展示会の声かけ・呼び込みのコツ|来場者を惹きつけるトークとNG例
展示会での声かけは、ブースへの集客率を大きく左右します。 適切な声かけは、来場者の興味を引き、商談や契約につながる可能性を高めます。 一方で、声をかけるタイミングや立ち位置を間違えると、来場者に「売り込まれそう」「時間を取られそう」と警戒され、逆にブースから遠ざけてしまいます。
株式会社展示会営業マーケティング代表の清永健一は、これまで1,300社超の企業を支援し、 ほぼ毎週展示会会場を訪れながら、来場者がどこで足を止め、どの瞬間に会話が始まるのかを観察してきました。
清永健一の結論
展示会の声かけは「たくさんの人に大声で呼び込むこと」ではありません。 来場者が展示物に興味を示した瞬間を見極め、斜め後ろから自然に会話を始めることが基本です。
本記事では、もともとこのページで解説していた 役割分担、トークスクリプト、来場者別の声かけ、練習、メリットの伝え方、POP活用、NGな声かけ、ノベルティ、ブースレイアウト、動的待機、笑顔や雰囲気づくり を残したうえで、展示会白書の独自調査と、清永式の現場判断を加えて解説します。
展示会での声かけのコツ
展示会でスタッフの声かけを工夫すると、来場者からの認知やブースへの立ち寄りを増やせます。 ただし、重要なのは声をかける「回数」だけではありません。 誰に、どのタイミングで、どの距離から、何と声をかけるかが重要です。
役割分担をする
展示会で効果的な声かけを行うには、スタッフの役割分担と連携が重要です。 スタッフが自分の役割を理解して臨むことで、それぞれの仕事に集中できます。
展示会のスタッフの役割には、以下のようなものがあります。
- 呼び込み担当:ブース前で来場者の反応を観察し、興味を持った人へ声をかける
- ヒアリング担当:来場者のニーズや課題を詳しく聞き取る
- プレゼン担当:製品やサービスの詳細説明、実演を行う
- 責任者・専門担当:重要顧客や高度な質問へ対応する
自分の役割を絞ることで、声かけ担当のスタッフは経験を積みやすくなります。 さらに、ヒアリングや説明の担当者も自分の仕事に集中できるため、ブース全体として接客の質を高められます。
ただし、呼び込み担当の仕事は「通路を歩く全員に声をかけること」ではありません。 来場者の目線、歩く速度、足の向きを観察し、興味を示した人を見逃さないことが役割です。
トークスクリプトを作る
効果的な声かけを行うには、来場者の状態に応じたトークスクリプトが重要です。 トークスクリプトとは、接客時の基本的な会話の流れを整理したものです。
来場者の心理状態はさまざまです。 同じ言葉を全員へ投げるのではなく、相手の状態に合わせます。 このページでは従来から、来場者を大きく次の3タイプに分けて解説してきました。
- 足を止めている来場者
- 急いでいそうな来場者
- 複数人で来ている来場者
特に重要なのは、足を止めている来場者の足の向きと目線です。 自社ブースへ足や目線が向いているなら、すでに何らかの興味が生まれている可能性があります。 その瞬間に声をかけます。
足を止めている来場者
足を止めている来場者に対しては、足の向きと目線を注意深く観察します。
- 足が自社ブースに向いている:立ち寄る気持ちがある可能性が高い
- 足が自社ブースに向いていない:まだ立ち寄る意思が弱い可能性がある
- 目線が展示物を見ている:何らかの興味がある
- 目線がブースを見ていない:無理に声をかけない方がよい場合がある
ブースに興味を持っていそうな来場者には、次の流れでアプローチします。
- 何に興味があるのかを聞く
- 興味のある展示品やサービスについて簡潔に説明する
- メリットや特徴を短く伝える
- 来場者の課題や来場目的をヒアリングする
- 深い興味が確認できたら説明担当へ引き継ぐ
ここで大事なのは、いきなり説明を始めないことです。 まず相手が何を見ていたのか、なぜ足を止めたのかを確認します。
