ゴールデンウィーク中、こんなニュースが目に留まりました。
ドミノピザが店内で「親子で学ぶピザづくり体験」を開催し、大好評だったというのです。
物価高の影響もあり、ゴールデンウィークを遠出せず、近場で過ごしたいというニーズが高まっています。
そうした中で、親子でピザづくりを体験できる企画が支持されたということです。
ぼくはこのニュースを見て、「これは中小企業にも使える」と感じました。
- 単に商品を売るのではなく、体験してもらう。
- 単に説明するのではなく、五感で感じてもらう。
- 単に知ってもらうのではなく、記憶に残してもらう。
これは、これからの中小企業にとってとても大切な視点です。
展示会の「体験」を、会議室に持ち込む
展示会に出展すると、多くの企業はタペストリーや展示台、パネル、展示物、動画などを用意します。
しかし、会期が終わると、それらを倉庫にしまって終わりになっていることが少なくありません。
これらは展示会期間中しか使われず、終わると倉庫に眠ってしまうケースがほとんどです。
もったいないと思いませんか?
ドミノピザが店舗という「すでにある場所」を活用して体験イベントを生み出したように、
あなたの会社にも「すでにある場所」があります。そう、それは、会議室です。
考えてみてください。
- 展示会のブースで使ったタペストリを会議室の壁に貼る。
- 展示台を設置する。
- 実際の商品やサンプルを並べる。
- 展示会で流した動画をモニターで流す。
- 来場者に見せていた資料やパネルも置いておく。
これだけで、普通の会議室が「ミニ展示ブース」に変わります。
来客があったときに、その空間へ案内します。
そして、商品を手に取ってもらい、触ってもらいながらプレゼンをするのです。
これは、通常の会議室で資料を見せながら説明するのとは、まったく違う印象を与えます。
展示会の「熱量」を、日常のビジネスシーンに持ち込む。これが、ぼくが今回お伝えしたいことの核心です。
AI時代だからこそ、「五感」が武器になる
ここで少し立ち止まって考えてみましょう。
生成AIの進化によって、商品情報や業界情報は、以前よりも簡単に手に入るようになりました。
- スペック比較もできます。
- 価格比較もできます。
- 導入事例も調べられます。
- 競合商品との違いも、ある程度はAIに聞けば整理できます。
つまり、情報そのものの価値は、相対的に下がってきているのです。
もちろん、情報が不要になるわけではありません。
しかし、「詳しく説明します」というだけでは、以前ほど強い差別化にはなりにくくなっています。
ところで、AIが最も得意とする感覚はなんでしょうか。
それは、視覚と聴覚です。
画像生成、動画生成、音声合成——これらの領域でAIの進化は目覚ましい。
裏を返せば、触覚・嗅覚・味覚の領域は、まだまだ人間にしか届けられない体験だと言えます。
ドミノピザが「ピザづくり体験」にこだわったのも、実はここに理由があると感じます。
- ピザ生地を伸ばす感触
- 焼き上がりのにおい
- できたての味。
これらはどれだけAIが進化しても、画面越しには届けられません。
だからこそ、リアルな場ではそこを活かすべきなのです。
たとえば、
- 素材の手触りを感じてもらう。
- 重さを実感してもらう。
- 動かしたときの感触を体験してもらう。
- 食品なら香りや味を感じてもらう。
- 機械なら音や振動の違いを感じてもらう。
- 建材なら質感や温度感を手で確かめてもらう。
こうした体験は、言葉で説明するよりもずっと強く伝わります。
会議室ミニブースを作るとき、ぜひ意識してほしいのが五感の設計です。
- 触覚:製品サンプルは必ず手に取れるよう配置する。可能なら実際に操作してもらう
- 嗅覚:素材や製造工程に独自のにおいがあれば、それも体験の一部にする
- 味覚:食品・飲料関連であれば試食・試飲を。そうでなくても、お茶一杯の演出が場の空気を変える
- 聴覚:製品の動作音、スタッフの肉声による説明——AIの合成音声ではなく、生の声で語りかける
- 視覚:タペストリや展示物の配置で「ここは特別な場所だ」と感じさせる演出を
こうした五感への働きかけこそが、画面完結の世界では絶対できないリアルの強みなのです。
まさに「体験アトラクション」です
もうお気づきですね。これらは、ぼくが常々提唱している展示ブースでの体験アトラクションです。
※体験アトラクションについては、展示ブースでの体験づくりのコツもご覧ください。
ただ商品を置くだけでは、人は立ち止まりません。
ただ説明するだけでは、記憶に残りません。
ただパンフレットを渡すだけでは、次の商談につながりにくいのです。
大切なのは、来場者が思わず参加したくなる仕掛けです。
- 触ってみたい。
- 試してみたい。
- 比べてみたい。
- 動かしてみたい。
- 誰かに話したくなる。
そう感じてもらえる体験を設計することが重要です。
「うちの商材は、ITツールだから、画面でしか見れないし、触ったりできない・・・」
と思った方もおられるかもしれません。でも安心してください。
そういう場合は、商材の関連した豆知識やトリビアをクイズ形式でお伝えすればよいのです。
クイズにもコツがあります。下の写真をご覧ください。

バナナの葉っぱの実物展示の下に、三択クイズがラミネートされています。
そして、右下には「正解は裏へ」の文字が。
裏返すと、解説とともに正解が現れます。
どうでしょうか?このようにされると、思わずクイズに回答したくなりませんか?
