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ノジマが日立の白物家電を買収。この大型M&Aが教えてくれる「展示会の本質」

ノジマが日立の白物家電事業を1,101億円で買収する・・・

2026年4月21日、このニュースが飛び込んできたとき、ぼくがまず思ったのは、「なるほど。そう来たか!」です。そして次の瞬間、「これ、展示会と同じ話だな」と感じました。

大企業のM&Aニュースを「展示会と同じ話だ」と読む人間はそういないかもしれません。でも読んでいくと、ぼくにはどうしてもそう見えてしまいます。今回はそれをきちんと言語化しておきたいと思います。


「製販一体」という強さ。展示会も本来そういう場です

今回の買収のキモは、「製販一体」にあります。

ノジマはメーカー機能を取り込み、製販一体で商品開発力を高めた新しいビジネスモデル構築に挑みます。つまり、開発→製造→販売→アフターサービスまでを、一社でぐるりと一気通貫で回せる体制を目指しているわけです。

これは非常に強い。なぜでしょうか?

顧客の声が、ダイレクトに開発に届くからです。

従来の家電メーカーと量販店の関係は、常に「間」がありました。メーカーが製品を作り、量販店が売る。顧客の反応は量販店に集まるが、その声がメーカーに届くまでには時間がかかり、ノイズも乗ります。「売れてる」「売れてない」という結果は届いても、「なぜ」が届きにくい。

そして・・・展示会という場には本来、この「間」がありません。

メーカー(出展社)が直接、顧客(来場者)の前に立ちます。

「うちの現場ではこういう課題があって」「これ、いいですね」「ここが使いにくそうで……」という生の声が、その場でダイレクトに入ってきます。開発担当者がブースに立てば、通常のアンケートでは絶対に拾えないリアクションが取れます。表情が変わる瞬間、手が止まる場所、思わず口をついて出る「でもこれって……」という本音。

展示会は、本質的に製販一体の場なのです。そこを理解せず、「営業が売ってくればいい」という意識でブースを設計しているうちは、展示会の本当の価値を活かしきれていないということです。


ノジマは「メーカーの販売員を置かない」。その意味を深く考えてみてください

今回のニュースを読んで、もうひとつぼくが注目したのはノジマの販売モデルです。

ノジマはメーカーからの派遣販売員を置かず、すべて自社スタッフが中立な立場で顧客に最適な製品を提案しているとのこと。

これはヤマダ電機やビックカメラと大きく異なる点です。他の大手量販では、各メーカーから「販売応援」として自社製品を売り込む担当者が店頭に立ちます。メーカーに売ってもらうビジネスモデルです。

ノジマはそれをやりません。なぜか。

それをやると、顧客の声がメーカーごとのフィルターを通ってしまうからです。メーカー派遣の販売員は、当然自社製品を売ろうとします。顧客のニーズではなく、自社製品の特長を語る方向に自然と引っ張られます。その結果、量販店としての「顧客の声を吸い上げる機能」が弱まります。

ノジマが自社スタッフにこだわるのは、純粋に「顧客が何を求めているか」を正確に把握したいからでしょうね。

これを展示会に置き換えると、どうなるでしょうか?

展示ブースに「外注の説明員」や「コンパニオン」だけを派遣している企業は、ノジマとは真逆のことをやっています。説明員の仕事は商品を説明することです。顧客の声を深く引き出すことではありません。「どういう課題があって今日来たんですか」「現場では今、何に困ってますか」を掘り下げる訓練を受けていない人をブースに立てると、展示会が「説明会」で終わります。

展示会ブースに立つべき人間は、顧客の声を正確に受け取れる人間です。理想は、開発担当者や上流工程にいる人もブースに立つことです。「そのニーズ、うちで解決できます」だけでなく、「それ、まだ製品化できてないんですが……実は社内で議論になってて」というリアルな会話が生まれる展示ブースは強いです。


日立にとって白物家電は「売上の2%」だった。絞り込みの論理

日立は近年、鉄道やエネルギー関連といった安定的に収益を得られる事業に注力する戦略を進め、デジタル技術の活用も重視しています。事業再編の一環で、売りきりのビジネスが中心の白物家電事業は売却を検討していました。

具体的な数字でいうと、日立の全売上高に占める白物家電の比率は約2%。1兆円を超える売上を誇るグループの中で、2%の事業に経営資源を割き続けることに、日立は限界を感じていたわけです。

「捨てる」という決断は、経営の本質です。何でもやろうとする企業は、何も強くなれません。

ぼくは展示会でも全く同じことを言い続けています。

出展企業の多くは、展示会のブースに「あれも、これも」と詰め込みすぎます。製品ラインナップを全部並べ、少しでも多くの来場者に全方位的に対応しようとします。その結果、誰にも刺さらないブースになります。

展示会の成果を最大化するには、「誰に」「何を」「どのように」届けるブースなのかを「一つだけ」決めることです。

ぼくが提唱している「1ブース=1アイテム=1ターゲット」の原則はここから来ています。日立が「白物家電は2%だ、手放そう」と決断したように、出展企業も「今回の展示会でいちばん伝えたいことは何か」を一つに絞る覚悟が要ります。