清永式「ちなみに」トーク
「ちなみに、今これを見ていただいていましたが、何か気になるところがありましたか?」のように、 来場者の行動を起点に質問すると、売り込み感を減らしながら自然に会話を始めやすくなります。
急いでいそうな来場者
急いでいそうな来場者には、長い説明を始めません。 短時間で何が分かるのか、どんな価値があるのかを簡潔に伝えます。
たとえば、次のような声かけです。
- 「2分だけでご覧いただけます」
- 「資料だけでもどうぞ」
- 「〇〇でお困りの方向けの展示です」
ただし、「3分で説明します」と時間だけを訴求するより、 誰向けの何の展示なのかを一緒に伝えた方が、自分ごと化されやすくなります。
立ち止まってくれた場合は、プレゼン担当へ「お急ぎです」と伝え、説明時間を短く調整します。
複数人で来ている来場者
複数人で来ている来場者に対しては、次のようなアプローチが考えられます。
- これまでに見てきた展示や探しているテーマを聞く
- 短時間で特定の課題を解決できる展示であることを伝える
- グループ全体ではなく、反応した一人へまず声をかける
ポイントは、集団全体に向かって漠然と話しかけないことです。 一人が興味を持つと、その周囲の人も会話に入ってきやすくなります。
声かけの練習を行う
声かけの質を上げるには、事前の練習が欠かせません。 展示会当日を想定して、スタッフ同士で声をかける練習を行います。
- 声かけの内容を理解して自然に話せるようにする
- 実際に声に出して声量やトーンを確認する
- チームメンバー同士でチェックして改善する
- 無視されたとき、断られたときの対応も練習する
- 興味を示した来場者を説明担当へ引き継ぐ練習をする
展示会当日を想定した練習を行うことで、スタッフの心理的負担を減らし、想定外の場面にも対応しやすくなります。
メリットを感じさせる声かけをする
来場者の興味を引き、ブースへの誘導につなげるには、 単に「見ていってください」と言うのではなく、自分に関係があると感じられる言葉が必要です。
- 来場者が抱える課題に焦点を当てる
- 自社の製品・サービスの強みを簡潔に伝える
- 課題解決後の変化を具体的に伝える
- 事実として示せる実績・事例があれば短く伝える
たとえば、「月間残業時間を20時間削減した事例」が実際にある企業なら、 「業務効率化でお困りですか。月20時間削減した事例をご紹介できます」のように、 事実として裏付けられる数字を使うと興味喚起しやすくなります。
逆に、事実として確認できない数字をその場のキャッチコピーとして使うのは避けるべきです。
POPなどの販促ツールも活用する
展示会の声かけでは、手持ちPOPや案内板などの販促ツールも有効です。
- 会話しながら端的に製品やサービスの特徴を訴求できる
- 声をかける前に視覚的に興味を持ってもらえる
- ヒアリングしながら具体的なメリットを見せられる
たとえば、来場者に対して声をかける前にPOPが目に入れば、 来場者側から「これは何ですか?」と質問が生まれることもあります。
声かけだけに頼るのではなく、来場者が自分から近づく理由をブース側でつくることが重要です。
また、声をかける前段階の立ち方・待ち方も重要です。 詳しくは 展示会スタッフの立ち方・待ち方 をご覧ください。
展示会でのNGな声の掛け方
展示会では、声をかければかけるほど良いわけではありません。 特に避けたいのが、来場者に売り込み感・圧迫感・時間を取られそうな印象を与える接客です。
展示会白書のデータ
来場者1,089名への独自調査では、期待外れだったブースの理由として 「売り込み感が強かった」42.4%が最多でした。 声かけは、来場者の興味を引き出すためのものですが、やり方を間違えると逆効果になります。
ブース前に並んで声かけ
