商材を出展し特徴を伝え商談に繋げる展示会。展示会は日本だけでなく海外でも数多く行われていますが、海外展示会と日本の展示会にはいくつかの違いがあります。
そこで今回は、海外展示会と日本国内の展示会の違いや海外展示会に出展するメリットとポイントについて、主要な海外展示会を紹介しつつ解説していきます。
目次
海外展示会と日本国内の展示会の主な違いは以下の通りです。
それぞれの違いについて詳しく解説します。
海外展示会と国内の展示会の違いとして、来場者の属性に関する制限の有無があります。まず、国内の展示会は、小中高生の社会見学として招待する場合を除いて、基本的に未成年者は来場できません。しかし、海外の展示会では多くの場合年齢不問で一般公開されており、未成年者でも来場できます。実際、展示会によっては未成年者が来場することを見越して、ロゴが入ったぬいぐるみやおもちゃを子供の来場者向けに配っている場合もあります。
このように、国内の展示会は未成年者は基本的に来場できませんが、海外展示会は年齢不問で来場できる点に違いがあります。
海外展示会では出展準備が複雑になりやすいという違いもあります。海外展示会の出展準備が複雑になりやすい理由は、税金関係や言語の差などがあるからです。
特に、社内に出展国の言語を話せる人がいない場合、通訳を手配する必要があります。通訳を介してのやり取りとなることから、日本での展示会に比べてコミュニケーションが煩雑になったり時間がかかりやすくなるでしょう。
出展準備が国内よりも複雑になることを予測し、余裕を持って準備することが必要です。
日本国内ではなく、あえて海外展示会に出展することには以下のメリットがあります。
市場の動向を把握する機会になる
普段は接触できない多くの人との出会いの場になる
海外での営業能力の向上につながる
国内向けの宣伝効果に期待できる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1つめのメリットとして、現地企業とのコネクションを獲得できる点が挙げられます。海外展示会には現地企業が多く来場し、その場で商談を進めることができるためです。
展示会では、商品に興味を持ってブースに足を運んでくれた企業や人と直接コミュニケーションを取ることができます。ブースで対応する相手は、エンドユーザーだけでなく、商材を仕入れ販売するディストリビュータや営業機能を代行するセールスレップなど、多岐にわたり、場合によってはその場で成約に至ることもあります。海外展示会に出展することで現地の企業や人とのコネクションを獲得できるのです。
2つめのメリットとして、現地のマーケティング分析に活かせることが挙げられます。なぜなら、展示会に出展することでブースに足を運んだ人の自社製品に関する反応を直接確認できるからです。
国内の展示会のみに出展している場合、自社製品に対する海外の反応を直接確認できる機会は多くはありません。しかし、海外展示会に出展すれば、対面での生の声を感じ取ることができるため、現地マーケティング分析に活かせるのです。
海外展示会に出展することで、外国の競合他社が展開する商品をチェックできます。国内からでは把握しきれない情報も収集できるため、海外の競合も含めた今後のマーケティング手法を考えるきっかけになるでしょう。自社の商品を海外顧客に手に取ってもらえるのは、海外展示会に出展するメリットの1つです。
一方で、自社も顧客側として参加し、競合他社の商品を直接手に取って観察・分析できるのもメリットになるでしょう。海外展示会という貴重な機会を活かすためにも、顧客としての視点も活用して会場を見て回るのがおすすめです。競合他社の情報は詳しくデータとしてまとめることで、その後の分析や調査がしやすくなります。
海外展示会への参加は、市場の動向を世界規模で把握する機会にもなります。さまざまな業界がグローバルに展開している現代において、国内市場だけを対象にした分析・調査では、情報が不足する恐れがあります。そこで海外展示会への出展機会を活用し、市場全体の動向を確認するのも1つのポイントです。
世界各国が参加する大規模な海外展示会であれば、世界の市場動向をその目で確認できる可能性があります。簡単な視察だけでも多くの情報を収集できるため、時間を作って会場を積極的に見て回るのがおすすめです。短時間でスムーズに情報収集ができるため、分析や調査にかけるコスト削減につながる点もメリットになります。
海外展示会への出展は、単純に多くの人と出会える場所として利用できる点もメリットです。普段はコミュニケーションの機会がない現地の人や、その業界で有名なバイヤーやディストリビュータ、セールスレップと接触できる可能性もあるため、自社の将来につながる出会いを体現できる可能性にも期待できます。
有益な出会いを求めて海外展示会に参加するのも、出展理由の1つになるでしょう。もちろんただ顧客やバイヤーと出会い、その場でコミュニケーションを取ることが目的ではありません。その後の商談や販路拡大などにつながるように、きちんと良好な関係構築を狙っていく必要があります。
