展示会への出展を検討する際、企画書を起案し出展計画を立てるのが一般的です。その際、会社から求められる成果を出すために、どの程度の予算が必要なのか、得られる成果はどの程度なのかといった費用対効果を明確にすることが重要です。
本記事では、展示会出展の費用対効果の目安や計算方法、成果を最大化するためのコツを解説します。この記事で紹介する方法を実践すれば、展示会出展の費用を最適化させながら、目的を達成するための企画を立案できるでしょう。
目次
展示会の出展は、企業にとって大きな投資です。そのため、適切に目的を設定した上で費用対効果を予測しなければ、大きな損失につながるリスクがあります。
ここでは、展示会出展の費用対効果について詳しく解説します。
展示会の費用対効果を測定することは、事業戦略を立てる上で欠かせません。限られた予算の中で効果的な施策を打つためには、投資の有効性や見返りを把握しておくことが重要です。
費用対効果を測定することで、以下のようなメリットが得られます。
事業活動を最適化して成果を伸ばし続けるために、必ず抑えるべき内容といえます。
展示会の費用対効果を算出する際は、ROI(Return on Investment:投資収益率)という指標を用います。ROIの基本的な計算式は、以下の通りです。
ROI(%) = (利益 ÷ 投資額) × 100 |
展示会における具体的な計算方法は次のようになります。
例えば、総収益が1,000万円、総費用が300万円の場合は以下の通りです。
ROI(%) = ((1,000万円 – 300万円) ÷ 300万円) × 100 = 233.33% |
このようにROIを計算することで、投資に対する見返りが明確になります。
展示会の費用対効果に明確な基準はありませんが、 ROIが100%を下回ってしまう場合は赤字となります。
ブランドや事業体、展示会の出展目的によって目指すべきROIは異なります。赤字を避けつつ、大きな成果を目指すためには、100%を超えないことが重要です。
展示会の効果を最大限に引き出すためには、正確な効果測定が欠かせません。ここでは、展示会の効果を適切に測定するための具体的な方法を、ステップごとに解説します。
まず、展示会出展の目的を明確にしましょう。目標が明確であれば、その成果を測定する指標も自ずと決まります。
展示会の出展には、以下のような目的があります。
さらに、上記の目的に沿って、以下のような目標値が定められます。
できるだけ正確に費用対効果を算出するため、目標設定も具体的な数値に設定しましょう。
展示会の費用対効果を正確に算出するためには、関連するすべての費用を漏れなく洗い出すことが重要です。
費用の項目ごとに分析すれば、次回の出展時にコスト削減の余地がないか検討できます。
費用項目 | 詳細 |
出展料 | ブーススペースの利用料 |
ブース装飾費 | デザイン、施工、備品レンタル費用 |
広告宣伝費 | チラシ、ノベルティ、事前告知広告費 |
人件費 | スタッフの日当、交通費、宿泊費 |
運搬費 | 展示品の輸送費、保険料 |
その他 | 電気工事費、インターネット接続費 |
ブース設営や展示物、スタッフの人数、広告費などそれぞれの項目を詳細にリストアップし、予算の中で最適化を図りましょう。
展示会出展料の相場は、出展するイベントの規模や場所、出展形式によって大きく異なります。一般的には、小規模な地域イベントであれば、数万円から十数万円の範囲で出展が可能です。
一方、大規模な展示会では、ブース料金だけでなく、設営や運営にかかる費用が数百万円を超えることもあります。特に、都市部の人気のイベントでは、出展料が高騰しやすい傾向がありますので、十分な予算の確保と計画が求められます。
展示会の規模によって出展料は大きく異なります。まず、小規模な地域イベントでは、出展料は数万円から十数万円程度が一般的です。参加者も限られるため、コストを抑えつつ、新しい顧客を獲得するチャンスがあります。
次に、中規模の展示会では、出展料は約十万円から数十万円に上昇します。多くの企業が参加するため、競争が激化しますが、成果も期待できるでしょう。
最後に、大規模な国際展示会では、出展料が数百万円になることもあります。多くの来場者を惹きつけるため、しっかりとした予算計画が必要です。
地域別の出展料相場は、全国各地で異なる傾向があります。例えば、東京や大阪といった大都市圏の展示会では出展料が高く、特に知名度のあるイベントでは数百万円が一般的です。
一方、地方の展示会では、比較的リーズナブルな価格で出展することができ、数万円から数十万円程度の範囲で収まります。出展する地域によって出展料が大きく変わるため、マーケティング戦略に合った地域選定が重要です。
業種別の展示会出展料相場は、業界によって異なるため、慎重な調査が必要です。例えば、ITやテクノロジー関連の展示会では、出展料が高めに設定されています。これに対し、食品や日用品関連の展示会は比較的リーズナブルです。
また、業種によってはブースの広さやデザインにこだわることで、さらにコストがかかる場合があります。出展する業種の相場を把握し、予算を適切に設定することが成功の鍵となります。
展示会終了後は、設定した指標に基づいて実績データを収集します。以下の方法でデータを集めましょう。
