こんにちは!展示会営業(R)コンサルタントの清永です。
6月26日から29日まで開催された台湾最大の食品見本市、フード台北(FOOD TAIPEI)を視察してきました。
ラッキーなことに、JETRO海外コーディネーターも務める台湾在住・貿易コーディネータの鈴木 亜弥さんや海外ビジネスに強い中小企業診断士の仲間と一緒に視察することができ、台湾のウラ事情などもたくさん教えてもらっちゃいまして、たくさんの気づきがありました。海外展示会出展をお考えの方はもちろん、日本の展示会に出展しておられる企業や出展を検討しておられる方にもお役に立つ内容だと思います。ぜひお読みください。
目次
毎年6月下旬に台湾 台北市の台北南港展示ホール (TaiNEX)で開催される台湾最大の食品見本市です。日本企業が60社出展しているJapanpパビリオンを始め、熊本県、鳥取県、福島県、島根県などの都道府県での合同出展や単独出展があり、合計100社程度が出ています。Japanパビリオンはこのような外観です。
フード台北は合計4フロアで開催されていますが、2号館4階はこのような合同出展がメインとなっています。ちなみに、2号館4階の小間割りはこんな感じです。Japanパビリオンは入口近くの良い場所をもらっていますね。
フード台北は、コロナ前2019年の来場者数が64,000人、出展者数が約2,000社でした。日本最大級の食品飲料展示会であるフーデックスの2019年の来場者数が80,426人、出展者数が3,316社なので、ほぼ同規模と考えてよいと思います。
フード台北が開催されている台北南港展示ホール (TaiNEX)の広さは、76,00㎡ (ホール1・1階・4階、ホール2・1階・4階の合計)です。東京ビッグサイトの東ホールと西ホールの合計面積が、95,420㎡なので、展示面積もフーデックスに近いです。
※フーデックスについては、フーデックスリポートをご覧ください。
現地の雰囲気はこんな様子です!
来場者数や広さだけでなく雰囲気もフーデックスによく似ていますね。
フード台北の独特な点としては、
です。
ブースプレゼンは、ブース前ミニセミナーとして、日本の展示会でも行われていますが、フード台北では、
よりエンタテイメント性が強くなっていて、2人か3人で漫才のように掛け合いをしながら、ライブコマース的に来場者にアピールしています。
エンタテイメント性が強いと言えば、このように
着ぐるみがステージ上で、音楽に乗って思いっきりダンスしていたりします。それを来場者が喜んで見ていて、めちゃくちゃ盛り上がっています。そして、その熱気が会場全体に広がっていくのです。
次に、贈り物のお花とは、このようなものです。
取引先が、出展者のフード台北への出展をお祝いしているんです。『展出成功』と書いてありますね。文字通り、『展示会成功』という意味です。これは、お祝い事を重視する中華圏の文化から来ているようです。
それと、スーツ姿の人はゼロです。
バイヤーや商社、インポーターなど、ビジネス目的の人も全員カジュアルな装いでした。
このように、細かい違いはあります。
しかし、展示会の雰囲気としては、フーデックスやファベックス、フードスタイル等の日本の食品展示会と大きくは変わらないという印象を清永は受けました。
フード台北に日本から出展している企業は、前述の通り約100社もあります。台湾は、市場規模として大きいわけではないのですが、日本に好意的な方が多いですし、東南アジアや中国への進出の足掛かりにもなります。食品業界の日本の中小企業にとって、海外展開の第一歩として台湾を選択し、まずフード台北に出展するというのはとてもよい作戦だと清永は考えます。
ただ、台湾独特の事情を分からずに出展するともったいないことになってしまいます。
もったいな出展を防ぐために、台湾在住・貿易コーディネータの鈴木 亜弥さんに台湾の食文化や台湾バイヤーの特徴について教えてもらいました。
台湾独特の食文化としては、
などがあります。
台湾の人は、外食が多く、家で食べる際もできるだけ調理をしたくないと考えるようです。
フード台北にもこのように
空けてすぐ食べられる商材が展示され、人気を博していました。
また、このように、『素食専業生産線』と表示し、
ビーガン専用ラインがあることをアピールするパネルや、
『綠色永續』と記載し、SDGsをアピールするボードが
大きく掲げられています。
次に、台湾バイヤーの特徴を考えてみましょう。
台湾バイヤーの特徴として、
などが挙げられます。
フード台北でも、このような
高級感のあるパッケージの商材がたくさんありました。
台湾の人は、日本製のものを品質がよいと認識してくれます。
日本企業は、パッケージ包装を中国語に変更せず、日本語のままで出展する方がよいケースが多いようです。
また、類似商品が多いレッドオーシャン商材を差別化するための特徴づけとして、このように、
ディプロマをブースに飾って、受賞歴をアピールするのもよいでしょう。
久しぶりに2日間かけてじっくり展示会を見たこともあり、フード台北には、国内展示会でも使える小技がたくさんありました。
その小技とは、
です。ひとつずつ解説していきますね。
まず、一つ目です。こちらをご覧ください。