海外展示会への出展時には、コミュニケーションの方法や工夫について事前に考案し、効果的な手法を実践していくのがおすすめです。
海外での営業力向上につながる点も、海外展示会に出展するメリットです。海外向けの営業方法は、国内でのものとはさまざまな点で異なります。言語が違うだけでなく、有効なアプローチ方法やコミュニケーションの流れも変わるため、最初は多くのシーンで戸惑うことになるでしょう。
しかし、実際に海外展示会で営業経験を積むことで、その体験をきっかけに営業能力の向上・見直しを図れます。それは次回以降の海外展示会への出展時に、より効果的な営業をかけるための礎になり得るでしょう。海外向けの営業力を鍛えるという目的に使えるのも、海外展示会出展のメリットです。
海外展示会に参加したという実績は、国内向けの宣伝効果にもつながります。海外で自社商品・サービスをアピールしたという事実は、国内のステークホルダーに対してよい印象を与えられる可能性があります。海外での宣伝を行いつつ、同時に国内向けの広告にも活用できる点もまた、海外展示会に参加するメリットに数えられます。
海外と国内の両方に対して宣伝ができれば、コストを抑えて自社商品・サービスのアピールが可能となります。海外展示会での成果だけでなく、その後の国内向けのPR効果にも期待できるので、積極的な出展がおすすめされます。
海外展示会に参加する際には、いくつかの注意点を把握しておく必要があります。慣れない土地での行動にはリスクも伴うため、事前に対策を考えておくとよいでしょう。以下では、海外展示会に出展するときの注意点を解説します。
海外展示会に出展する際には、国内展示会でのやり方に固執しないように注意しましょう。「日本では〇〇だから」「いつもは〇〇の流れでやっているから」といった固定概念を持ったままでは、海外顧客向けに有効なアプローチができない可能性があります。
国内でのやり方が足を引っ張るかたちになると、せっかくの海外展示会で成果が出づらくなります。海外展示会に出展する際には、一旦普段の流れや考え方は忘れて、海外という場所にマッチした手法を模索する必要があります。
国内展示会で成功する方法が、必ずしも海外で通用するとは限らないため、一から展示会でのアクションを考えるのが重要です。海外展示会ならではの手法を編み出していくことは、現地で成果を出すためのコツになるでしょう。
現地でどのように集客を行うのかは、海外展示会における大きな課題です。国内展示会とは異なり、会場にいるのは多国籍な顧客となります。そのため国内と同じ集客方法では、注目を集められない可能性も懸念されるでしょう。海外展示会が行われる国の情報を収集しつつ、その場に合わせた集客方法を実践するのがコツです。
場違いな方法を取ってしまうと、逆に顧客が離れていく可能性もあるため、事前に多くの情報を集めて最適なアプローチ方法を考えておくとよいでしょう。実際に海外展示会に出展した経験を持つ企業の事例などを参考にして、集客方法を考案するのも1つの手段となります。
海外展示会への参加時には、会場の雰囲気に呑まれてしまい、思ったようにアピールできないケースも多いです。しかし、消極的なコミュニケーションになってしまうと、海外顧客やバイヤーとの出会いを有効活用できなくなります。
海外展示会という独特の雰囲気に圧倒されないように、早めに現地に入ってその国の魅力を味わったり、多くの人とコミュニケーションを取って会話に慣れておいたりするのがおすすめです。特に海外が初めての従業員は、展示会以前に異国の雰囲気に困惑する可能性があります。
慣れない土地に行くことに不安を覚えるケースも多いため、メンタルケアを行えるように準備しておくのも対策になります。また、大きな環境の変化によって体調を崩さないように、健康管理を徹底するのも重要です。
海外の文化や風習を事前に調べて、特徴を把握しておくのも海外展示会へ出展する際のポイントです。海外と一言で言っても、その国によってルールや一般常識は大きく異なります。従業員が持っている海外のイメージと、海外展示会が実施される現地のイメージが乖離していると、予定していた行動ができない可能性もあるでしょう。
海外展示会への出展を決めたなら、早い段階で開催国の情報を調べて、文化や風習への理解を深めておくことがおすすめです。現地でのNG行動や注意点を把握したうえで、効果的な展示を行えるように備えるのが基本的なプロセスになるでしょう。
その国ならではの文化や風習におどろくことのないように、情報収集には時間をかけるのがおすすめです。
どれだけ準備をしても、海外展示会への出展時には思わぬトラブルに見舞われる可能性があります。トラブルの発生確率をゼロに抑えることは不可能なため、事前に対処法を決めてリスクを最小限に抑える方向で調整するのがポイントです。
「〇〇が発生したら〇〇に連絡する」といった対処の流れを確立しておくことで、大きな損害を出さずに海外展示会への出展を継続できる可能性があります。トラブルが起きても慌てずにいられるように、あらゆるパターンを想定して対処法を考えておきましょう。
海外では、多くの展示会が日々開催されています。単に海外展示会に出展すればよいというわけではなく、その展示会の特徴や客層から自社製品に合った展示会を選ぶことが大切です。