これらのデータの集計は、効率的かつ正確に行いましょう。Excelやスプレッドシートなどの表にまとめることで、後の計算や分析を効率化できます。
最後は、収集したデータをもとにROIの数式に当てはめましょう。
ROI(%) = (利益 ÷ 投資額) × 100 |
ただし、展示会の成果は即時的なものではないため、長期的な視点で成果を追いかけることが大切です。そのほか、展示会の効果測定の注意点については、以下で詳しく解説します。
展示会の効果測定の注意点として、特に重要な点は以下の2つです。
展示会の成果は短期間で得られるものではありません。展示会当日では、契約や購入に至らないケースが多く、その後の商談や継続的なコミュニケーションを通じて成果につながることがあります。そのため、展示会で得た顧客との接点から成果につながった場合には、長期的に進捗を追い続けることが不可欠です。
また、サービスの契約や売上以外に、認知度の向上や自社の商品PRを目的とする場合、特定の集計方法を設ける必要があります。例えば、アンケート調査によって認知度を測定するなどの方法が挙げられます。
単に一般的な算出方法を適用するのではなく、自社の目的や目標に応じて費用対効果を計測しましょう。
展示会の費用対効果を最大化するためには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、ROIを高めるためのコツを4つ紹介します。
展示会の目的を明確にすることは、出展の成功を左右する重要なステップです。まず、目的を設定することで、出展に向けた戦略を立てやすくなります。
例えば、新規顧客の獲得や既存顧客との関係強化、新製品のプロモーションなど、具体的な目標に基づいて準備を進めることが可能です。
明確な目的を持つことで、ブースのデザインやプレゼンテーション内容もおのずと決まってきます。これにより、来場者とのコミュニケーションもスムーズに進むでしょう。
展示会では、自社の強みを最大限に活かす展示内容を考えることが重要です。まず、他社との差別化ポイントを明確にし、それを基にブースやプレゼンテーションの内容を設計しましょう。
例えば、独自の技術やサービスの特徴を際立たせることで、来場者に強い印象を与えます。また、成功事例やクライアントの声を交えた具体的な提案が効果的です。
このように、自社の強みを前面に押し出した展示内容は、来場者の興味を引くだけでなく、商談へと繋がる可能性を高めます。自信を持って自社の魅力を伝えましょう。
展示会で成果を上げるためには、事前集客が重要です。事前にターゲット顧客の関心を引き、展示会当日までに期待値を高めておくことで、商談の成功率を向上させることができます。
集客手法としては、下記のような方法が有効です。
これらの施策を組み合わせることで、より多くの人に興味を持ってもらい、展示会当日に成果を引き出しやすくなります。営業の成功確率を高めるために、事前の仕掛けを大切にしましょう。
展示会当日に多くの来場者を集めるためには、ブースの魅力を高める工夫が不可欠です。来場者の関心を引くブースを作ることで注目度が上がり、接客や商談のチャンスが増えます。
以下のポイントを押さえて、効果的なブースデザインを目指しましょう。
これらの要素を組み合わせることで、来場者の記憶に残りやすく、商談につながる可能性を高められます。
魅力的なブースレイアウトの仕掛けについては、「来場者が食いつく展示会ブース事例」でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。
展示会のみで成果を最大化するのは難しいため、展示会後のフォローアップが重要です。接点を持った顧客に対して丁寧なフォローアップを行い、その後の商談や契約につなげましょう。
展示会終了後、3日以内にお礼のメールを送り、資料提供や懸念点への回答、次回の打ち合わせの日程を提案するなどして、積極的にアプローチすることが効果的です。
お礼のメールの書き方については、「展示会のお礼メールはこう書く」で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
費用対効果を高める方法は、必ずしも「成果を上げるか費用を抑えるか」の二択ではありません。費用を抑えながら成果を最大化することも大切です。
ここでは、費用を抑えるための具体的な施策を解説します。
展示会では、ブースの設営に業者の協力を求めるケースが多くあります。また、ブースに必要な什器をレンタルする場合も多いでしょう。
その際、自社の求めるクオリティを担保できる範囲内で、業者や什器をできるだけ安く見つけることが重要です。複数社から見積もりをとり、比較検討をした上で決定することで、費用を抑えられる場合があります。
自治体や商工会議所が提供する助成金を活用することで、費用を抑えられる場合があります。自治体や商工会議所などに確認をとり、自社の事業活動が助成金の対象となるか確認しましょう。
仮に助成金が活用できれば、浮いた予算を別のツールや販促促進、PR活動に振り向けることで、展示会の成功により近づくことができるでしょう。
展示会に活用できる助成金・補助金については、「展示会に使える補助金・助成金を紹介」で解説しています。こちらもご参考になさってください。