2メートル上空に、忍者が居ます。人間は、「あり得ないところにあり得ないものがあるとつい見てしまう」という本能があります。
人形だとわかっていても、つい見てしまうのです。たくさんのブースが並んでいる展示会において、自社のブースに確実に視線を誘導できるとしたら、ものすごいアドバンテージです。日本の展示会でも、ブースパラペットに大きな人形を置いておくなどの方法は実は効果的です。ぜひ活用してみてください。
続いて、この写真をご覧ください。
名刺をブースに置きっぱなしにしていますね。置かれている名刺は、多くの場合、出展企業のそこそこ偉い人(課長以上程度?)のものです。
台湾の展示会には、日本人はじめ外国人も多数訪れます。展示会の期間中だけ、日本語や英語ができる人をブース対応のために雇い
あたかも自社の説明員のように活用しているケースが多々あります。だからでしょうね。スポットの説明員は名刺を持たず、ブースにあらかじめ置きっぱなしにしている出展企業の偉い人の名刺を渡すのです。日本の展示会でも、ワンオペでブース対応しないといけないケースなどで使える技です。
次に、陳列で高級感を出す簡単な技を2つご紹介します。
こちらをご覧ください。
商材である「おかき」は一つひとつが小さいので、そのまま展示すると安っぽくみえます。
だからと言って、袋や箱に入ったままだと、質感を伝えることができません。
そこで、座布団陳列です。座布団を敷いて、その上に、恭しく商材を乗せることで、大事なものをきちんと展示している感が出るのです。
小さな商材を扱っておられる企業は取り入れてみてください。
陳列の小技について、もう一つご紹介します。熊本県ブースで出展しておられた日本企業さんのブースの陳列です。
展示台を階段上にして、そこに商材を並べます。ひな壇陳列と言います。さらに、その階段を後ろから照明で照らすことで、一層の高級感を醸し出していますね。
このような陳列をされると、どんな味なのか興味を持ちますし、思わず手に取ってしまいます。
最後に、卸の力を借りるという点についてお伝えします。フード台北では、台湾国内企業、海外企業を問わず、メーカー単独の出展ではなく、流通業者、輸入業者との共同出展が非常に多いという印象を持ちました。中には、メーカー名で出展しているけれど、ブース対応しているのは卸会社の人のみ、というブースもあったほどです。日ごろからバイヤーを攻略してくれている卸に対して、注力している感を出すためにフード台北に出展している、という面があるからかなぁと感じました。
この手法は、国内展示会でも活用できます。「うちには、3日間も展示会にかかりきりになれるほど人員がいない」と展示会出展を諦めてしまうのでなく、このように、卸業者や協力会社から応援をもらって出展する、ということも考えてみてほしいと思います。
ここでは、フード台北はもちろん、その他の国内外の展示会で、より大きな成果を出すためにどうしたらよいか、を考えてみます。
2日間、フード台北を視察して、展示会営業(R)コンサルタントとして清永が感じた、一層の成果を出すポイントは以下の通りです。
一つひとつ見ていきましょう。
まず、第一は、「ブースキャッチコピーを掲げる」という点です。
特にフード台北のブースは、最も目立つブースパラペットに社名しか書いていないブースが多い印象を持ちました。
1号館の1階に単独出展しているような名前の通った大企業ならそれでよいのかもしれませんが、日本からJapanパビリオンや都道府県ブースなどで合同出展している企業は、
「誰のどんな悩みを解決する商材なのか?」
をブースの上段に文字で大きく掲げるだけで、商談化率を高めることができます。
※ブースキャッチコピーのつくり方については、「ブースキャッチコピー3つの鉄則」をご覧ください。
キャッチコピーは、台湾の人は、日本製を高品質と感じてくれるので、日本語のままで書くのもやり方の一つですが、せっかくなので、もう一歩踏み込んで、
メインキャッチコピーは台湾向けの繁体字で書き、その下のサブキャッチコピーを日本語にするのがベストでしょう。ぜひ実践していただきたいと感じます。
また、これは主催者側にお願いすべきことなのですが、入場の際に渡される展示会パンフレットにはこのような表記になっています。
「社名(中国語)」、「社名(英語)」、「ブース位置番号」しか記載がないのです、この表記だとカタログを見て、会場を回る来場者のために、社名を大きく掲げざるをえなくなってしまいます。それは、来場者にとっても不便なことなのではないかなぁと清永は感じます。ぜひ、カタログの中に、「キャッチコピー」を記載できる欄を加えてほしいと思います。
次に、「出会いたい相手を大きな文字で書く」という点について解説します。
「出会いたい相手?うちの商品をいいと思ってくれる人全員に出会いたいよ」とあなたは思ったかもしれません。
でも、それでは不十分です。もう少し踏み込んで考えてみましょう。
フード台北には、スーパーマーケットのバイヤー、高級セレクトショップのバイヤー、食品商社の仕入れ担当、ホテル・レストランの料理長、代理店になりたいディストリビュータ、情報収集に来たコンサルタントなどなど、様々な属性の人が来場します。この中で、あなたが最も出会いたい相手はだれでしょうか?それを大きく文字で掲げるのです。