このように、「裏返す」という触覚を伴う体験を提供することで、
膨大な情報が氾濫する中でもあなたの会社や商材を記憶に残してもうらうことができるのです。
※このクイズは、渋谷ふれあい植物センターにあったものです。渋谷ふれあい植物センターさん、ありがとうございます※
「スペック」ではなく「想い」で選ばれる時代
もう一つ、ドミノピザのニュースから感じたことがあります。
このイベントが好評だった理由は、単に「近場で安く楽しめる」からだけではないはずです。ブランドへの親しみ、スタッフとの交流、共同作業の喜び——そうした感情的な体験が人々の心を動かしたのだと思うのです。
これはBtoBビジネスでも、まったく変わりません。
今の時代、製品のスペックはウェブで簡単に調べられます。価格比較もAIがやってくれる。そんな環境で「なぜあなたの会社を選ぶのか」を問われたとき、スペックだけでは答えが出ません。
選ばれる理由は、想いと志です。
- なぜこの製品を作ったのか
- どんな課題を解決したかったのか
- この仕事を通じて、世の中をどうよくしたいのか
展示会もそれをそのまま流用した会議室ミニブースも、こうした「想い」を語る絶好の場所です。
ぼくが支援してきた1,300社以上の企業の中でも、スペックより「この会社の人と仕事をしたい」という理由で受注につながったケースは数え切れません。
会議室を「展示ブース」にすることは、そういう想いを語る舞台を日常につくることでもあるんです。
地域に開放するという発想
さらに一歩進めた活用法もあります。
ドミノピザが「親子向け」としたように、あなたの会議室ミニブースを地域の方々に開放するという発想です。
「えっ、BtoB企業が地域住民を呼ぶの?」
と思った方、少し待ってください。
採用ブランディングの観点で考えてみてください。地元の学生やその保護者が「あの会社、こんな面白いことをやってるんだ」と知るだけで、採用への関心は大きく変わります。
また、地域の方々が「あの製品、実はあそこで作られてるんだよ」と口コミしてくれることは、どんな広告よりも信頼性の高い情報発信です。
BtoBだから一般向けに開放しなくていい——そんな固定観念は、捨てていいと思います。
展示会は「非日常」ではなく「日常」へ
ドミノピザのニュースが教えてくれたことを、展示会の文脈でまとめると、こうなります。
- すでにある資産(ブース資材)を日常で活用する
- 会議室をミニ展示ブースとして再現する
- AI時代だからこそ、五感——特に触覚・嗅覚・味覚——を使った体験設計をする
- スペックではなく「想い」と「志」を語る場にする
- 地域への開放も視野に入れ、採用・ブランディングに活かす
展示会を年に数回の「非日常イベント」としてだけとらえるのはもったいない。展示会で磨いた伝え方、体験設計、ブースの世界観——これらを日常のビジネスシーンに持ち込むことで、展示会の投資対効果は飛躍的に高まります。
ゴールデンウィーク明け、倉庫で眠っているブース資材を引っ張り出してみてください。
あなたの会議室が、最強の営業ツールに変わるかもしれません。心から応援しています!
このセミナーに参加すると、展示会で成果を出すコツがわかります。

展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした書籍を5冊執筆している展示会の専門家。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。

