こんにちは!
展示会営業(R)コンサルタントの清永健一です。
先日、テレビで佐々木朗希投手の特集番組を見ました。
ぼくはプロ野球にそれほど詳しいわけではありませんが、この番組は非常に興味深かったです。
というのも、佐々木投手の苦戦と復活のプロセスに、中小企業が展示会で成果を出す大きなヒントが隠されていたからです。
160キロの速球と、同じフォームから鋭く落ちるスプリット。
この2つだけで日本の打者を圧倒していた投手が、米国ではなぜか打ち込まれてしまいます。
番組によると、メジャー挑戦にあたって「横の変化球も必要だ」と考え、
カットボールやスライダー系の習得に励んできたそうです。
しかし、その変化球を投げるフォームが体に合わず、肩甲骨の動きが悪くなったとのこと。
結果として球速が落ち、自慢のスプリットのキレまで失われてしまったのです。
「強みを増やそうとしたら、最大の強みが消えた」
これは決して他人事ではありません。展示会の現場でも、まったく同じ現象が起きているからです。
「あれもこれも」が、ブースを殺す
ぼくはこれまで1,300社以上の展示会出展をサポートしてきました。 その経験から言えるのは、ブースの失敗パターンには大きく2つの種類があるということです。
ひとつは「準備不足」。これは原因が明確でわかりやすいものです。
そしてもうひとつが、厄介な「足し算のしすぎ」にあります。
実は、こちらのパターンのほうが根が深いと感じています。 なぜなら、足し算をしすぎた出展者は「自分たちは一生懸命やった」という自負があるからです。準備不足と違って自覚がなく、むしろ「あんなに頑張ったのになぜ成果が出ないのか」という後悔だけが残ってしまいます。
よくあるのは、このようなケースです。 主力製品Aの展示を予定していたのに、直前になって「せっかくだからBも持っていこう」と欲が出てしまう。さらに「昨年好評だったCのパンフレットも」「会社の認知度を上げたいからコーポレートパネルも」と追加が重なります。 その結果、ブースはいつの間にか「何がいいたいのかよくわからない空間」と化してしまうのです。
これでは、訪問者から見て「結局、何屋さんなのか?」という疑問しか残りません。
人は「一瞬」でしか判断しない
展示会場を歩いている来場者の姿を、想像してみてください。 大規模な展示会ともなれば、ブース数は数百から数千に及びます。来場者は通路を歩きながら流し見しています。
1つのブースに目が止まる時間は、体感でわずか3秒ほどでしょう。
つまり、たった3秒で伝わるものしか、相手には届かないのです。
「うちはAという課題を持つBという業種の人に、Cというソリューションを提供しています」
このような複雑なメッセージは、短時間では絶対に伝わりません。
それなのに、多くのブースが情報を詰め込み、製品を並べ、モニターで会社紹介を流すといった
「足し算」を繰り返してしまっています。
佐々木投手に例えるなら、「速球もスプリットもカットボールもスライダーも全部投げよう」としているような状態です。 これでは打者は、むしろ「とりあえず様子を見よう」と楽に構えられてしまいます。
展示会でも同様に、情報が多すぎると来場者は「とりあえず通り過ぎよう」という選択をしてしまうのです。
ワンブース=ワンアイテム=ワンターゲット
ぼくが中小企業の出展において常に伝えているのが、この原則です。
1つのブースで伝えるのは、1つの商材
届けたい相手は、1つのターゲット像
「複数の商品があるし、ターゲットも広げたい」というお気持ちはよくわかります。せっかくの出展ですから、少しでも多く間口を広げたくなるのは当然でしょう。 しかし、これこそが陥りやすい罠なのです。
中小企業のブースは、たいてい1小間(3m)か2小間(6m)という限られたスペースです。そこに情報を詰め込もうとすれば、すべてのインパクトが薄まってしまいます。 それは、160キロの速球が140キロになってしまうようなもの。誰にでも打つことができるありふれた棒球ボールになってしまうのです。
「引き算」こそが、最大の差別化
逆説的ですが、展示会で強いブースは「何を置かないか」を明確に決めています。 ぼくがご支援した中で印象的だった、ある製造業の中小企業の事例をご紹介します。
その会社はもともと5〜6種類の製品を扱っており、毎年すべてを並べていました。立ち寄る人はそこそこいても、名刺交換や商談にはつながりません。 ある年、思い切って製品を1つに絞り、ターゲットも「食品工場の設備担当者」に限定しました。ブースキャッチコピーには、その製品が解決する課題を大きく1行だけ掲げたのです。
結果として、名刺交換の総数は減りました。しかし、有効名刺数はむしろ増え、商談化率が劇的に向上したのです。
まさに「欲しい人だけが来る」ブースへと生まれ変わったのです。これこそが引き算の力です。
新しい強みより、今の強みを磨く
佐々木投手の話に戻りましょう。 横の変化球を練習したこと自体は、決して間違いではないはずです。長いキャリアを見据えれば、球種の幅が必要な場面もあるでしょう。 ただ、重要なのはタイミングと優先順位だったのではないでしょうか。
まずは、最大の武器である「160キロの速球とスプリット」が万全の状態で通用するかを確かめる。展示会もこれと同じです。
「足りないものは何か」を考える前に、まずは「今の一番の強みは何か」を問い直してみてください。 その強みは、展示会で出会いたい人に届く形で表現されているでしょうか。 ブースの中で最大限に輝いているでしょうか。
足りないものを足す前に、今あるものを研ぎ澄ます。 これこそが、中小企業が展示会で結果を出すための、最も確実な道であると確信しています。
展示会で勝つ武器
佐々木投手の現状が示しているのは、「強みを活かす環境を守ること」の大切さです。 新しい要素を加えようとする際、それが既存の強みを壊してしまうリスクを忘れてはいけません。
展示会ブースも、あれもこれもと欲張れば、全体の訴求力は確実に落ちてしまいます。
「ワンブース、ワンアイテム、ワンターゲット」
このシンプルな原則こそが、中小企業が大手と渡り合うための戦略の根幹です。
足し算ではなく、引き算。 それこそが、展示会で勝ち抜くための「最強の武器」になるはずです。
※ワンブース=ワンアイテム=ワンターゲット」についてさらに理解を深めたい方は、コラム:新規開拓営業の切り札もご覧ください。
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展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした書籍を5冊執筆している展示会の専門家。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。