そこでここからは、主な海外展示会をご紹介します。数ある海外展示会の中から、自社製品の特徴に合った展示会を見つけましょう。
ファッションやアパレルの海外展示会・見本市は、各国で開催されています。その一例として挙げられるものが、現地企業以外に海外からの企業も多く集まり、毎年賑わいを見せているのが以下の展示会・見本市です。
上記の4つは世界4大コレクションと呼ばれており、ファッション好きであれば知らない人はいないといわれるほど有名な海外展示会・見本市です。海外ではファッションウィークと呼ばれているこの展示会・見本市は、日本では「パリコレクション」や「ミラノコレクション」などと呼ばれることが一般的です。
日本を含む世界中のアパレル企業やファッション好きな方が見ており、ファッション・アパレル関連の商品をアピールしたい場合に最適な場所と言えるでしょう。
食品の海外展示会・見本市をお探しの方は、まずは以下の3つを押さえておきましょう。
例えば、ドイツで10月に開催されているAnugaは世界有数の食品見本市です。100年以上の歴史があり、独自のダイナミズムで食品・飲料業界に影響力を与え続けています。最新の食品トレンドや刺激的な特別イベントに焦点を当てたトピックで、世界中の食品・飲料業界が注目している有名な食品の海外展示会・見本市です。
また、香港で開催されているHOFEXは2年に1回開催されており、2019年は2661社が出展、39224人が来場 しました。
「Summer Fancy Food Show 2023」は、ニューヨークで開催されるアメリカ東海岸最大級の高級食品見本市です。情報の発信都市ニューヨークで開催されることもあり知名度も高く、北米市場での販路開拓を目指す方におすすめです。
ロボット・テクノロジーの海外展示会・見本市の一例としては以下があります。
2023年1月、アメリカにて電子機器の展示会・見本市である「CES2023」が開催されました。「CES2023」では、サッカーワールドカップの競技場28個分の展示スペースに約3200社が出展。ホールの入口には巨大なLEDビジョンが設置されており、ラスベガスの夜景を映像化して来場者を出迎える演出が好印象を与えました。中に入ると「Tech East」「Tech West」「Tech South」の3エリアに分かれており、多種多様な出展ブースで賑わいました。電子機器に関する海外への出展は、世界最大級のテクノロジー「CES」がおすすめです。
家具の海外展示会・見本市として有名なのは以下の3つです。
欧州ではドイツのAmbienteとフランスのMaison et Objetが1月、2月と続けて開催されます。そのため、両方出展することは難しく、出展したい場合はどちらかに絞る必要があるでしょう。選び方としては、キッチン用品を展示したい場合はAmbiente、インテリアを展示したい場合はMaison et Objectがおすすめです。
海外展示会に出展して成功するためには、以下のポイントを把握しておくことが大切です。
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
展示会によって客層や特徴が異なるため、どの展示会が自社に適しているかを見極めることが成功のためのポイントです。
例えば、同じ家具の海外展示会であっても、どのような家具を取り扱っているのか、どのような家具が求められているのかが展示会によって異なります。
各国の展示会を確認し、最適な展示会を見つけましょう。
※国内展示会の見極め方は、「成果が出る国内展示会の選び方」をご参照ください。
自治体によっては、海外展示会への出展に対する補助金や助成金を提供している場合があります。政府による取り組みとしては、「展示会等のイベント産業高度化推進事業(展示会を契機とした海外販路開拓に関する実証事業)」や「JAPANブランド育成支援等事業」などが挙げられます。
補助金や助成金を受け取ることができれば出展費用を抑えられるため、事前に対象かを確認し、対象である場合は早めに手続きを進めましょう。
出展準備は念入りに行いましょう。出展準備の一例としては以下があります。
日本貿易振興機構ア(ジェトロ)や日本商工会議所では、海外展開を支援する施策に取り組んでいます。事業検討フェーズ、準備・計画、販路開拓、契約、貿易、資金調達、事業拡大まで、様々なフェーズに合わせて支援進出のサポートが可能です。
不明点や不安な点がある場合は一度相談してみるとよいでしょう。
この記事では、海外の主要な展示会を紹介しながら、海外展示会と日本国内の展示会の違いや海外展示会に出展するメリットとポイントについて解説しました。
とはいえ、海外展示会・見本市に初めて出展する場合、するべき準備や展示会の選び方、申し込み方がわからないということも多いでしょう。海外展示会・見本市に出展する場合は、日本貿易振興機構ア(ジェトロ)や日本商工会議所に相談しながら進めるとよいでしょう。
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