多くの展示会では、早期申し込み割引(早割)が提供されています。計画的に準備を進め、早期に申し込むことで出展費用の削減が可能です。
助成金と同様に、企業努力以外で実現できる予算削減の方法を見逃さないように心がけましょう。
展示会によって、出展費用や概評、来場者の属性はさまざまです。地方自治体や公的機関が主催する展示会は、比較的出展費用を抑えられる場合があります。
来場者の人数や見込み顧客の数は異なりますが、それに応じた対策を講じて目的を達成する考え方もあります。
事前に集客活動を行うことで、見込み顧客を効果的に集められる可能性もあるでしょう。自社の目的に合わせて、最適な展示会を選ぶことが大切です。
展示会当日のスタッフのパフォーマンスは、成果に直結します。事前に十分な準備と教育を行い、効率的な運営と効果的な営業を実行できるようにしましょう。
トークスクリプトの作成や、スタッフの役割分担、事前のロールプレイングなど、多岐にわたる準備が挙げられます。事前の準備が徹底することで、スタッフの能力を向上させ、人件費の削減や営業の成功確率の向上が期待できます。
費用対効果を最大化するための対応方法については、「展示会でスタッフが成果を出すコツ7選」で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
展示会出展において、失敗しないための注意点は幾つかあります。まず、事前準備を怠らないことが大切です。出展目的やターゲットを明確に設定し、参加者にアプローチするための戦略を練りましょう。
次に、展示ブースのデザインやレイアウトも重要です。訪問者の目を引く工夫を凝らしたブースを用意することで、集客力が高まります。また、人員配置も適切に行い、全ての来場者に対応できるようにしましょう。
最後に、事後のフォローアップを忘れずに行うことも成功に繋がります。印象に残る展示を提供し、関係構築を続けることが大切です。
展示会の特性を理解することは、出展成功の鍵を握っています。展示会は、多くの企業が集まり、競争が激しい場です。そのため、他社との差別化が求められます。
また、期間限定のイベントであるため、来場者の記憶に残る印象を与えることが重要です。商品のデモンストレーションや質疑応答を通じて、直接雇用契約やパートナーシップの機会を創出することも可能です。
さらに、顧客の生の声を直接聞くチャンスでもあります。多くのフィードバックを集めることで、今後の戦略に活かすことができます。展示会の特性を知り、効果的に活用することが成功への第一歩です。
展示会出展において、予算を適切に管理することは成功への第一歩です。まず、出展料の内訳を把握し、それぞれの項目に対する予算を設定しましょう。
次に、予算を見守る役割を果たす担当者を決め、定期的に進捗を確認します。これにより、予算オーバーを防ぎ、計画的に出費をコントロールできます。また、予算内でのクリエイティブなアプローチを考えることも重要です。
例えば、ブースのデザインやプロモーション活動を工夫し、コストを抑えつつ効果的なアピールができるようにしましょう。これにより、限られた予算の中でも相応の成果を上げられます。
展示会での装飾や設備は重要ですが、過剰投資は避けるべきです。高額なブースデザインや豪華な装飾は一見魅力的に見えますが、必ずしも集客に直結するわけではありません。
まず、シンプルで効果的なデザインを心掛けましょう。ブランドイメージをしっかりと伝えることができます。次に、必要な設備をリストアップし、優先順位をつけることで、無駄な出費を抑えられます。
最終的には、コストを抑えながらも魅力的な展示ができるよう工夫することが重要です。冷静に判断し、費用対効果を考えながら進めることが成功の鍵となります。
展示会に参加する際、複数回の出展を検討することは非常に有効です。初回の出展では、ターゲット市場や競合他社の動向を把握する貴重な機会となります。これにより、次回以降の出展に向けた戦略を練ることが可能です。
また、継続的な出展はブランド認知度の向上にも繋がります。定期的に出展することで、顧客との接点を増やし、信頼関係を築くことができます。最終的には、リピーターや新規顧客の獲得に寄与するでしょう。
展示会に限らず、事業活動の費用対効果を出すことは、その後の分析や改善、さらには自社の戦略にとって不可欠です。
本記事で紹介した、費用対効果の算出方法や最適化の方法、注意点などを参考にして、ぜひ展示会の成果向上に役立ててください。
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展示会営業(R)コンサルタント。経済産業大臣登録中小企業診断士。詳細はウィキペディアご参照。
展示会をテーマとした書籍を5冊執筆している展示会の専門家。執筆書籍は、すべてamazon部門1位を獲得しており、「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」他、多くのメディアで取材を受けている。1300社を超える展示会出展支援経験に基づく実践的なアドバイスが好評を博している。ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没する自称 展示会オタク。