法人営業 コッソリ教える!展示会営業成功事例

法人営業を行う企業にとって、展示会への出展は非常に効果的です。

 

意外と奥が深い!展示会

展示会というのは、東京ビッグサイト、幕張メッセ、インテックス大阪、ポートメッセなごやなどの展示会場で開催される商品、サービス、情報を宣伝するための催しのことです。

代表的なものに、日本ものづくりワールド、東京モーターショー、Japan IT Weekなどがありますね。

展示会は大規模なものだけでも全国各地で年間約700回開催され、出展社数は10万社以上、来場者は1400万人にも及ぶ一大産業です。

 

侮るなかれ!逆効果になることさえある!

ただし、ただ展示会に出展すればよいというわけではありません。

展示会に出展するためには、費用も労力もかかります。

漫然と出展するだけでは、費用と労力が無駄になってしまいます。

それどころか、人気のないブースは、社員のモチベーションを低下させます。

しかも、やる気のない社員による閑散としたブースは、来場者に悪印象を与え顧客離れを引き起こしてしまいます。これでは負の連鎖ですね。

しかし、安心してください。きちんとしたやり方をすれば、展示会出展は法人営業を行う企業に必ず成果をもたらします。

ここでは、費用と労力を無駄にせず、展示会出展を売上アップの起爆剤にした法人営業企業3社の実例をご紹介します。

 

出展コストの33倍の売上を実現したITシステムベンダーA社

 

 A社は、大阪府にある社員12名のITシステムベンダーです。A社は、業務効率化に寄与するパッケージソフトを開発販売しています。そのパッケージソフトを導入すると業務の生産性が大きく向上するため、既存顧客から高い評価を受けています。

A社の悩み

しかし、A社には大きな問題もあります。それは・・・知名度が低いこと。A社のパッケージソフトと同じ領域で、大企業が販売しているブランド力の高い製品が3つあるため、見込み客はA社までたどり着く前に、別の製品を購入してしまうのです。

 

「うちの製品を知ってくれさえすれば、お役に立てるのに・・・」

 

これが、A社社長の口癖です。A社は、知名度の低さに起因する引き合い不足に悩んでいたのです。

 

A社は展示会に活路を求めました。早めに出展申し込みをしたため、入り口に近い角小間を確保することができました。この展示会には、1万8千人の来場者があります。どうやら、見込み客との接触数は十分に確保できそうです。

 

展示会後のフォローを効率的・効果的に行うコツ

ではそれで、万事オッケーかというと残念ながらそうはいきません。大きな問題があります。それは、展示会終了後、どのようにフォローをするかという点です。

展示会でたくさんの見込み客と接触できたとしても、A社の製品は、その場で売れるようなものではありません。展示会終了後、フォロー訪問をして、商談を重ね、購買に至らしめる必要があるのです。ところが、展示会で接触した見込み客に後日、普通に、フォロー面談のアポイントを取るだけでは、面談を拒否され、せっかくの見込み客を逃がしてしまうことが予想されたのです。

 

そこでA社では、この問題を解決するために、ブースで接触した見込み客にある特典をつけることにしました。

その特典とは、

『展示会ブース特典!先着50社様限定 無料業務効率度診断サービス』

です。

 

A社は、この診断サービスを行うために、55個のチェック項目を作成しました。チェック項目は、たとえば「社内の文書は定められた場所に保存され、改版管理されている」というようなものです。展示ブースで接触した見込み客に対して、

「この展示会でのみ、通常8万円の業務効率度診断サービスを先着50社限定で、無料にさせてもらっています。まだ少しだけ枠がありますが、御社も申し込まれますか?」

とトークすることにしたのです。

ここでのポイントは、

「ぜひ、無料サービスに申し込んでください!」

と言わないことです。変にお願いして、自ら値打ちを下げる必要はありません。

そうではなくて、

「御社にはお得だと思いますよ。うちはどちらでもいいですけど、よろしければどうぞ」

というように、あくまでも来場者に選択をゆだねるようにすることで、診断サービスの価値を高めていきます。

 

