AI検索が普及すればするほど、展示会の価値は高まる。
2026年10月18日付の日本経済新聞に、興味深い記事が掲載されました。
「AI検索普及、ゼロクリック率68%に上昇 揺らぐサイト集客」
記事によると、検索結果から外部サイトに移動せず、その場で情報収集を終える「ゼロクリック」の割合が、2025年9月の63.5%から2026年7月には68.1%へ上昇したそうです。
背景にあるのは、AIによる要約・概要表示の普及です。
以前なら、Googleなどで検索した後、いくつものWebサイトを訪問して情報を集めていました。
ところが今は、検索結果の画面にAIが答えをまとめて表示してくれます。
わざわざ個別のWebサイトを訪問しなくても、知りたいことがわかってしまうのです。
これは、企業のマーケティング活動にとって大きな変化です。
しかし僕は、このニュースを見て、改めて確信しました。
だからこそ、これからは展示会が重要になるのです。
AI検索でわかることは、どの会社も似てくる
たとえば、ある製造業の担当者が、新しい部品の仕入れ先を探しているとしましょう。
以前なら、検索結果に表示された複数のメーカーのWebサイトを訪問し、製品の特徴やスペックを比較していました。
ところが、AI検索を使えばどうでしょう。
「耐久性に優れ、コストパフォーマンスの高い部品メーカーを教えて」
と質問するだけで、AIが候補となるメーカーや特徴を整理してくれます。
とても便利ですね。
しかし、ここに重要な問題があります。
AIが整理してくれる情報は、基本的にデジタル上で入手できる情報です。
製品のスペック、価格、用途、導入事例などは比較できても、実物に触れた感覚や、担当者と話して初めてわかることまでは、十分に伝わりません。
そして、各社が似たような情報をWebサイトで発信していれば、AIによる比較結果も似通ってきます。
つまり、AIで比較しやすくなるほど、デジタル上の情報だけでは差別化しにくくなるということです。
展示会には、AI検索では得られない情報がある
では、展示会では何ができるのでしょうか。
実際の製品を手に取り、質感や重さを確かめる。
開発担当者に「なぜ、この構造にしたのですか?」と質問する。
自社の課題を相談し、その場で具体的な提案を受ける。
ときには、出展企業との何気ない会話から、自分でも気づいていなかった課題が見えてくることもあります。
これらは、Webサイトに掲載された情報を読むだけでは得られない体験です。
弊社が2026年に実施した「BtoB展示会白書」の調査でも、興味深い結果が出ています。
来場者1,089名への調査では、AI時代に対面展示会の重要性が「高まる」「やや高まる」と考える人が67.9%にのぼりました。

さらに、展示会で期待以上だったこととして挙げられたのは、次のような項目です。

開発者と直接対話できた:49.1%
他社では聞けない事例を知れた:42.2%
自社の課題に合った提案を受けられた:34.3%
製品やサービスを実際に体験できた:30.9%
ここで注目したいのは、来場者が高く評価しているのは、単なる製品説明ではないということです。
開発者との対話、他社では聞けない事例、自社に合った提案、実体験。
いずれも、その場に足を運ぶからこそ得られる価値なのです。
※AIでは得られない価値の一つが、現場でしか手に入らない一次情報です。なぜAI時代に一次情報の重要性が高まるのかについては、AI時代の一次情報と展示会の価値でも解説しています。
展示会でWebサイトと同じ説明をしていてはもったいない
一方で、出展企業にとっては厳しい現実もあります。
同じ調査で、来場者が展示会で不満に感じたことを尋ねたところ、「Webサイトと同じ情報しか得られなかった」が35.1%ありました。

これは見逃せない数字です。
せっかく時間と交通費をかけて展示会に来たのに、ブースで聞けたのがWebサイトに書いてあることだけだった。
それでは、来場者ががっかりするのも無理はありません。
ましてや、AI検索によって事前の情報収集がますます便利になる時代です。
製品のスペックを説明するだけ。
会社案内のパンフレットを渡すだけ。
カタログに書いてある特徴を読み上げるだけ。
こうした展示会出展では、これからますます成果を出しにくくなるでしょう。
では、どうすればいいのでしょうか。
答えはシンプルです。
「Webで伝えられること」ではなく、「展示会だからこそ伝えられること」を中心にブースを設計するのです。
たとえば、製品の性能を説明する代わりに、その性能を実感できる体験を用意する。
一般的な導入事例を紹介する代わりに、顧客が実際に直面した課題や解決までの試行錯誤を語る。
一方的に製品を売り込む代わりに、来場者の悩みを聞き、その場で解決の方向性を一緒に考える。
こうした工夫が、これまで以上に重要になってくるのです。
AIと展示会は、対立するものではない
ここで誤解してほしくないのは、AI検索が悪いという話ではないことです。
むしろ、AIは積極的に活用すべきです。
来場者はAIを使って事前に情報を集め、候補となる企業を絞り込みます。
そして展示会で実物を確かめ、担当者と対話し、自社に合うかどうかを判断する。
展示会で興味を持った企業について、帰社後にAIやWebで追加調査することもあるでしょう。
実際、僕たちの調査でも、展示会来場者の76.7%が、来場後に気になった企業や製品について追加調査を行うと回答しています。
つまり、AI検索と展示会は競合するものではなく、互いを補完する関係なのです。
これからの企業に必要なのは、AI検索で見つけてもらうための情報発信と、展示会でしか得られない体験の両方を磨くことです。
AIが進化するほど、人に会う価値が高まる
今回のゼロクリック率68.1%というニュースは、単にWebサイトへのアクセスが減るという話ではありません。
人々の情報収集の方法そのものが変わり始めていることを示しています。
だからこそ、展示会に出展する企業も変わらなければなりません。
AIで調べればわかる情報を、わざわざ展示会場で説明する必要はありません。
その代わり、AIでは得られない発見、納得、驚き、信頼を提供する。
それが、これからの展示会営業の勝ち筋だと僕は考えています。
AIでできることはAIに任せる。だからこそ、人に会いに行く。
AI検索が普及する今こそ、展示会というリアルな出会いの場を、最大限に活用していきたいですね。
参考:日本経済新聞「AI検索普及、ゼロクリック率68%に上昇 揺らぐサイト集客」(2026年10月18日)
調査データ:株式会社展示会営業マーケティング「展示会白書2026」
https://tenjikaieigyo.com/whitepaper/

展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした著書5冊を含む合計7冊を執筆し、すべてAmazon部門1位を獲得している。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。
