来場者にメリットとなる情報提供が出展効果を高める

一般社団法人 日本能率協会(JMA)

産業振興センター ディレクター 小宮 太郎様

【一般社団法人 日本能率協会(JMA)】

マネジメントに関する研究開発や人材教育、専門展示会などを通して経営革新を図り、各産業における技術等の振興をサポート。展示会においては、製造やインフラ産業から食、サービス産業まで、幅広い分野の展示会を主催している。2015年からは、世界有数の展示会主査企業であるドイツメッセ社と提携し、同社の主催する国際的な展示会の支援もおこなっている。

 

設立:1942年3月

会員数:1,345社(2018年4月1日現在)

 

 

◆産業界の声から生まれる展示会

清永:JMAさんの場合、展示会主催のほか、人材教育やISOの審査や登録、認証など、幅広く手掛けておられますが、全体の事業の中で展示会の位置づけをどのようにお考えですか?

 

小宮ディレクター:展示会は産業振興の旗の下でおこなっているので、位置づけとしては“産業振興の手段”ですね。基本的にはBtoBがメインですが、76年の歴史もあるため、これまでやってきたことも磨きつつ、今の時流に合ったものをどんどんつくり出していこうというスタンスで取り組んでいます。

 

清永:新旧を融合させながら時代の流れに沿うものへと変えていくことは大切だと思います。新たな展示会をつくり出す際は、どのようなことに重点を置いているのでしょうか?

 

小宮ディレクター:要望を聞くことです。日本の名だたる企業のトップの方が多数登録されている経営審議会や評議委員会を有しているので、こういった方々から意見や課題、JMAでしてほしいことなどを聞き、そこに応えるというのが基本です。また、さまざまなカンファレンスや、展示会を含む企画委員などからも意見を集めているので、独自につくるというよりは、産業界と一緒につくり上げていくといったイメージでしょうか。現在、年間で大小合わせて30本ほどの展示会を主催していますが、今年はあと10本くらい増やす方向です。

 

清永:関係者の声を拾うことでより産業の振興へ根付いた展示会が開催できるというわけですね。方向性が明確な展示会が増えることは、出展社側も具体的な対策をしやすく、成果を上げやすくなりますので、とてもうれしいです。ちなみに、ここ最近では、どのような要望が多いですか?

 

小宮ディレクター:例えば、さまざまな業界との掛け合わせによる技術の新たな活用や、インバウンドしても日本の産業界にお金が落ちていないことを課題としたナイトタイムエコノミーの普及などが挙がっています。

 

 

◆来場者にメリットとなる情報提供が出展効果を高める

清永:前作「飛び込みなしで新規顧客がどんどん押し寄せる展示会営業術」でも書いた通り、出展を有効にするには、来場者の関心に基づくブース作りやフォローをおこなうなど、「売り込む」から「教える」にシフトすることがとても重要なのですが、よりマッチングを高めるためには、来場者の質も大切だと思うんです。主催者サイドとして、来場者の質を上げるためにされている工夫などはありますか?

 

小宮ディレクター:来場者や出展社の生の声を配信するなど、デジタルマーケティングで来場者を啓蒙・育成する試みを今年から始めています。というのも、清永さんのおっしゃる通り、一方的に告知をするだけではダメで、受け手のメリットになる情報を配信することが来場促進につながるのではないかと思いまして。

 

清永:主催者、出展社としてのちがいはありますが、基本は同じですね。いかに来場者の心を動かせる情報提供ができるか。わたしは、御社の出展社説明会にも参加したことがありますが、「ただ漫然と出るだけではダメ」というメッセージを強く感じました。マッチングサービスや効果的な出展プラン、プレスリリースなど、出展社のサポートメニューも充実している印象です。

 

小宮ディレクター:我々のありたい姿としては、総合商社と広告代理店、コンサルティング会社を合わせて、経済団体で割ったような、中立的な存在です。なので、ただ場所を提供するだけではなく、来場者へはきちんと情報を提供して購買につながる道筋を作り、出展社には、展示会で集めた名刺をいかに売上につなげていくかという情報提供をおこなって、展示会全体の価値を高めていけるように取り組んでいるんです。マーケティングのノウハウをスマートフォンで学べるデジタルコンテンツも提供しているので、出展社にはぜひそちらを受講していただき、成果につなげてもらいたいですね。

 

清永:確かに、展示会後のフォローでも売上は大きく変わります。名刺を獲得しただけで満足してしまったり、相手の立場を考えずに片っ端からアポをとったりする企業も多いですがそれは良くないやり方です。関係を継続させながら啓蒙・育成して、いざというときに買ってもらえる土壌を育てていくことが重要だと考えています。展示会での出会いは、上手に活用すれば来場者・主催者、両者にとって幸せな結果をもたらす可能性が高いので、とくに知名度がそれほど高くない中小企業にとっては、テレアポなどよりよっぽど効果的だと感じますね。

 

小宮ディレクター:展示会は五感でリアルに感じてもらえますからね。主催者としても、よりマッチングできる出会いを生むためにはどうすればいいかを常に模索していて、来場者が雨や嵐でも足を運びたくなるような価値や、来場者、出展社双方の期待を越えて、感動を呼べるような内容を打ち出していけたらと思っているんです。その一環として、デジタルを利用して来場者や当事者の声をもっと反映させる方法を試行錯誤している最中なんですよ。

 

清永:展示会のクオリティを高めることで来場者の質が上がれば、出展社にとっても有益な出会いが生まれやすくなりますからね。長年の歴史があり、優良な会員を多数抱えておられるJMAさんだからこそ集められる声を展示会にフィードバックしていくというのは、素晴らしい取り組みだと思います。展示会はこれからさらに面白くなっていきそうですね!