展示会では、数多くの出展者が来場者に対して声掛けや営業トークを工夫し、互いに競い合っています。その中で、来場者の心を掴み、商談につなげるには、効果的なコミュニケーションが必要です。
そこで効果的なのが「トークスクリプト」です。トークスクリプトは、事前に準備したトークの流れをまとめたマニュアルであり、営業の型やコツが体系化されています。
本記事では、展示会で使えるトークスクリプトの作成方法や例文について解説します。この記事を参考にして、展示会で確実に成果を出す営業手法を確立させましょう。
目次
まず、展示会で使えるトークスクリプトの例文を紹介します。以下で紹介する例文は、相手との対話をイメージして作成しています。
1. 呼びかけ・声掛け 自社)「こんにちは!本日は展示会にお越しいただき、ありがとうございます。 〇〇株式会社の山田と申します。本日は環境に優しい新しい技術について、ご紹介させていただいております。」
2. ヒアリング 自社)「まず、差し支えなければ、お客様のお仕事について少しお伺いしてもよろしいでしょうか?工場管理において、特に環境面で課題に感じていることはございますか?」 来場者)「そうですね、エネルギー消費量の削減が大きな課題です。コスト面でも環境面でも改善が必要だと感じています。」 自社):「エネルギー消費量の削減は、多くの製造業の方々が抱える課題ですね。具体的に、どの程度の削減を目標としていらっしゃいますか?」 来場者):「20%程度は削減したいと考えています。」 自社):「その目標達成に向けて、弊社の新技術がお役に立てるかもしれません。弊社のサービスなどをご紹介してもよろしいでしょうか?」
3. 製品や商品の説明 自社):「弊社が開発した『△△△△』は、工場のエネルギー消費を最適化するAIシステムです。主な特徴は3つあります。
1つ目は(特徴の説明)。これらの機能により、平均してエネルギー消費量を30%削減することに成功しています。さらに、人手による管理工数も50%削減できるため、コスト面でも大きなメリットがあります。」
4. クロージング 自社):「エコファクトリーAIについて、いかがでしょうか?ご興味をお持ちいただけましたか?」 来場者):「はい」 自社):「ありがとうございます。では、より詳細な資料と、実際の導入事例をお送りさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」 来場者):「はい、お願いします。」 自社):「ありがとうございます。では、お名刺をいただけますでしょうか?」 (名刺交換) 自社):「ありがとうございます。3営業日以内に担当者からご連絡させていただきます。また、ご希望であれば、貴社のデータを使った無料シミュレーションも行えますので、ぜひご検討ください。本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。」 |
このように、実際の接客や営業の現場をイメージしながら、自社オリジナルのトークスクリプトを作成しましょう。次に、トークスクリプトのテンプレートを紹介します。
展示会で効果的な営業を進めるためのテンプレートには、一定の流れや形があります。主な流れは、以下の4ステップです。
自己紹介は、簡潔に「会社名」「所属」「名前」を伝え、相手に来場してもらったお礼を伝えましょう。
「この度はお忙しいところ、弊社ブースに興味を持っていただきありがとうございます。〇〇株式会社、△△営業担当の(名前)と申します。本日はよろしくお願いします」 |
導入は、聞き手の心を掴み、話を最後まで聞いてもらうために重要なステップです。このステップでは製品・サービスのメリットや実績を伝えます。
今回、〇〇についての課題を解決できるサービスとして、弊社の△△をご紹介させていただきます。こちら、すでに数十社が導入しており、□□の効果を実感しています。 |
このように効果的に伝えることで、聞き手の興味を惹きつけ、今後の説明につなげられます。
本題では、相手へのヒアリングで目的やニーズを聞き出し、自社の説明に入ります。
「本日は〇〇のサービスについてご興味を持たれているとのことですが、具体的には会社の課題解決や業界のトレンド把握などの目的はございますか?」 |
次に、目的に応じて自社の説明に入ることを伝えましょう。
「今回、〇〇についての課題を解決できるサービスとして、弊社の△△をご紹介させていただきます。貴社のご状況に合わせて、課題の解決を図れる部分もあるかと思いますので、ご説明いたします。自社の提供する△△は〜〜」 |
ここでは、商品の機能や効果、得られるメリットなどを数字と具体例を交えながら論理的に伝えましょう。商品の説明ばかりにならないように、相手の実態や疑問点を確認しながら、課題をどのように解決できるのか端的に説明します。
最後は、自社が求めるアクションを相手に行ってもらうようにお願いします。名刺交換をして次回の商談機会につなげる場合は、日程を提示して商談のアポイントを取りましょう。
「それでは、より詳しいお話やご説明をさせていただくために、名刺を交換していただきたいのですが、よろしいでしょうか? 次回お打ち合わせさせていただくのに、来週の〇日、◯日ですと、どちらがよろしいでしょうか?」 |
アポイントや名刺交換が済んだあとは、お礼の言葉を伝え、ノベルティなどのプレゼントを渡して終了です。