全部を見せたい気持ちはわかります。でも、全部を見せると何も残りません。

※ワンブース=ワンアイテム=ワンターゲット」についてさらに理解を深めたい方は、コラム:新規開拓営業の切り札もご覧ください。


「売りきり」ビジネスの限界。展示会も同じ罠があります

今回の売却の背景として、もう一つ見落とせない論点があります。

「売りきりのビジネスが中心の白物家電事業は売却を検討していた」という部分です。

日立が目指しているのは、ITやエネルギー、デジタルなど、継続的に収益が入るサブスクリプション型・サービス型のビジネスです。一方の白物家電は、モノを売ったら終わり。次の購買まで数年〜十数年かかります。顧客との関係が「点」で終わってしまいます。

これ、展示会にも全く同じ罠があります。

特に、マーケティぬg部門が主体で展示会に取り組んでいる企業は、展示会に出て名刺をもらって、「あとは営業に渡した」で終わらせている企業がとても多いです。展示会で接触した見込み客との関係を、その後どう育てていくか——いわゆる「ナーチャリング」の設計がない。

展示会は「点」の接触でしかありません。その点を「線」につなげる仕組みを持っているかどうかで、展示会投資の回収率は大きく変わります。

具体的には、展示会後のお役立ち情報メール、お役立ち資料のダウンロード、セミナーや工場見学への誘導、定期的な情報提供……この一連の関係継続の設計が、展示会営業®では決定的に重要です。

日立が「売りきり」から「継続収益」へ転換しようとしたように、展示会も「一回の名刺交換」から「継続的な関係構築」へと発想を転換しなければなりません。


ノジマはなぜVAIOに続いて日立GLSなのか。「川上統合」の必然

ノジマは2025年1月にVAIOの買収を完了させ、今回の日立GLS買収により、家電を「売るだけ」の立場から「作って・売る」垂直統合型のビジネスモデルへの転換を図っています。

この流れを見ると、ノジマの戦略は非常に明確です。川下(販売)から川上(開発・製造)へと遡っています。

なぜ川上に行くのか。

川下だけにいると、差別化できないからです。同じメーカーの同じ製品を複数の量販店が売っていれば、結局は価格競争になります。「どこで買っても同じ」なら、安い店が勝ちます。その消耗戦から抜け出すには、「他では買えないもの」を持つしかありません。

展示会に出る企業も、同じ問いに直面しています。

「うちの製品は他社と何が違うのか」が明確でない企業は、展示会でも埋没します。他社と似たような製品を、似たようなブースで展示していれば、来場者の記憶に残りません。展示会という場は、差別化できているのか、できていないのかが可視化される場です。「なぜうちなのか」を一瞬で伝えられないブースは、来場者が素通りしていきます。

ノジマが「開発・製造まで一体化する」ことで差別化を図ったように、展示会に出る企業も「なぜ私たちでなければならないのか」という大本の部分の設計の起点に置かなければなりません。


「日立ブランドは5年間維持」。展示会にも”看板の力”があります

今回の買収では、日立GLSが「日立ブランドの5年間維持」を求めていたとされています。日立ブランドの家電は長年にわたって日本の消費者から高い信頼を得てきました。

日立というブランドには、積み重ねられた信頼があります。それは一朝一夕では作れないものです。

展示会にも同じことがいえます。

毎年出展し続けている企業は、来場者の記憶に「いつもいる」として刻まれます。「あそこは毎年出てるな」「業界の中でちゃんと存在感がある」という認知は、一回の出展では作れません。継続的な出展が「業界における信頼感」を育てます。

逆に、景気が悪くなると真っ先に展示会予算を削る企業があります。でも、展示会を止めた年に競合が出ていれば、比較の中でその企業は「消えた」と認識されることがあります。「ブランドの維持」という観点から見ると、展示会への継続出展は広告費ではなく、ブランド投資として考えるべきです。


大企業のM&Aが教えてくれる、展示会の本質

今回のノジマ×日立のM&Aを整理すると、展示会営業と重なる論点がこれだけ出てきます。

  • 製販一体の強さ:顧客の声を開発に届ける最短経路。展示会はその最短経路そのものです。
  • 中立な顧客接点:自社商品優先の売り込みではなく、顧客の声を素直に受け取れる人をブースに立てること。
  • 絞り込みの論理:2%の事業を手放した日立のように、展示会でも「一つに絞る」覚悟が成果を生みます。
  • 売りきりからの脱却:展示会後の関係継続が、投資対効果を決めます。
  • 差別化の必然:「なぜうちなのか」が展示会設計の起点です。
  • ブランドの継続投資:毎年出展することが、業界における信頼感を育てます。

1,101億円のM&Aと、数百万円の展示会出展は、スケールは全く違います。でも、そこに流れている経営の論理は同じです。

展示会に出るなら、単に「売りに行く場所」だと思って欲しくありません。顧客の声を聞き、自分たちの差別的優位性を検証し、業界内でのポジションを育てる「戦略的な接点」として位置づけてほしいと思います。

ノジマが1,101億円かけてやろうとしていることを、展示会という場でより小さなコストで試せる——そのことを、今日のニュースはぼくに改めて気づかせてくれました。あなたの展示会出展の成功を心から応援しています!

 

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