A社のこの作戦は的中しました。展示会当日、多くの来場者が、無料診断サービスに申し込んだのです。

さらに好都合なのは、A社が後日、診断のために来場者の企業に出向く行為が、そのまま、初回の営業訪問になることです。診断のためのチェック項目を埋めていく作業は、そのまま営業ヒアリングになります。A社は、展示会からの無料診断サービスによって、見込み客に喜ばれながら、ニーズを深掘りしていくことに成功したのです。

 

この結果、A社では、この展示会から、17件の受注を獲得しました。大型案件の制約もあったため受注金額は4300万円になりました。A社は、この展示会の出展に出展料やブース装飾費などを含めて130万円弱の費用をかけていました。130万円を元手にして4300万円の売り上げをつくったということです。つまり、A社は、展示会出展によって、出展コストの33倍もの売り上げを実現したのです。

 

案件化数5倍、受注数3倍を達成した包装機材商社B社

 

B社は神奈川県にある社員8名の包装機材商社です。B社はこれまである優良な既存客が存在したため業績が安定していました。

待ったなし!新規開拓が急務!

ところが、3年前に、この顧客が大手資本に買収されB社との取引を取りやめてしまったのです。このため、B社の業績は大幅にダウンしました。B社は、このままではジリ貧です。B社では新規顧客の開拓が急務になっていたのです。

 

B社では、新規顧客獲得の手段として、展示会出展を検討したのですが、B社社長は乗り気ではありませんでした。なぜなら、自社商材の特性が、展示会に適さないと考えていたからです。たしかに、B社の商材はマニアックです。ぱっと見ただけ、ちょっと聞いただけでは、その良さを理解できないものばかりです。展示ブースに製品をずらりと並べるだけでは、まったく成果にはつながらないことが予想されました。

 

展示会ならではの奇策

そこで、B社ではある奇策を用いました。ブースで対応するスタッフの顔にフェイスペイントを施したのです。スタッフ全員の頬に「包」という文字をカラフルに入れて来場者対応をしたのです。

展示会でスタッフが顔にペイントをするというのは当時まだありませんでした。まして、B社が出展した展示会は、法人顧客を対象とした工作機械がテーマです。会場の雰囲気は、まじめで、骨太なムードです。だから、余計に目立つのです。物珍しさからでしょう。B社のブースにはたくさんの人垣ができました。

 

 

しかし、これで、B社が抱えている問題がすべて解決されたわけではありません。B社の製品はわかりにくいのです。ブースに人がたくさん来てくれても、商材の良さを伝えられなければ、

「おもしろいブースだったね」

で終わってしまいます。それでは意味はありません。

 

諦める!逆転の発想

そこで、B社は、逆転の発想をします。B社は、製品の良さを伝えることをあきらめたのです。厳密に言うと、「展示ブースで

は、自社のわかりにくい製品の良さを、きっちり見込み客に伝えるために、動画で説明することにしたのです。わかりにくい製品の良さも、動画でなら伝わりやすくなります。日本における動画のビジネス活用の第一人者でYouTube戦略コンサルタントの菅谷信一氏は、1分間の動画が伝える情報量は180万語に相当し、動画を活用すると活用しない場合に比べて理解が74パーセントも高まると言います。

さらに、B社は、動画で伝える内容にもこだわりました。B社は、単に自社製品を紹介してその良さを伝えるということをしませんでした。そうではなくて、放送機材を利用する際のちょっとしたコツ、長持ちさせるために手入れの仕方というような専門家だからこそ言える豆知識を動画にしてYouTubeにアップしていったのです。

 

グーグルが運営する世界最大の動画共有サービスであるYouTubeは、いまや、日本にだけでも、月間4,900万人が利用しています。単純計算では国民の3人に1人が利用していることになる巨大メディアです。B社は、この無料で使えるYouTubeを活用したのです。

 