展示会でスタッフがブース前に横一列に並び、通路を歩く人を待ち構える形はおすすめしません。 主な理由は次の3つです。
- 来場者に圧迫感を与える
- 強い売り込み感を与える
- 時間を取られそうに感じさせる
来場者は限られた時間の中で情報収集しています。 ブース前にスタッフが立ちはだかっていると、商品を見る前に避けられてしまいます。
そのため、待ち構えるのではなく、ブース前を空け、 展示物の整理や調整などをしながら来場者の反応を観察します。
清永式の立ち位置
展示台はできるだけ通路際に置き、スタッフはその斜め後ろで待機します。 来場者が展示物を見た瞬間に、真正面から塞ぐのではなく、斜め後ろから自然に声をかけます。
実際に、展示会スタッフの立ち方を「ブース前で直立」から 「ブース前を空け、斜め後ろから声をかける」形へ変えた支援先では、 有効名刺の獲得枚数が3.7倍に増えた事例があります。
ブースに入る理由にならない声かけ
展示会の声かけは、来場者に立ち寄る理由を与えられるかが重要です。 次のような言葉だけでは、ブースへ入る理由になりにくいでしょう。
- 「よければ見ていってください」
- 「よかったら説明させていただきます」
- 「少しお時間ありますか」
これらは「何が得られるか」が分からず、単なる呼びかけになっています。
たとえば、 「〇〇でお困りの方向けです」 「〇〇を実際に比較できます」 「〇〇の違いを30秒で体験できます」 など、ブースへ立ち寄る理由を具体的に伝えます。
展示会の集客効果を高める声かけ以外の方法
展示会の集客効果を高めるには、声かけだけでなく、 ノベルティ、ブースレイアウト、展示・体験、スタッフの待ち方、雰囲気づくりなどを組み合わせる必要があります。
ノベルティを配る
ノベルティは来場者との接点をつくりやすく、ブランド認知にも使えるツールです。 展示会でノベルティを用意する場合は、次の点を意識します。
- 来場者にとって有益か
- 自社のPRにつながるか
- 使用頻度が高いか
- ターゲットと関係があるか
従来このページでは、うちわ、ボールペン、エコバッグなどを例に挙げてきました。 これらも使いやすい一方、単に「配りやすいもの」を選ぶのではなく、 自社が出会いたい相手との会話のきっかけになるかも考えてください。
ノベルティだけを目当てに人が集まりすぎると、ターゲット外リードが増えることもあります。
ブースレイアウトを工夫する
魅力的なブースレイアウトは、来場者の目線を集め、自然な立ち寄りを生みます。
- 視線を集める大型ディスプレイやバナーを設置する
- 製品・サービスの特徴を視覚的に伝える図やイラストを使う
- 来場者が気軽に立ち寄れるオープンスペースを確保する
- 興味を引く体験型展示や実演コーナーを設ける
ただし、単に「目新しい」「面白い」だけでは不十分です。 その仕掛けが、ターゲットの課題や商品理解につながることが重要です。
展示会白書のデータ
来場者が期待以上だったと感じた理由には、 「開発者やエンジニアから直接話を聞けた」49.1%、 「製品・サービスを実際に体験・操作できた」30.9% が挙がっています。
つまり、声かけの前に、 実物 → 体験 → 説明 という順番で来場者が自然に興味を深められるブースをつくることが重要です。
展示会の面白い仕掛けについては 来場者が思わず食いつく展示会の仕掛け でも事例を紹介しています。
動的待機で来場者を迎える
展示会ブースでのスタッフの姿勢は、来場者に与える印象を大きく左右します。 来場者は、売り込みや時間を取られそうなブースに警戒します。
そこで、スタッフ全員で「動的待機」を意識します。
- スタッフが常に適度に動いている状態を保つ
- 展示物の整理や調整をしながら来場者の動きを観察する
- ブース前を塞がない
- 来場者が展示物を見たタイミングで自然に近づく
- 真正面ではなく、斜め後ろから声をかける
