
展示会費用の勘定科目に関するよくある質問
展示会出展料は広告宣伝費でよいですか?
商品・サービスの認知向上や販売促進を目的とする出展であれば、広告宣伝費として処理するのが一般的です。会社独自の「展示会費」を設け、補助科目で管理する方法もあります。
展示会費という勘定科目を新しく作ってもよいですか?
社内管理用の勘定科目として設けることは可能です。ただし、決算や税務申告における表示方法を含め、顧問税理士や経理担当者と処理方針を統一してください。
展示会用に購入したモニターは消耗品費ですか?
取得価額、使用可能期間、会社の規模、適用する制度によって異なります。取得価額が10万円未満なら費用処理できる場合がありますが、それ以上の場合は一括償却資産、少額減価償却資産の特例、通常の固定資産処理などを検討します。
展示会で配ったノベルティは交際費ですか?
不特定多数の来場者へ宣伝目的で配布する通常のノベルティは、一般的には広告宣伝費です。特定の取引先への高額な贈答品などは、交際費となる可能性があります。
まとめ
展示会費用の勘定科目は、支出の名称ではなく、その目的と内容に基づいて判断します。
- 出展料・装飾・販促物:広告宣伝費または展示会費
- 交通費・宿泊費:旅費交通費
- 外部スタッフ:外注費または業務委託費
- 短期間で使う小物:消耗品費
- 長期間使用する高額什器:工具器具備品
- 接待・特定先への贈答:交際費
仕訳方法や少額減価償却資産の特例は、会社の状況や取得時期によって変わります。最終的な処理は、顧問税理士等へ確認してください。
参考にした公的情報

展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした著書5冊を含む合計7冊を執筆し、すべてAmazon部門1位を獲得している。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。