B社は、単に、展示ブースで流すために動画を作成したのではありません。そうではなくて、展示ブースで、このように言うのです。

「包装機材をどのように扱えば、歩留まりが良くなるか? 耐久性が高まるか? をわかりやすくお伝えする動画チャンネルへの登録はこちらからお願いします。登録していただくと後日、1つずつ動画が届きます。包装機材を扱っておられる方は、ぜひ登録をお奨めします。」

これにより、B社のYouTubeチャンネルには多数の登録がありました。そして、B社社員が登場して説明するさまざまな動画を見るうちに、自然とB社に問い合わせが入るようになったのです。

 

このようにして、B社は、展示会に出展したことにより、前年の5倍の案件化数、3倍の受注数を達成したのです。

 

200万円の自社ブランド製品の受注件数が3.7倍にアップした工作機械製造卸C社

 

C社は東京都にある社員31名の工作機械製造卸売業です。C社では過去7年にわたり、展示会出展を重要な営業政策と位置付けて取り組んできました。展示会で出会った見込み客から大型案件を受注するなど大きな成果が出た時期もありました。

課題はマンネリ打破!

しかし、ここ数年、C社の展示会出展からの成果は停滞気味です。どうやら、展示会出展に慣れてしまって、マンネリ化していることがその原因のようです。出展を始めた7年前当初は、展示会に向けた取り組みのひとつひとつが全社員の関心事になっていました。

ところが、マンネリ化してしまった今では、展示会は、「営業部の中の一部の人間がやる仕事」という認識になっていて、直接展示会にかかわる人以外は、無関心になっていたのです。

 

 

C社社長は、展示会への出展を取りやめることも検討しました。しかし、毎年出てきた展示会です。急に出展を取りやめると、業界内で

「C社は業績不振で危ないかもしれない」

などと悪い噂が立つ危険性もあります。「今、出展をやめるのは得策ではない。」C社社長はそう考えました。そして、「今年、真剣に本気で取り組んで成果が出なければ来年以降、出展を取りやめる」という方針を打ち出し、社内に通達したのです。

 

C社の展示会営業ゲーム

C社において、展示会で成果を上げるためには、マンネリを打破し、全社員の力を結集することが必要です。そこで、C社は、展示会出展プロジェクトを、全社員が参加するゲームとして取り組むことにしました。まず、同じ部署の人同士が多く集まらないように配慮しつつ全社員が参加するチームを4つつくりました。そして、そのチームごとに成果につながるアクションをどのくらい実行したかをゲームの得点として競い合うことにしたのです。

 

ゲームの得点は、

・名刺獲得:1ポイント

・役員以上の方の名刺獲得:さらに3ポイント

・自社ブランド製品の実機デモ体験:2ポイント

・展示会で名刺交換した見込み客への初回訪問:3ポイント

・展示会で名刺交換した見込み客への見積提出:3ポイント

・展示会で名刺交換した見込み客からの受注:10ポイント

・展示会で名刺交換した見込み客からの自社ブランド製品の受注:さらに10ポイント

としました。

このように、展示会プロジェクトを、全社員参加の部門横断的なチームで、ゲームとして行ったところ、さまざまな変化が現れました。これまで無関心だったベテランや遠慮がちだった若手も積極的に意見を言うようになったのです。

その結果、ベテランの考えを取り入れたブース装飾は、C社が名刺交換したい役員クラスに響くものになりました。

また、若手ならではの感性でつくった声かけトークによって昨年とは比べ物にならないほど多くの実機デモ体験をさせることに成功しました。

展示会終了後も、自分のチームがゲームに勝ちたい気持ちからでしょうか、普段は客先訪問を嫌がる技術者たちも、積極的に営業同行するようになりました。

 

この結果、C社では、200万円以上する自社ブランド製品の受注件数が、前年比3.7倍に増加しました。C社は、展示会プロジェクト、ゲームの要素を取り入れることで、全社一丸となって取り組み、大きな成果を手にしたのです。