動的待機とは、ただ忙しそうに動くことではありません。 来場者にプレッシャーを与えず、声をかけるタイミングを観察できる待ち方です。
笑顔で明るい雰囲気を作る
展示会での集客において、ブースの雰囲気も重要です。 明るく親しみやすい雰囲気は、来場者がブースへ近づく心理的なハードルを下げます。
- スタッフの笑顔や明るい接客態度
- 展示内容や企業イメージに合ったBGM
- 展示を魅力的に見せるライティング
- 清潔感のあるスタッフの服装
- 整理整頓されたブース内
これらは一つひとつは小さなことですが、来場者から見た「入りやすさ」を左右します。 スタッフ全員でチェックリストをつくり、会期前に確認しておくとよいでしょう。
展示会では「呼び込み」より「会話が始まる仕掛け」をつくる
ここまで声かけのテクニックを紹介しましたが、 声かけだけに頼る展示会は、スタッフの力量に成果が左右されやすくなります。
私は、ブースそのものを会話を始める装置にすることが重要だと考えています。
清永健一の判断基準
ブースは商品を説明する場所ではなく、来場者が「自分に関係がある」と感じ、実物を見て、体験し、会話を始めるための装置です。
だからこそ、 「ワンブース・ワンアイテム・ワンターゲット」で主役を絞り、 実物を通路際に置き、 興味を持った来場者へ斜め後ろから声をかける。 この流れをつくると、無理な呼び込みは減らせます。
AI時代だからこそ、声かけは「情報説明」ではなく「意味を聞く」
AIやWebを使えば、商品スペックや一般的な情報は展示会へ来る前に調べられます。 そのため、声をかけた直後からカタログと同じ説明を始めても、来場者の関心は深まりにくくなっています。
声かけの後に聞きたいのは、 「何を知りたいですか」だけではありません。
- 「何か気になりましたか?」
- 「ちなみに、今どんなことでお困りですか?」
- 「今は何と比較されていますか?」
- 「この部分は御社ではどうされていますか?」
こうした質問から、来場者にとっての意味を探ります。 そのうえで、実物、体験、専門家との対話という一次情報を提供します。
まとめ|展示会の声かけは「売り込む技術」ではない
展示会で来場者を惹きつけるには、明確なメリット、展示内容の魅力、スタッフの立ち位置、声をかけるタイミング、ブースの雰囲気などが重要です。
今回紹介した内容をまとめると、次のようになります。
- 役割分担をして、誰が声をかけるかを決める
- 来場者の状態に応じたトークスクリプトを用意する
- 事前に声かけの練習をする
- 来場者が感じるメリットを短く伝える
- POPや展示物を使い、声かけ前に興味をつくる
- ブース前に並んで待ち構えない
- 立ち寄る理由にならない声かけを避ける
- ノベルティ、レイアウト、動的待機、雰囲気づくりも組み合わせる
- 実物 → 体験 → 説明の順で会話を深める
- 当日のゴールを名刺交換ではなく、必要に応じて後日アポへつなげる
展示会を単発で終わらせず、準備・ブース・接客・フォローまで一気通貫で成果につなげる考え方は、 展示会成功の強化書 で体系的に解説しています。
この記事で紹介した来場者調査の詳しいデータは 展示会白書 をご覧ください。
あわせて読みたい|展示会営業®の関連記事
この記事と関連する実践ノウハウもあわせてご覧ください。
展示会で成果を出すコツを知りたい方へ
「スタッフがうまく声をかけられない」 「来場者がブース前を通り過ぎてしまう」 「声をかけると売り込み感が出てしまう」 という方は、 展示会を失敗させないセミナー をご活用ください。

展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした著書5冊を含む合計7冊を執筆し、すべてAmazon部門1位を獲得している。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。