上記の構成を基本に、自社の商品説明やターゲットに合わせた言葉を組み込み、独自のトークスクリプトを作成してください。
展示会のトークスクリプトは、テンプレートに当てはめるだけでは効果を発揮しません。効果的なトークスクリプトを作成するには、以下のポイントを押さえる必要があります。
それぞれのポイントについて具体的に解説します。
トークスクリプトを作成する前に、展示会参加の目的を明確にしましょう。
例えば、新規顧客の獲得、既存顧客との関係強化、新製品のPRなど、具体的な目標を設定します。目的が明確になることで、トークスクリプトの内容や構成を適切に調整できます。また、本番に近いロールプレイングを行えるため、目的設定は重要といえるでしょう。
ペルソナを設定することで、トークスクリプトがただの台本ではなく、臨場感のある営業トークに変わります。ターゲットの悩みや課題を把握し、相手のニーズを理解できるため、最適な解決策を提示しやすくなります。
ペルソナを設定する場合は、部署・役職・仕事の悩み・社内の交友関係などを決定し、本当に存在しているかのような人物をイメージすることが重要です。リアリティのあるペルソナを作成できれば、具体性の高いトークスクリプトを作成できます。
相手のニーズや課題を引き出すには、事前にどのような質問をするべきか決めておくのが重要です。
質問する項目は以下のとおりです。
特に、BANT(予算、決済者、ニーズ、導入時期)に関連する質問に重点を置くことで、営業の展開を読みやすくなります。
営業トークの基本として、SPIN話法と呼ばれる手法があります。これは、顧客との会話を4つの質問タイプ(S、P、I、N)に分類し、顧客の潜在的なニーズを引き出し、最終的に購買へとつなげることを目的とした手法です。
S:状況質問(situation) | 「現在はどのように〇〇しているのですか?」 |
P:問題質問(problem) | 「現在の手法は、〇〇の管理進行が不便ではないですか?」 |
I:示唆質問(Implication ) | 「〇〇のコストが大きいと人件費や残業が増えてしまい、長期的に見ると大きな損失につながりませんか?」 |
N:解決質問(Need-payoff) | 「〇〇の管理コストを削減できて、別の部門にその費用を当てられるとしたら、ご興味ありますか?」 |
このように、相手の潜在的なニーズを引き出し、抱える課題や悩みの重要性や解決策を提示することで、商談や契約につなげられます。
スクリプトの作成には、台本形式またはフローチャートのいずれかが有効です。
台本形式 | ・文量を多めに作成できる ・実際のトークを想像しながら具体的に作成できる ・想定質問からいくつかのパターンに分岐させられないため、柔軟な対応を想定したトークは作りにくい |
フローチャート | ・想定質問や相手の回答に応じて、いろいろなパターンに分岐させたスクリプトを作れる ・要所でポイントを記入できるため、全体像と部分的なコツなどを掴める ・具体的なトークや台本を作りにくいため、多少のアドリブが必要になる |
スタッフの営業歴やトーク力を考慮しながら、自社に合った形式を取りましょう。
展示会のトークスクリプトを作成する際には、以下のポイントに注意することが重要です。
これらのポイントを押さえることで、来場者の興味を惹きつける説明を行えるようになります。
展示会で使うトークスクリプトは、現場で使える実践的な内容でなければなりません。そのため、経験豊富な社員が作成するのが理想です。顧客の状況をリアルに想定し、台本を棒読みにならないように工夫しましょう。
また、これまでの経験をもとに、どのような質問や返事をされるのかを予想したり、過去の事例を取り入れたりすることで、イレギュラーな事象が発生した場合にも柔軟に対応できるようになります。
トークスクリプトを作成する際は、実現可能なものか再現性を確認しましょう。自社の視点だけで作成すると、都合の良い方向に話を進めようと無意識に台本を作ってしまう可能性があります。
したがって、顧客のニーズや課題、疑問点を想定し、複数人で確かめ合いながら作成しましょう。
作成したトークスクリプトは、どのメンバーが活用しても一定の成果を上げられることが重要です。要所でポイントやコツを記載し、状況と対策をセットで説明しましょう。
例えば、「〇〇部分では、顧客は△△に感じているので、冷静に再度整理しながらヒアリングする」など、具体的な対応策を明記することがポイントです。
メンバーと共有後、分からない点は確認し合い、全員が使えるスクリプトを目指しましょう。
トークスクリプトは、一度作成して終わりではありません。展示会ごとに分析と改善を繰り返し、常に最適なものにブラッシュアップしていくことが大切です。
良い部分は継続し、悪い点は原因と改善策を話し合いながら修正しましょう。市場や顧客のニーズは日々変化するため、常に改善意識を持ち続けることが重要です。
トークスクリプトは、メンバー全員が使えて、一定の成果を出すために必要です。作成にあたって、ターゲットや自社の目的を明確にし、テンプレートや営業の基本を押さえたうえで、自社のオリジナルを作成しましょう。
本記事を参考に、ぜひ自社独自の再現性あるトークスクリプトを作成してください。
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