こちらをご覧ください。
「尋找代理商中」と大きな文字でボードを掲げています。「代理店を探しています」という意味です。
次に、下の写真の右側のボードをご覧ください。
「可代工貼牌」の下に、「經銷商・貿易商」と書いてあります。和訳すると、『OEM・ODM可能ですよ。ディーラさん、トレーダーさんへ』となります。
誰に出会いたいと思っているブースなのかが、一瞬で分かりますよね。ぜひ、実践していただきたいと思います。
続いて、「荷姿をそのまま展示する」について考えてみましょう。この点は、今回の視察をご一緒した食品業界に精通している中小企業診断士の方に教えてもらいました。
読んで字のごとく、輸送の際のダンボール梱包、木箱梱包等の状態をそのまま展示する、ということです。BtoBの海外ビジネスにおいては、
どのような荷姿での輸送になるかは、非常に重要です。にもかかわらず、荷姿をそのまま展示しているブースはほとんどありませんでした。逆に言うと、荷姿をそのまま展示するだけで他のブースと違いを出せる、ということです。ぜひ、実践してみてください。
続いて、「楽しい体験で印象に残す」という点について考えてみましょう。
来場者は、たくさんのブースに立ち寄ります。単に、真面目に商品を説明するだけだと、あなたのブースの後に見たブースの情報に上書きされて、忘れられてしまうかもしれません。まして、フード台北は、日本の展示会より、エンタテイメント性が高いのです。では、どうすればよいのでしょうか?
答えは「楽しい体験で印象に残す」ことです。むずかしく考える必要はありません。たとえば、単に試食してもらうだけでなく、食べ比べをしてもらう、などでよいのです。
こちらの写真をご覧ください。
Japanパビリオンのひとつとして出展されたお味噌屋さんに、初日に「食べ比べしてもらうといいですよ」とアドバイスしたら、「ゆず」「ごま」「くるみ」を食べ比べてもらうという体験を提供し、3つの味の中でどれが今一番人気なのかをわかるようにしておられました。即やってみる、この機動力も展示会で成果を出すためにとても重要な要素です。
※楽しい体験を提供する体験アトラクションについては、「ブースで絶対に行うべきアトラクションとは?」をご覧ください。
最後に、「試食の前に導線を引く」について解説します。食品系の展示会では、『食べてもらって、「美味しい」という感想を聞いて、「そうでしょ!ありがとうございます!!」とお礼を言うだけで終わっている』ブースがたくさんあります。これは、非常にもったいないです。試食してもらうことが悪いわけではないのですが、来場者に食べてもらっただけでそのまま分かれてしまうと商談につながるはずはありません。
ではどうすればよいのでしょうか?フード台北の中に、「試食の前に導線を引く」を非常にうまく実践しているブースがありました。
こちらをご覧ください。
大行列ができています。それもそのはず。こんなに
美味しそうで、量も十分なアイスクリームをもらえるのですから。
でも、このブース、ただでは、アイスクリームをもらえません。清永も、シレっと行列にならんで、アイスクリームをもらおうとしましたがダメでした。
どういうことでしょうか?この写真をご覧ください。
たくさんのひとが、女性が持っているチラシに付いているQRコードをスキャンしていますね。このQRコードをスキャンするとどうなるのでしょうか?
このように、
LINE公式への登録を要求され、登録すると、このようなクーポンをもらえるようになっているのです。
このクーポンがなければ、つまり、LINE公式に登録しなければ、ソフトクリームはもらえない、というわけです。
このやり方、非常にうまいですね。LINE公式に登録してもらっておきさえすれば、個別に連絡ができますから、展示会後のフォロー追客がしっかりできますね。
単に試食してもらうだけでなく、次への導線につなげることは、実売のために非常に重要です。ぜひ取り入れてみてください。
※このような次につなぐ導線の引き方は、「目からウロコの展示会フォロー」もご覧ください。
このような方法を行う際には、このように
QRコードを思いっきり大きく掲示しておきましょう。
ちなみに、台湾ではLINEのシェアが高いですが、BtoBの場合はフェイスブックの利用も多いようですから、ターゲットの属性によっては、LINE登録ではなく、
フェイスブックページへの「いいね」をもらうようにするのもよいかもしれません。
今回の記事では、フード台北の視察レポートをお伝えしました。海外展示会や国内展示会のご参考にしていただけるとうれしいです。
今回の視察では、台湾在住・貿易コーディネータの鈴木 亜弥さんや海外ビジネスに強い中小企業診断士の仲間に多くの示唆をもらいました。
素敵な仲間と一緒に視察できて、清永は幸せ者だなぁと感じました。多謝!!
展示会は、出展者同士、来場者同士の仲間づくりにも非常に適した場です。あなたも取り入れてみてください。
あなたの展示会出展を心から応援しています!!
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